龍谷大平安「100回大会で節目の甲子園100勝を!」
春夏通じて全国最多の甲子園出場73回を誇る龍谷大平安。甲子園通算100勝に王手をかけているが、4季連続で甲子園出場を逃している。昨年は春の府大会で優勝し、夏の優勝候補に挙げられていたが、決勝の京都成章戦で敗北。夏のレギュラーの半数以上が残っていて期待されていた新チームだったが、秋も準々決勝で京都翔英にサヨナラ負けを喫し、センバツ出場とはならなかった。
精神力を鍛える冬
龍谷大平安高校野球部
今年の龍谷大平安は甲子園でも上位を狙える戦力を整えている。投手は140㎞超右腕の島田直哉と小寺智也がいて野手にも高校通算37本塁打の松田憲之朗や俊足巧打の松本渉などタレント揃いだ。
しかし、夏、秋とここ一番の大勝負で敗れてしまっている。この原因を原田英彦監督は精神力の弱さを挙げた。「夏は先発の島田が試合前から緊張していました。秋も準々決勝で[stadium]わかさスタジアム京都[/stadium]に行ったとたんに様子が変わりました。やっぱり平安のファンは多いですし、球場の様子が変わるんですよ」と選手たちは名門校ならではの重圧を感じていたようだ。「でもそれは仕方ないですよ、背負ってるものが違いますからね。そこを彼らがどれだけ乗り超えられるかですよ」と選手の成長に期待している。
そのこともあり、この冬は精神力を鍛えるメニューを多く取り入れている。取材日も練習の最後にグラウンド前の傾斜が急な坂を走り込んでいた。「一番のテーマはこの冬は自分に負けない、負けない自分を作る。それをテーマにやっています。しんどいランニングが主になると思うんですけど、それをどれだけ平気な顔でやれるか、単調な練習をどれだけ確実にできるかという所です」と原田監督はこの冬の方針を語った。
また龍谷大平安と言えばアップに倒立やブリッジウォークなど数々の動きを取りいれていて『日本一のウォーミングアップ』とも称されていることでも有名だ。アップに力を入れている理由として原田監督は「うちはあまり技術がないのでたたき上げで鍛えて鍛えてという手法です。その中でパフォーマンスを向上させようと思えば当然、柔らかい筋肉と関節の可動域がいるんです。身体が柔らかくなって柔軟性がついて伸びてる子がいっぱいいます」と語っている。
この手法で大きく成長したのがヤクルトの高橋奎二で現エースの島田も「今まで自分が使っていなかった筋肉や柔軟性を鍛えたことで球速が伸びたと思います」とその効果を実感している。実際にこの2年で球速は137㎞から148㎞まで伸びた。
技術面では秋に失策をきっかけに失点した反省から守備面に力を入れている。厳しい寒さの影響でグラウンドが使えない日が多かったため、ノックの数は例年より少ないそうだ。龍谷大平安のノックの特徴としては実践的な練習で細かいところまで追及する点が挙げられる。昨年12月に京都選抜に参加した松田は「京都で自分たちより細かいことをやっているチームはない」と言うほどにその精度は高い。
課題は組織力向上
ノックを受ける選手(龍谷大平安)
夏を勝ち抜くためにも春の戦いは重要だ。春季大会の戦い方について原田監督は「年によって夏のために春の位置づけは変わってますが、今年に関しては形を作らないといけないし、自信をつけないといけません。乙訓がどれだけ甲子園を経験して伸びるかわからないですし、その辺りのチームに負けないように一つ形を作らないといけないと考えています」と捉えている。
今年のチームの特徴について原田監督は「センバツで優勝した時と技術的には変わらないと思いますが、リーダーがいないです。リーダーがいないと強くなれないですからそれを去年からで出ている選手にはそういう役割をしなさいと言い続けてます」と分析している。
4年前にセンバツで優勝した時は主将の河合泰聖(現中大)を中心に組織力が高いチームだった。組織力が高まれば甲子園出場、そして全国制覇という目標も決して不可能ではない戦力は持ち合わせている。これから夏までにどれだけチームが成熟していけるだろうか。
今年のチームの注目選手について原田監督はエースの島田と主将で4番の松田の名を挙げた。「二人には柱になってほしい。だれが見ても『あれが島田か、あれが松田か』と言うようになってほしいです」と期待を寄せる。
そんな中で存在感を発揮したのが松田だ。昨年12月の京都選抜で行ったオーストラリア遠征で4試合に出場し、18打数10安打4本塁打22安打と大暴れ。高校2年生が木製バットを使用したとは思えない大活躍を見せた。これで各校からマークされるようになるだろうが、そこで結果を残せるかどうかで真価が問われる。
[page_break: 100回大会は逃せない]100回大会は逃せない
坂ランニングに励む選手たち(龍谷大平安)
今年の夏は第100回大会という節目の年になる。このことについて原田監督に尋ねると「これを逃したくない、失敗したくないという気持ちが強いです。100回大会に平安がいないとダメでしょ。本当に魂かけて命かけて、命取られるという覚悟でやっています」と並々ならぬ決意を持って挑んでいることが伺える。
また甲子園通算99勝ということで第100回大会で100勝という記録もかかっている。「ちょっと遅くなったんですけど、100回大会で100勝というのはまあ縁かなとプラス思考に捉えています」と原田監督。記念大会で金字塔を打ち立てることができるだろうか。
最後に平安の野球とは何か原田監督に伺った。「歴史、伝統に持続く立ち振る舞いですね。平安に育ててもらったという自負がありますし、そのおかげで長く野球をやらせてもらった。だから僕はその信念は曲げたくないし平安っていうことを彼らに伝えていきたい。彼らが卒業してから僕は平安出身だというプライドを持てるようにしていきたいです。僕も歴史ってよくわからないし、長くやってるだけって思ったりもしますけど、みんな平安出てるっていうプライドを持っていますし、僕もそう思ってますからね。特別なもんやと思いますよ」
高校野球界をリードしてきた名門校としてのプライド。これが代々伝えられてきたからこそ伝統となり、歴史を積み重ねてきた。その自負があるだけに第100回大会を迎える夏の甲子園を逃すわけにはいかない。
(文=馬場 遼)