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大阪桐蔭 26年ぶりセンバツ連覇への「ラストストーン」

2018.03.18

 3月22日から始まる「第90回記念選抜高等学校野球大会」。今年、選抜連覇の偉業に立ち向かうのが大阪桐蔭(大阪)である。優勝を経験した選手が多く残り、秋でも投打ともに安定した力を発揮し近畿大会優勝を決めたものの、明治神宮大会では悔しい準決勝敗退。今回は西谷 浩一監督や選手たちにセンバツまでの軌跡と得た課題を振り返りつつ、センバツ連覇へ向けての「ラストストーン」を詳しく聴いた。

主将→経験者の「内省」が秋の原動力に

大阪桐蔭 26年ぶりセンバツ連覇への「ラストストーン」 | 高校野球ドットコム
ランニングで身体を温める選手たち(大阪桐蔭)

 今年の大阪桐蔭の選手はほかの高校の選手にはない経験をしている。それは全国大会の経験数だ。

第89回選抜高等学校野球大会
春季近畿地区大会
第99回全国高等学校野球選手権大会
第72回国民体育大会
秋季近畿地区大会
明治神宮大会
・日台交流戦

 ちなみに他校から数名を加え「大阪府選抜」として出場した日台交流戦も、大阪桐蔭のセンバツ優勝で出場資格を得たもの。普段、謙虚な語り口の西谷 浩一監督も「全部出させていただいたことは自信となり、良い経験となりました。今年のチームの大会の経験者が多く、だれよりもレベルが高い全国大会を多く経験している。その経験値の高さが強み」と自負する。

 このように2017年秋の大阪桐蔭はその経験値の高さを大会で存分に発揮したが、実はもう1つの要素がここには秘められていた。8月17日、夏の甲子園3回戦・仙台育英に敗れ、新チームのスタートは8月18日。西谷監督いわく「突貫工事」の形でチーム作りを進める中、その中心人物となったのは小中で主将経験があり、このチームでも満場一致で主将に就任した中川 卓也である。

 中川は「右、左も分からない状態でした」と明かした41人に対し、まずあえて自らのミスをクローズアップすることで、結束力を促した。

 「甲子園で僕がやったミス(9回裏二死から一塁ベースを踏みきれず、仙台育英に逆転サヨナラ負け)ですが、内外野の連携やベースを踏むなどの確認は「100%」やること。
 99%の確認をしても、1%チェック怠れば、それが命取りになる経験を僕はしました。だから選手たちには100%の徹底をさせたんです」

 主将の「内省」はチームの主力たちにも伝播する。秋の大阪府大会では全7試合で、すべて7得点以上で優勝。10月1日から10月14日まで「愛顔つなぐえひめ国体」含め計8試合というハードスケジュール。西谷監督は「旧チームと新チームが分かれて行動することになり、技術面を統一することに不利な一面がありました」と語りながらも勝ち進めたのは、根尾 昂藤原 恭大を中心とした経験者の「内省」が大きな基盤となった。

 根尾は夏の大会のパフォーマンスについてこう振り返る。「完成されたチームが多くなる中、まだまだ自分の脆さと弱さを実感した」
 よって「自分の形」で打つことにこだわった結果、投手として平均球速140キロ台をたたき出すまでに状態をあげるなど投打で活躍し近畿大会でも優勝。明治神宮大会では準決勝で創成館(長崎)に屈し新チームの公式戦連勝は12で止まったが「自分の結果ではなく、チームの勝ちを最優先にする」中川イズムは5季連続甲子園出場の大きなファクターとなった。

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新戦力の「ラストストーン」でセンバツ連覇へ

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坂を駆け上がる選手たち(大阪桐蔭)

 

 昨秋は経験者に加え、新たにレギュラーとなった選手たちも躍動した。

 1人目は前チームの正捕手・福井 章吾慶應義塾大)から、キャッチング技術、リードなどイロハを学び、投手の個性を生かしたリードと強肩を発揮した捕手・小泉 航平

 2人目は勝負強い打撃でチームを盛り上げる一塁手・井阪 太一。3人目は「いつも自主練では遅くまでバットを振っている努力家で、秋に身体能力の高さを発揮できるようになった」(西谷監督)成果を公式戦チームトップ打率.457で示した右翼手・青地 斗舞。「この3人の成長は非常に大きかった」と指揮官も目を細める。

 さらにレギュラーの座を虎視眈々と狙う選手も出現している。12月の日台交流戦で13打数5安打を記録した石川 瑞貴は井阪と一塁手の座を争う存在へ成長。負傷した藤原に代わり、本来の捕手ではなく左翼手に入った青木 大地も10打数6安打。さらに昨秋までベンチ入りがなかった1年生の宮本 涼太も二塁手として20打数5安打を記録。ドラフト注目の大型二塁手・山田 健太をも脅かす存在となった。

 「台湾で、今まで出場がなかった選手を起用しようと思っていたので、これは大きい」と西谷監督。「引き続き全体が底上げしてほしい思いは変わりないですが、やはりこれまでの経験者たちがほかの選手たちにはない経験をしているので、経験者としての強みを発揮してほしい」と経験者たちの奮起を促しつつ、接戦も想定しなくてはいけないセンバツで勝敗を左右する人材的「ラストストーン」の手ごたえは感じている。

 さらに大阪桐蔭はこの冬、戦術的「ラストストーン」の底上げとなる「走力強化」にも重点を置いた。「ここまでは走れる選手が、1番・藤原と2番の宮﨑 仁斗しかいない。そこでこの冬は30メートルダッシュを繰り返し行っています」と主将の中川。そして最後にこう話した。

 「注目されることを力に変えていきたいです」。主将から伝播した「内省」。冬の人材と戦術の「ラストストーン」づくり。その循環を積み重ねた大阪桐蔭は、聖地・甲子園の大観衆の前で真にスキのないチームとして、1981年・1982年のPL学園以来となるセンバツ連覇へのベストショットを放つ。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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