第448回 秀岳館高等学校(熊本)「目標」を「ストレッチ」し続ける 〜数値化して明確に〜【後編】2017年07月16日

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[1]「ストレッチ目標」を作ることが大切
[2]勝ち抜くために必要な要素
[3]4度目の正直で「日本一」を目指す
全国屈指のハイレベルな安定感を誇る秀岳館。どんな発想、練習に基づいて秀岳館の野球は生まれてくるのか。後編では鍛治舎監督が掲げる「ストレッチ目標」に迫ります。
秀岳館高等学校(熊本)「目標」を「ストレッチ」し続ける 〜数値化して明確に〜【前編】から読む
「ストレッチ目標」を作ることが大切

廣部 就平主将(秀岳館)
「ストレッチ目標を作ることが大切なんです」と鍛治舎監督は力説する。ストレッチ目標とは、経営者や管理職が手を伸ばしても届かないような目標を掲げ、社員や部下がそれを達成するために最大限に自分の力を発揮することをいうビジネス用語だ。パナソニック時代に野球部だけでなく労政部長や広報部長など社業でも力量を発揮した鍛治舎監督らしい発想である。
2014年4月、秀岳館の監督に就任して「3年で日本一」と掲げたのは最大のストレッチ目標だろう。
「最初の頃はとてもそんな雰囲気じゃありませんでしたけど」と苦笑するが、3年目となる16年は春夏ベスト4、17年春も合わせて3季連続4強入りと「日本一」にあと一歩のところまで近づいたことは間違いない。
枚方ボーイズ出身の廣部主将は「一緒に日本一を目指そう!」という鍛治舎監督の言葉に動かされてはるばる熊本までやってきた。福岡の糸島ボーイズ出身の田丸は「中学時代に枚方ボーイズと対戦して衝撃を受けた」ことがきっかけだった。どのチームにもない雰囲気とオーラを感じて、そんなチームを作り上げた監督の下で野球をしてみたいと思うようになった。
鍛治舎監督が以前指揮していた枚方ボーイズをはじめ、選手の大半が県外出身の野球留学生であり、地元出身者は少ない。社会人、少年野球から転身してきた鍛治舎監督も含めてその斬新さが世間から注目を浴びる一方で、心ない誹謗中傷があるのも事実だ。廣部主将は「試合に勝って校歌を歌っているときに野次られたのは一番辛かった」と振り返る。
「それはある意味仕方がないことだと思います」と鍛治舎監督は割り切る。新しいこと、人がやらないことにチャレンジする人生には必ず障害が立ちはだかる。出る杭は打たれるのが世の常だ。それでも「不思議なもので結果を残すとそういう声はだんだん少なくなってくるんです」(鍛治舎監督)。あえて未知の世界に挑むのは「反骨在野の母校・早稲田大の精神でしょうか」。
16年は熊本地震があり、「自分たちが勝ち進むことで熊本の人たちを元気づけよう」(廣部主将)という気持ちで夏の甲子園に挑んだ。
「僕たちが勝ち進んだことで『勇気づけられた』『笑顔になった』という反響があったのが一番うれしかった」と廣部主将は胸を張る。

- 政 純一郎(つかさ・じゅんいちろう)
- 生年月日 1974年12月18日
- 出身地 鹿児島市
- ■ 経歴
鶴丸高校―同志社大 - ■ 鹿児島新報で6年間スポーツ担当記者。2004年5月の同社廃刊後、独立
- ■ 「スポーツかごんまNEWS」を立ち上げ、野球、バスケットボール、陸上、サッカーなど主に鹿児島のスポーツを取材執筆する。2010年4月より奄美新聞鹿児島支局長を兼務
- ■ 著書に「地域スポーツに夢をのせて」(南方新社)「鹿実野球と久保克之」(同、久保氏と共著)
- ■ Webでは「高校野球ドットコム」、書籍では「野球小僧」(白夜書房)「ホームラン」(廣済堂出版)「陸上競技マガジン」(ベースボールマガジン)「月刊トレーニングジャーナル」(ブックハウスHD)などに記事を寄稿している。
- ■ 野球歴は中学から。高校時代は背番号11はもらうも、練習試合に代打で1打席、守備で1イニングの試合経験しかない。現在はマスターズ高校野球のチームに所属し、おじさんたちと甲子園の夢を追いかけている
- ■ フルマラソンの自己ベスト記録は3時間18分49秒(2010年のいぶすき菜の花マラソンにて)。野球とマラソンと鹿児島をこよなく愛する「走るスポーツ記者」

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