第513回 野球を通じて人間を磨く 鹿児島県立枕崎高校(鹿児島)【前編】2018年09月29日

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【目次】
[1]第2の故郷のために
[2]「出口」を作る
[3]「先生」とは?

  高校野球は野球を通じた人間教育が目的といわれる。何をかいわんやの当たり前のことなのに、長くこういう仕事をしているとその前提を忘れそうになるときがある。勝利至上主義、ヒーローをもてはやす風潮、加熱する甲子園報道…「教育」が目的でありながら、教育的でないことが平然とまかり通っている現実から目を背けていないか。

 「勝つことより大事なことがあると思いますか?」
 枕崎・小薗健一監督に逆質問された。
 「あると思います」。そう答えておきながら、自分が日々書く高校野球の記事は、その目的にかなったものであるのか、襟を正したい気分になった。

 少子化、部員不足、定員割れが慢性化した学校、地域の衰退…一野球部の問題にとどまらず、今日本の地方都市が共通して抱える問題に直面している中で、小薗監督は「野球を通じて人間を磨く」という大原則をぶれずに貫き、日々高校球児と向き合う。

第2の故郷のために



選手との会話で笑顔を見せる小薗健一監督

 小薗監督はかつて15年間高校教員を務めたのち、2004年に退職し、弁当や野球用品などのスポーツ用品を扱う「ぶるぺん」という会社を枕崎市で起業した。枕崎高校では1994年から02年まで教員、野球部監督として赴任していた。

 「カツオの町」として知られる枕崎は小薗監督にとって「第2の故郷」と呼べる町である。曽於市(そおし)末吉町の生まれだが、国鉄職員だった父親の転勤で幼年期は宮崎県内を転々とすることが多かった小薗監督にとって、「故郷」と呼べる場所は小学2年から3年まで過ごした母親の実家がある宮崎県の串間市だった。

 港町で、夏の盆踊りでは人の輪が幾重にもできるほどの活気があった。大人になって串間を訪れた際、久々にみた盆踊りは人出が少なくなり、明らかに活気を失っていた。教員として枕崎に赴任した頃、「町や学校の元気を何とかして取り戻したい」という町の人たちの声を聞いた。

 カツオを扱う若者がどんどん少なくなり、85年に人口3万人を切ってから減少傾向に歯止めがかからなくなっていた。枕崎の人たちが感じている危機感は自分がかつて串間で感じた憤りに通じるものがあると感じた小薗監督は、教員時代の8年間「野球部が頑張ることが学校や町が蘇ることにつながると自分を奮い立たせていた」。


枕崎野球部

 OBや町の人たちの協力で、スコアボードや照明施設も整ったグラウンドが整備され、室内練習場や寮もできた。96年秋に県大会優勝、98年秋に準優勝、00年NHK旗で優勝するなど結果を残した。

 90年代から00年代にかけて、久保克之監督率いる鹿児島実、枦山智博監督率いる樟南の2強がしのぎを削って、鹿児島が全国区の強豪になっていった頃、県内では「打倒2強」を掲げて公立、私学を問わず鹿児島市外の地方校が台頭していた時期でもあった。

 今村哲朗監督のれいめい、中迫俊明監督の川内、飯牟禮俊昭監督の鹿児島城西と並び、小薗監督率いる枕崎も「我が町から甲子園」を目指す新興勢力の一角を担っていた。

【次のページ】 「出口」を作る

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プロフィール

政純一郎
政 純一郎(つかさ・じゅんいちろう)
  • 生年月日 1974年12月18日
  • 出身地 鹿児島市
  • ■ 経歴
    鶴丸高校―同志社大
  • ■ 鹿児島新報で6年間スポーツ担当記者。2004年5月の同社廃刊後、独立
  • ■ 「スポーツかごんまNEWS」を立ち上げ、野球、バスケットボール、陸上、サッカーなど主に鹿児島のスポーツを取材執筆する。2010年4月より奄美新聞鹿児島支局長を兼務
  • ■ 著書に「地域スポーツに夢をのせて」(南方新社)「鹿実野球と久保克之」(同、久保氏と共著)
  • ■ Webでは「高校野球ドットコム」、書籍では「野球小僧」(白夜書房)「ホームラン」(廣済堂出版)「陸上競技マガジン」(ベースボールマガジン)「月刊トレーニングジャーナル」(ブックハウスHD)などに記事を寄稿している。
  • ■ 野球歴は中学から。高校時代は背番号11はもらうも、練習試合に代打で1打席、守備で1イニングの試合経験しかない。現在はマスターズ高校野球のチームに所属し、おじさんたちと甲子園の夢を追いかけている
  • ■ フルマラソンの自己ベスト記録は3時間18分49秒(2010年のいぶすき菜の花マラソンにて)。野球とマラソンと鹿児島をこよなく愛する「走るスポーツ記者」

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