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下関国際(山口)「広い球場に対応できてこそ一流の証」【後編】

2018.02.19

 前編では下関国際の「守り」、「試合に活きるノック」を中心にお話しを伺った。
後編は、実戦形式の練習の中でも特に細かく指示を送っていた連携プレーについて話を伺った。

【前編】下関国際(山口)「守備が上手い選手の定義を考える」を読む

「リレーマン」と「カバーマン」で作る下関国際のカットプレー

下関国際(山口)「広い球場に対応できてこそ一流の証」【後編】 | 高校野球ドットコム
細かなこともおろそかにしない姿勢が重要だ。

 山口県内の公式戦で使用される球場は総じて広い。今回の取材の舞台となった[stadium]下関球場[/stadium]、[stadium]宇部市野球場[/stadium]、夏の大会の準々決勝以降で使われる[stadium]西京スタジアム[/stadium]は両翼100mを誇る。そのため、カットプレーの乱れが思わぬ失点に繋がることも多い。

 「球場のサイズが広いので、右中間を破られたら三塁打はほぼ確定。そこでカットプレーが乱れでもしたら一気に本塁まで還られてしまう。そういったリスクを防ぐために『リレーマン』と『カバーマン』を立てて、カットを繋ぎます」

 走者無しの状況でレフト線を破る長打を浴びた場合を例に考えてみよう。この場合、遊撃手が「カットマン」として中継に入り、二塁手が二塁ベースに入るのが一般的だろう。しかし、ここでカットマンである遊撃手への返球が乱れたら、球場の広いサイズが災いし、三塁を陥れられる可能性が高い。そこで実際に中継を行う「リレーマン」に加えて、バックアップの役割を果たす「カバーマン」の存在が重要となる。

 先に挙げた例を下関国際式の中継に当てはめると、遊撃手が「リレーマン」となり、二塁手が遊撃手の「カバーマン」として返球の乱れに備える。このままでは二塁ベースががら空きとなるので、一塁手が二塁ベースに入り、中継のラインが完成。「カバーマン」を入れることで返球が乱れた際にも不必要に先の塁を奪われる可能性をグッと抑えることが可能となる。

 このように一塁手が中継に絡む機会が多い下関国際。そのため「打つだけで動けません、といった選手は一塁には置かないですね」と語る坂原監督。現に中国大会で一塁手を務めた佐本快は遊撃出身の選手。スピーディーな動きでカバーリングをこなしていたのも印象的だった。
こうした中継プレーでの連携も実戦ノックで磨いている下関国際。守備で見せる高いカバーリングの意識は「ここはカバーリングが甘いから次の塁を狙える」というように走塁にも波及し、積極的な走塁を絡めた高い攻撃力にも繋がっているという。

[page_break:下関国際内野陣に聞く「入学からの成長」]

下関国際内野陣に聞く「入学からの成長

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下関国際内野陣 左から川上、甲山、濵松、佐本

 上で挙げた守備への取り組みで入学後どう成長したか。中国大会でも守りでチームを盛り立てた内野陣に話を伺った。

 主将で二塁の濵松晴天は「前後の幅を意識することで対応できる打球が増えました」と入学からの成長を口にし、「キャッチボール段階からカットプレーやタッチプレーへの移行を意識して取り組んでいます」と実戦に活きる高い意識で練習に臨んでいるとも語ってくれた。
濵松同様、今夏の甲子園をレギュラーとして経験した三塁の川上顕寛は「甲子園を経験したことで、『甲子園でどうプレーするか』と具体的に考えながら取り組めています」と来たるセンバツへの思いを滾らせながら、日々の練習に取り組んでいるようだ。

中国大会で浮かび上がった「守備の課題」と目指す「これから」

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中国大会準優勝に終わった下関国際 選抜では甲子園初勝利を目指す

 「ゴロを打たせたらピッチャーの勝ちだと僕は思っています」と語る坂原監督。
「ゴロが抜けるのは一塁線、一二塁間、二遊間、三遊間、三塁線の5箇所。この箇所に『いる』ことが出来れば防げるのがゴロなんですよね。打球方向を予測して上手くポジショニングを取ることができれば打ち取れる」

 投手として社会人野球までプレーを続けた坂原監督。「投手としてはゴロを打たせたら『良し!抑えた!』という感覚なんですよ。なので『捕ってくれよ』と笑」と投手心理に基づいた考えを語ってくれた。
「頭を越された場合、野手は止めようがないので。長打は投手の責任。けれどもゴロは野手の責任だと考えています」

 日頃からこの意識を野手陣にも話すという坂原監督。中国大会では大胆なポジショニングで痛烈な打球をアウトにする場面も多く見られた。しかしながら、おかやま山陽に最大9点差をひっくり返される逆転負けを喫した決勝戦ではその「ポジショニング」に迷いが生まれていたという。

 「徐々に点差が詰められていく中で気持ちが『守り』に入ってしまった。思い切った守備位置を敷いて失敗したらどうしよう、と考え出して定位置を守る。そして捕れていたはずの打球が抜ける…。チームとしての精神的な弱さが出た試合でした」

 記録上、失策はわずかに1つだったものの、「記録に残らない失策」で逃した優勝。試合後「ウチは守りのチーム。そこが崩れては…」と悔しさを滲ませる坂原監督の姿が強く印象に残っている。
「甲子園での試合は『楽な展開』にはならないと思うんです。必ず競った試合展開になる。そうした時に点差があるときと同じような大胆さを保てるか、ピンチのときこそ時間を使って立て直せるか。もちろん私からも指示は出しますが、それを選手達自身で出来るか。夏に向けてもそこが大きな課題ですね」

 

 中国大会以降、技術面よりも精神面の成長を繰り返し促しているという坂原監督。精神面での成長、「自立」を果たしたとき、練習で磨き上げた高い「状況判断力」がより強く発揮されるはずだ。甲子園初勝利がかかるセンバツ、そして夏連覇、3季連続出場の期待がかかる来夏へ。磨き上げた「守備」を武器に突き進んでいく。

(取材・文=井上幸太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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