Column

伝統を受け継ぎ、アップデートを続ける国分中央(後編)

2018.10.03

 前編では国分中央のモットー「全力疾走・最大発声・真剣勝負」の3つから、夏に強さを発揮する理由を考えた。後編では、国分中央の柱ともいえる3つの資料。そして、鹿児島を代表する3校と渡り合うための取り組みについて、お話を伺った。

すべての土台となる掟

伝統を受け継ぎ、アップデートを続ける国分中央(後編) | 高校野球ドットコム
監督の話に耳を傾ける国分中央野球部

 国分中央の前監督、下村幸太郎氏(現・鹿児島玉龍顧問)の指導方針を大事にしている床次隆志監督。そのため、前監督の言葉をまとめた「国分中央の掟」を作った。

 「2年間下村先生と一緒にやってきた中で大事だと思ったことは、メモをしました。」
 中身を見ると、文章ではなく、単語やキーワードが多く記されている。その中の一つに、「いいボール・セーフ」とある。

 この言葉について聞くと、
 「セーフでもいいからいいボールを投げるようにさせます。慌てて暴投をしてミスを広げるより、良いボールを投げることでプレーを完結させるという意味が込められています。」

 実際にこの日のノックでも選手たちは、「いいボール・セーフ」を投げる瞬間に口にしていた。選手たちにも国分中央の掟は浸透している。

 他にも「トン・パ」というゴロの処理の方法もキーワードとして記されている。選手たちは国分中央の掟を守って、今もプレーをしている。それを守るのは、過去の実績があるからだ。

 今のチームの主将・桑原航汰は、「伝統やルールを守れば勝てることを先輩方が証明している」と話す。

 一学年上の先輩たちは、春の県大会でベスト4に入った。好投手・松本晴を擁する樟南を相手に8対10で敗れたものの、接戦を演じた。こうした実績が国分中央の野球は間違っていないという証明になっているのだ。

[page_break:強豪私立に勝つために必要な徹底力]

強豪私立に勝つために必要な徹底力

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桑原航汰主将

 国分中央の掟はチームの約束事として大事にされているモノである。それに加えて大事になっているのが、練習メニューとTodoリストである。

 練習メニューには、その練習の目的や方法が記載されている。キャッチボールからノック、さらにはトレーニングまで。これを見ながらチームに不足している要素を考え、床次監督はその日のメニューを組み立てている。

 そしてTodoリスト。これは毎月作成しているリストである。月末に選手のみで話し合い、練習と日常生活の2種類を作る。これを始めた理由を聞いてみると、
「自分たちで決めたので、やらないといけないと思うはずです。このチームに必要なのは徹底することなんです」と答えてくれた。

 樟南、鹿児島実業、神村学園という、鹿児島を代表する3校を倒さなければ甲子園は見えてこない。そのためには徹底することが必要だと小林誠矢コーチは語る。
「強豪私立より一人一人の能力は高くない。相手投手の攻略を徹底させないと倒せない。だからこそチームで束になって勝つ。」

 そのために徹底することが必要なのだ。そのツールの1つがTodoリストなのである。国分中央としてのやるべきことをリスト化する。それを試合の時にも掲示して、選手全員に浸透させる。

[page_break:上積みしていく国分中央野球]

上積みしていく国分中央野球

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今村虎楠

 これを床次監督は「どのチームでもやっていることだと思う」と話したが、練習試合でこれを見た相手チームがカメラに収めていく。他のチームから見れば驚きの取り組みだからこそカメラに収めるのだろう。筆者もTodoリストの話を聞いた時はどこでもやっていることではないため驚いた。

 だが、伝統を守るだけが床次野球ではない。真剣勝負をモットーに加えるだけでなく、掟にも床次監督のオリジナルなどを付け加えるなど、下村野球を土台に床次野球を上積みしてきた。

 こうした取り組みを経て、今夏の姶良地区予選では見事優勝。秋季鹿児島県大会では、初戦で鹿児島実業と対戦することが決まった。

 実は両校は今夏に練習試合を敢行している。結果は1対3で敗北。だがこの試合の先発マウンドに上がり、5回無失点に抑えた今村虎楠は、「丁寧に投げるときと力で行く時のメリハリを付けられれば、負けないと思います」と、競ったゲームを展開したことで自信をつけた。

伝統を受け継ぎ、アップデートを続ける国分中央(後編) | 高校野球ドットコム
国分中央 野球部

 また秋季県大会の選手宣誓に決まり、「今からチームのみんなと選手宣誓の内容を決めます」と語った主将の桑原航汰は、「1つ1つ丁寧にやって、夏休みやったことを発揮したい。一戦必勝でいきたいです」と意気込んだ。

 そのためにも守備を主体とし、攻撃では粘り、そして細やかな野球で後半勝負と語る床次監督と小林コーチ。それこそが鹿児島の上位3チームを倒すためには必要だと感じている。

 しかし秋季鹿児島県大会では序盤に5失点し、1対8で鹿児島実業に敗戦。前半は競った展開をして、終盤勝負の国分中央野球を実践することができなかった。

 だが、今春の樟南戦で好ゲームを展開している国分中央。彼らの目指す野球のスタイルは決して間違っていない。強豪私学にも十分通用する野球のはずだ。

 伝統を土台に、新たなモノを付け足していく国分中央野球部。年々アップデートしていく国分中央が、近い将来に鹿児島で旋風を巻き起こすだろう。

(文=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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