飯塚高等学校(福岡)新チームは本気を共有できる【前編】
この夏ベスト16入りを果たした福岡県飯塚市にある飯塚高校。グラウンドのバックネット裏に、球場全体が見渡せる2階建ての簡易なプレハブがある。それが監督室である。そこで吉田 幸彦監督がゆっくりと言葉を選びながら話してくれた。
新チームは「本気」を共有できる
吉田 幸彦監督(飯塚)
「正直に俺の気持ちをあなたたちに伝えていくぞって話したことがあるんです。ある記事に書いてあったんですけど、監督は好かれなくてもいい、嫌われてもいい。選手がうまくなれば、強くなればいいって。本気になってくれれば、ものすごくいい。選手に恨まれても俺は良いって。選手に陰口をたたかれてもいい。しかしいうべきことは言う。手を抜くな、やりきれ。その思いを手帳にも書いています。それを新チームがスタートするときに伝えています」
吉田監督の思いは、選手たちにもしっかり届いている。
「俺はこういう思いで指導しているんだよというのを伝えとかないと。指導者の一方通行にならないようと思いました。いままであまり私の思いを口にしたことはなかったんですけど。この年代は反応しますね。反応してくれるし、手を抜く選手もあまりいないですから、だから指導してて、練習を見てて楽しいです。選手も、『負けてたまるか!』というのは思ってますよね。もっともっと強くなれるチームだと思っています」
さらに、言葉を続ける。
「大会前には本気になってくれるんですけど、本気になるまでがものすごく長い代もあります。ただ、この新チームの選手たちは、スタートから本気モードなんですよ。大塚航を含めて他の2年生の子もいい雰囲気でやっている。僕らも本気モード度を受け止めて、この雰囲気を保ちながらもうちょっとレベルアップさせんといかんなと思っています」
チーム全体が「本気」の中で吉田監督が考えるチーム
吉田 幸彦監督(飯塚)
「秋季大会までに試合に出てた子も含めて全員がもう一段階、レベルアップしないとというところはありますよね。やはり少々のピッチャーというか、140キロを投げてくるピッチャーを簡単とは言いませんけど、攻略をできるチームになっていかないと上をいくら目指すといっても僕は目指せないと思うんですよ。そこのレベルアップと、投手力のレベルアップですよね。
秋季大会を勝つには打撃力と投手力の両方ですよね。両方兼ね備えていれば九州大会に出て、上位進出という可能性も大いにあると思うんです。2番大塚 航、3番野崎 雅旭、4番片渕 一葵、5番大坪 輝は夏を経験したわけですから、この子たちがもうワンランクレベルアップして、あとそれに新しくメンバーに入る子が追随をして、一緒になってチームのレベルアップを全体としてやっていかないと、いくら秋勝つぞと言ったって勝てる力にはならないですよね。」
一方、投手力についてはこのように語ってくれた。
「辛島 航から始まって、猿渡 眞之とか投手力については自信をもって戦ってきましたが、今年は投手力の伸びしろはまだこれから。うちは、練習量やスイング量にこだわって練習ができる選手が多いので、夏には野手で勝ってもおかしくないようなチームには仕上げられるんですけど、しかしそれに伴った投手が育てられるかどうかというところが一つの課題です」
[page_break:吉田監督が期待する選手]吉田監督が期待する選手
左から大塚選手、野崎選手、片渕選手、大坪選手
「大塚、野崎、片渕、大坪 これは誰が見ても今のうちの中心選手ですので、この子たちが全員を引っ張ってもらいたいですよね。いままで後姿を見ているわけですから、さらに『俺は飯塚高校の4番を打っているんだ』というようなのを後輩たちに見せてほしいですよね。
あと、1年生では矢野 照正ですね。この子も最終的にベンチ入れたんです。3番で起用した時に、満塁でレフトオーバーの走者一掃とかを打ちました。165センチしかないですけど、振れる選手で、また別のパンチ力というかそういうのがあるんです」。
「今年は「本気」という言葉を彼らに投げかけている」
この日、飯塚は[stadium]北九州市民球場[/stadium]で練習試合を行っていた。飯塚は自分たちの野球ができずに敗戦。吉田監督は試合後、課題を伝えるとともに球場を走るよう選手に伝えた。その事について、大塚主将は「なぜ走らないといけないんだと思いましたが、なぜそう言われたのか、強くなるためにどうするのかを考えました」と答えてくれた。いまチームには確かに勝利のための「本気」が浸透してきている。
吉田監督は、そんなチームの強みと課題をわかっている。チームが「本気」という言葉を胸にどのような成長曲線を描くのか期待せずにはいられない。
後編では吉田 幸彦監督が期待する4名の選手、そして吉田監督が絶賛する選手を紹介します。
(文=田中 実)
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