Column

夏の甲子園は特別で格別。小園・神頭・渡邉の報徳学園三人衆が振り返る「最後の1年」

2018.11.04

 広島にドラフト1位指名された小園海斗を擁して夏の甲子園ベスト8に進出した報徳学園。しかし、秋とは春は県大会で敗退し、悔しさを味わっている。彼らはどのようにして最後の夏に甲子園を掴み取ったのか。躍進の立役者となった3年生の3人に、この1年間を振り返ってもらった。

<メンバー>
神頭勇介(かんとう・ゆうすけ)・前主将・一塁手・176センチ78キロ・右投右打
渡辺友哉(わたなべ・ともや)・投手・180センチ70キロ・左投左打
小園海斗(こぞの・かいと)・遊撃手・178センチ79キロ・右投左打

最悪に近いスタート。何をすべきかを1人1人で考えた

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左から小園海斗、渡邊友哉、神頭勇介

―― 高校野球3年間お疲れ様でした。3年間の思い出は何かありますか?

神頭勇介(以下、神頭) 最初はしんどかったです。最初はランニングが多くて3年間は苦しいことばかりでした。

―― 昨年の夏に新チームがスタートした時はどうでしたか?

渡邊友哉(以下、渡邊) 強いと言われていた学年だったので、もっとスムーズに勝てるかなと思っていました。春から甲子園に行けるというイメージはありましたが、自分たちのベストを尽くせなかったです。自分の思い通りに一人ひとりがいかなかったので、負けから始まって辛い新チームの始まりではありました。
神頭 最初の関東遠征で5試合して全部負けたんですよ。これはヤバいなと思いました。

―― その時のチームの状態はどうでしたか?

神頭 最悪に近い状態ですね。勝ってこそ自信がつくと思うのですが、その勝ちが遠かったので。どん底まではいかないですけど、けっこう最悪な状態でしたね。

―― 秋で負けた時はどう思いましたか?

渡邊 僕は試合に出ていなくて、見ている立場でした。悔しいというよりも頭が真っ白になったというか、現状があまりよくわからなかったです。試合に負けてから春のセンバツがなくなったんだなということに気づいて、春夏と自分が中心になってやりたいと思いました。
小園海斗(以下、小園) チームの状態が凄く悪くて、負けた時は何も考えられなかったです。冬は長いなと。何も残らないまま冬を過ごすのはどうしたらいいのかなという気持ちでした。

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座談会中の神頭勇介

―― 1年生の時と違ってセンバツのない冬でしたが、違いはありましたか?

神頭 だいぶ感じました。
小園 チームの雰囲気も全員がメンバーに入りたいという気持ちがあったので、必然的にチームの練習の雰囲気は良くなっていましたが、2年目は希望がなかったので、きつかったです。

―― それだとやはり冬は色んな意味できつかったですか?

神頭 そうですね、センバツがないとわかっていた冬だったので。少ししてからは春に気持ちを切り替えられたのですが、最初のうちはミーティングを多めにしてチームを段々どん底から上げていくことをやっていました。
小園 話が全然進まなかったです。2時間くらいしていたこともありました。意見もなくてどうしたらいいかみんなわからなくて唖然としていました。

―― モチベーションを保つのが難しい冬をどう乗り切ろうと話したのですか?

神頭 勝ち上がっていくチームよりも先に体作りができるといい方向に考えました。冬はしっかり練習して春には全然違ったチームを作ろうと言ってきました。
渡邊 秋の地区大会と県大会は投手の失点で負けて、投手がいないと言われ続けて悔しい気持ちがありました。みんなでやる練習よりも個人でやる練習が増えて、自分に厳しくなりました。自分の時間が作れて、方向性が自分の中で決まっていい練習ができたと思います。

―― 冬が明けてチームはどう変わったと思いますか?

渡邊 力がないと思い始めていましたが、練習試合で強いチームにも勝つことができ、自信を持って春に臨めたと思います。

[page_break:苦しんだ時間が長いからこそ楽しめた夏の甲子園]

苦しんだ時間が長いからこそ楽しめた夏の甲子園

夏の甲子園は特別で格別。小園・神頭・渡邉の報徳学園三人衆が振り返る「最後の1年」 | 高校野球ドットコム
座談会中の渡邊友哉

―― その中で春は早い段階で負けてしまいましたが、春から夏にかけてチームの状態はどうでしたか?

神頭 滝川第二に負けて、どうやったら勝てるんやろうという雰囲気がチーム全体に流れていました。春はもう終わってしまったので夏に向けてやるしかないと切り替えて、春の地区大会で負けてからずっと、朝に走ったりしていたことを夏まで継続してきたのが、夏に繋がったと思います。

―― 皆さんは夏前にどんなことを考えていましたか?

渡邊 やっぱり夏に甲子園に出るということだけでした。5月に寮で合宿があり、そこでチームが一つの方向に向けたので、合宿がチームがよくなった理由だったと思います。
神頭 一緒に朝から晩まで練習することによって団結力がより深まりました。終わった時の達成感を全員で味わえたので、チームが大きく変わったなと思います。

―― それを踏まえての夏の東兵庫大会でしたが、振り返ってみてどうですか?

