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福井工大福井(福井)1年目の集大成として100回大会を取る!

2018.06.03

 福井県の強豪校として名の知られている福井工大福井。春5回、夏7回の甲子園出場経験を持ち、近年でも昨年のセンバツで16強と存在感を示している。そんな福井工大福井で昨年、大きな変化があった。16年間にわたってチームを率いてきた大須賀康浩監督が昨夏限りで勇退し、新たに田中公隆監督が就任した。かつては大阪桐蔭中田翔(日本ハム)や森友哉(西武)などをコーチとして指導した実績を持つ田中監督。新監督となって初の夏を控えるチームに密着した。

全てにおいて0からのスタート

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福井工大福井の集合写真

 昨夏から就任した田中公隆監督は、大阪桐蔭の2年生時に控え捕手として1991年夏の甲子園優勝を経験。その後、福井工大で野球を続け、卒業後に静岡学園でコーチに就任し、指導者としてのキャリアをスタートさせる。静岡学園でコーチを4年、監督を2年務めたのち、2003年に母校である大阪桐蔭のコーチに就任。そこで中田翔森友哉といった一流選手を育て上げた。そして2013年から福井工大福井に着任し、主に打撃指導を担当。そして昨夏の大会終了後から監督として指揮を執っている。

 昨夏、新監督の下で津野一樹主将(3年)を中心に新チームが指導した。昨年は3年生が73人と多く、ベンチに入っていたのも全員3年生。1、2年生に公式戦の経験がある選手がおらず、監督、選手ともに0からのスタートだったのである。

 経験の少なさゆえに新チーム結成当初は練習試合で勝てないことも多かったという。選手たちにも勝っていけるのかという不安はあったが、秋の福井県大会は3位で北信越大会の切符を掴む。北信越大会では1回戦で日本文理に敗れたが、津野は「不安があった中で力を出し切れた」と手応えを感じることができたようだ。

 冬場は「とにかく自分の技量と精神力を向上させるためにその土台にあたる体力を付けようということで、体力強化を重点的にやってきました」(田中監督)と体力強化に力を入れてきた。特に力を入れたのがウエイトトレーニングだ。「サイズアップを実感しながらやっていくことが良いのではないか」という田中監督の目論み通り、リードオフマンを務める猪奥理希(3年)も「振る力がついた」と効果を実感している。「技術を身に付けて伸びた選手が、秋まではできなかったバッティングやピッチングができるような実感を持てるところがたくさん見受けられました」と田中監督は選手たちの成長ぶりには満足しているようだ。

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100回大会は1年目の集大成

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トレーニングに励む福井工大福井の選手たち

 冬を乗り越えて迎えた春季大会。「チームとしては夏を考えて最後まで勝ち切ることを目標に苦しい展開でも勝ち切るまで頑張ろうと選手には話をしていました」という田中監督。秋と同様に準決勝まで勝ち進んだが、坂井に延長11回の末、4-5で敗れてしまった。津野は「チャンスでの一本が出なかった」と悔やむ。
 そんな選手たちの姿に田中監督は「春の大会だからという捉え方ではなくて、本当に悔しい表情をしてくれていました。次の日の練習からキャプテンを中心にもう一度やろうという雰囲気で練習に取り組んでいましたので、そういった面では夏に向けてはプラスに変えることができると感じています」と評価する。悔しい結果に終わったが、夏に向けてチームがより引き締まる意味では非常に中身のある大会だった。

 夏の甲子園に向けてカギを握るのは投手だと田中監督は分析する。投手陣の中心を担うのは右の本格派である山崎晃輝(3年)と右サイドスローの武盛智樹(3年)だ。タイプの違う二人を軸に上手く機能すればそう簡単に点は取られないと田中監督は見ている。背番号1は秋は武盛、春は山崎が付けており、二人の実力に大差はない。夏は連戦になることを考えれば力のある投手が複数いることはアドバンテージになる。この二人が力を合わせていけば自ずと勝ち上がるチャンスは見えてくるだろう。

 攻撃面では俊足を武器とする1番打者の猪奥がキーマンとなりそうだ。実際にこれまでの試合でも「猪奥が機能してくれるかどうかで攻撃面の展開が変わりました」と田中監督が話すように彼の存在は大きい。2番の津野とともに打線のつなぎ役として機能すれば大きく得点能力は向上するだろう。

 これまでに多くの強打者を育ててきた田中監督の打撃指導の方針はとにかく強く振ることだ。
 「バットがしっかり振れるようになってくれば色んな技術面に関しても習得できると思います。スイングでもティーでも段階を踏んでやり切れているかどうかに関してはきちんとチェックしています」と話す。実際にこれまでには優れた打者でも当てに行く打撃をしてしまって、思うような結果を残せないこともあったという。だからこそと強く振るということを選手には意識させている。

 この夏は第100回記念大会となる。そのことについて田中監督に尋ねると「頑張って県の代表になれれば、記憶に残って貰う可能性が高いので1年目の集大成として100回大会を取って、そこから上昇を目指していきたいと思います」と抱負を語ってくれた。長い歴史を数えてきた高校野球だが、福井工大福井の田中監督としての歴史は始まったばかり。新たな福井工大福井の歴史を作るためにも、夏の甲子園出場を目指す。

文=馬場遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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