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県立三本松高等学校(香川)「甲子園優勝」への中期・短期・日々目標設定【後編】

2017.10.30

 2017年9月。
「応援ありがとうございました」の張り紙が校舎に掲げられるなど、いまだ真夏の甲子園ベスト8の余韻が残る香川県立三本松高等学校。3年生は「愛顔つなぐえひめ国体」を控えているとはいえ、すでに1・2年生中心となった通常練習直前のベンチ前には横長のホワイトボードが掲げられた。

 左上に「最大目標」として大書きされたのは「甲子園優勝」。これは3年生たちもたどった道のり。では、三本松はいかにして、最大目標に近づいていったのか?今回はその設定法と具体的なアプローチを日下 広太監督と3年生たちの証言から迫ってみたい。

「甲子園優勝」への中期・短期・日々目標設定【前編】から読む

経験を「発展」させ、甲子園ベスト8へ

県立三本松高等学校(香川)「甲子園優勝」への中期・短期・日々目標設定【後編】 | 高校野球ドットコム

川﨑 愛弥(三本松)

 自立・自律を求め、「球種」でなく「高低」を求めてきた佐藤 圭悟の活躍によって春の四国大会もベスト4進出。ただ、三本松はあえて夏に佐藤の活躍を排したアプローチをかけた。
「佐藤は夏は研究されると思ったし。香川大会では予想通り打たれた」5番を打った川﨑の冗談は本音も多分に含まれている。

「春の四国大会準決勝の敗戦で香川大会では打線を固定した方がいいと思いましたし、早稲田実との県高野連招待試合では佐藤、渡邉のバッテリーが甲子園を想定した配球をしてくれた。それとその1週間前、打てるし走れる愛工大名電(愛知)と練習試合で対戦した経験が一番大きかった。香川大会でも選手たちに聞いたら『でも、愛工大名電の方が上です』と言ってましたから(笑)」(日下監督)

 甲子園優勝へのあらゆる可能性を排除せず、発展させていく。これが香川大会防御率3.16と佐藤が苦しんだ中、スタメン9人中7人が打率.350、チーム打率.387での24年ぶり香川大会につながった。

 よって、三本松にとって甲子園の2試合は「甲子園優勝」を目指し、香川大会までの集積を最大限発揮する場となった。中でも3回戦の二松學舍大附戦では「最最最最最大集中」の指揮官号令で序盤をしのぐと、「セオリー通り低めに集めて、併殺を取りにいくことがはまってくれた」佐藤 圭悟渡邉 裕貴のバッテリーに内外野守備が連動し、4併殺を奪っての5対2快勝。9回表には3得点と攻守に持ち味を出した。

 だからこそ周囲が称賛するベスト8に対し、日下監督はもちろん全部員は誰も満足していない。
「悔しい思いしかない」副主将・川﨑の絞りだし方は3年生たちを代表する弁である。

[page_break:「100回大会世代」へ向けたアドバイス]

「100回大会世代」へ向けたアドバイス

県立三本松高等学校(香川)「甲子園優勝」への中期・短期・日々目標設定【後編】 | 高校野球ドットコム
毎週目標設定を掲げている豊田工

 とはいえ甲子園初勝利から初のベスト8にまで到達した三本松の成果は決して色あせるものではない。最後は3年生たちと日下監督に「100回大会世代」へ向けた目標設定のアドバイスを聴くことにしよう。

前主将6番捕手・渡邉 裕貴
「大きな目標でも小さな目標でもいいと思いますけど、そこへ向かってできることをコツコツとやっていくことが目標達成は近づいてくる。そして、練習はうそをつかないです」

前副主将5番右翼手・川﨑 愛弥
「僕らが勝てた理由はいままでと違って本気で甲子園制覇を目指していたこと。だから、甲子園ベスト8を達成することができたと思います」

4番一塁手・盛田 海心
「大会で最大限力を出すことが難しい。そのために練習や取り組みをしてほしいです」

9番遊撃手・黒田 一成
「香川大会で打率5割を打てたのは努力の結果だったと思います。時間は平等に与えられてるので、それを無駄にせず活かしてほしいです」

3番投手・佐藤 圭悟
「全国3000校以上ある中で甲子園に行けるのは50校弱しかない。だから、意思が強いところが最後に勝つと思います。効率も考えて楽しんでやってほしいです」

川田 那菜マネジャー
「私はマネジャーは通常の仕事はできて当たり前。その中で部員の特徴をつかんだり、心配りをすることで運を引き寄せることができると思います。女子マネジャーの皆さんも普段から意識を高く持って、これ以上できないくらい、選手に負けない情熱を持って取り組んでほしいです」

日下 広太監督
「目標設定の確認が大事だと思います。PDCAサイクルのプラン・ドゥはできていても、チェックが今振り返るとこれまでのチームではできていなかった。だから、3年生のチームでは中間目標を設定したんです。そこに対してスイング量とかで月目標も設定して達成度を見ていく。そうすれば一日の目標も決まっていくと思います」

この秋の香川県大会では3回戦で4季連続となる英明戦を戦い2安打で0対1と完敗を喫した三本松。ただ、このチームにはひかれたレールがある。そのレールをたどりつつ、さらなるバージョンアップを甲子園経験者の主将・下地 海誠を中心にいかに図れるか。その先に見えるのは先輩たちが本気で目指した「甲子園制覇」である。

(取材・文=寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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