神頭 秋も春も負けていたので、自信はあまりなかったですが、春が終わった後の練習試合で強いチームに勝って自信をつけてきました。それでも県大会の練習試合の雰囲気は全然違うので正直、どうなるかなと思いましたが、本当に投手陣がしっかり頑張ってくれていたので、自分たちが打てなかった時でもロースコアで勝つことができました。
渡邊 応援が例年よりも凄かったです。補助をしてくれる人がしっかりやってくれていて、その人たちの分までという気持ちもありました。野球部以外も応援に来てくれて、応援が自分のプレーにもいい影響を及ぼしたかなと思います。
小園 夏の大会は厳しい戦いが続いていましたが、一戦一戦やっていく中で自分たちが強くなれて、春の悔しさを持って準備もしっかりできたので全員で勝ち取った甲子園だと思います。

―― 東兵庫大会で思い出に残っている場面はありますか?

神頭 糸井(辰徳・3年)の走塁ミスです(笑)2回戦で一死二塁の場面でアウトカウントを間違えて普通のセンターフライで飛び出していてアウトになりました。その次の回に点を取られました。それは今でもいじられます(笑)

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座談会中の小園海斗

―― 最後の夏に甲子園で野球をやれたのは皆さんにとってどうでしたか?

神頭 センバツの時は先輩に着いていく立場でしたが、3年の夏で最後なので自分たちの代でどうしても出たかったです。同級生とは1年生からずっと頑張ってきたので、一緒に苦労した仲間と甲子園に出られて本当によかったと思います。
渡邊 甲子園は観客の数が全然違っていて、今まで苦労してきた分、あの場所に立って凄く楽しめました。今思うと、あんなに注目される場所で野球をやることがないと考えたら少し寂しいのはありますが、人生においていい経験だったと思っています。
小園 絶対に甲子園を掴み取りたくて、きつい練習も耐えてきて決まった瞬間は凄く嬉しかったです。甲子園で3試合やれてよかったと思います。

―― 甲子園での思い出はありますか?

神頭 済美戦の最終回の観客の応援が今までに聞いたことのないような音で、やっていて凄く気持ち良かったです。勝ちたかったのですが、それが叶わなくて残念でした。

―― あの大歓声の中でプレーをするのはどんな気持ちになりますか?

小園 一つひとつのプレーで「ウワー」となって心に響きました。春とは違う雰囲気が夏にはあると思いました。

[page_break:小園に前主将・前エースが熱くエール!]

小園に前主将・前エースが熱くエール!

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最後は肩を組んで笑顔を見せる3人

―― 国体も終わってこのメンバーで高校野球をすることもなくなりましたが、今の率直な気持ちを聞かせて下さい。

神頭 練習がしんどかったのでそういう面での解放感はありますが、同じメンバーで野球ができないことに対しては寂しくは感じます。

―― 練習は何がきつかったですか?

神頭 ランニングやトレーニングが僕の中では一番きつかったです。
小園 1周200mのトラックを全員でタイムを切るのがきつかったです。
神頭 大体、怒られた時とかに走ったりする練習です。
小園 10本くらいするんですけど、切れない時もあるので、最初の頃は10本以上走っていてすぐに痩せました。

―― 普段の皆さんはどんな人ですか?

渡邊 小園はふざけてばっかりです(笑)
小園 お前の方がふざけてるやろ(笑)俺の方が絶対にちゃんとしてるわ(笑)
神頭 コイツ(渡邊)は初対面の人にメッチャ人見知りするんですよ。でも馴染んだらメッチャ調子に乗ります。
小園 コイツ(渡邊)が一番調子に乗っています(笑)
渡邊 やめろ(笑)

―― ちょっかいをかけたりするのですか?(笑)

小園 踊ったりしています。
渡邊 するんですけど、ほとんど神頭の指示なので全部操られてます(笑)

―― けっこう明るいチームなんですね。

小園 みんなふざけてます(笑)引退したというのもあるので。
渡邊 練習で締められているのもあるので、他ではちょけたりしています。

―― 神頭君と渡邊君からプロに進む小園君にエールはありますか?

神頭 中学から一緒にやってきた仲間なので活躍を楽しみにしています。1軍に上がったらチケットを譲ってほしいです(笑)
小園 それはモチロン(笑)
渡邊 プロに入るだけの選手じゃないので、プロに入ってからすぐに活躍して自慢できる存在になってほしいですし、僕たちも頑張ってそっちの世界に入りたいという憧れはあります。

―― 小園君は同級生の期待もあると思いますが、どうですか?

小園 期待は凄く大きいので、期待を裏切らないように結果で示して一日でも早く1軍に上がってみんなを招待できるようにして目標とされる選手になれるように頑張っていきたいです。

(文・馬場遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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