Column

興国高等学校(大阪)「名門復活へ!124人の力を結集し、頂点へ」

2017.07.05

 男子校ながら全校生徒が2300人を超える超マンモス校。サッカー部は300人以上の部員を抱え、ボクシング部は世界チャンピオンを3人輩出するなど部活動が盛ん。校内にあるトレーニングルームはプロにも引けを取らない豪華さで、プロテインバーまである。学校行事も体育館が改装工事中のため入学式はオリックス劇場で、6月末の体育大会は京セラドームで行わるなど規模が非常に大きい。もちろん野球部も124人の大所帯だ。

中野が5本塁打と大爆発。打撃力が最大の武器

興国高等学校(大阪)「名門復活へ!124人の力を結集し、頂点へ」 | 高校野球ドットコム

中野 翔哉(興国)

 今春は5試合戦って31得点、13失点。最大の武器は大量得点を狙える打撃力。秋も初戦から3戦連続コールド勝ち。冬の練習でも打撃を重点的に鍛えるためスイングの種類と量にこだわり、連続ティーやロングティーなど暇があればバットを振った。冬の間、木製バットを使うことは珍しくないが、興国の場合はシーズンインしてからも月〜木曜は木製バットでフリーバッティングを行う。

 そして今大会、一躍名を上げたのが長打力が武器の中野翔哉(3年)。初戦から4試合連続計5本塁打を放ち、大会記録に並んだ。高校通算本塁打は6月20日の時点で14本。ベンチ入りは1年秋だから下級生の頃から本塁打を量産していたわけではない。この春、一気に飛躍した陰には智辯和歌山でも部長を務めた喜多隆志部長のアドバイスがあった。

「いいものは持っていたんですけど、気持ち的に受け身になっていた。初球の甘いところ見逃さず空振りしてもいいから振っていけ、と言いました」
 この指導で吹っ切れた中野は初戦の浪速戦でサヨナラ弾を含む2発を放つと、その後もアーチを連発。5回戦の上宮太子戦では昨年末に大阪選抜に選ばれた森田輝(3年)からあわや新記録となる本塁打、スタンドインまで数十cmのフェンス直撃の三塁打を放ち、6番・高橋の犠牲フライでホームを踏んだ。

 しかし、これが唯一の得点。打線は自慢の爆発力を発揮出来ず1対3で敗れた。田中英樹監督は「上位で戦うためにはいいピッチャーからどう点を取るか。森田君はいいピッチャーですね。ピッチャーらしいピッチャー。ただ課題を持ってやっていたと思うんです。だから春のピッチングと夏のピッチングが同じとは思わない。その上での1点だから不満です」そこそこの投手、ではなく好投手からいかに点を取るか。夏へ向けての課題は明確だ。

[page_break:エース・植田は投打で注目の二刀流]

エース・植田は投打で注目の二刀流

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植田 健人(興国)

 法政大学の助監督を務めるなどした田中監督が興国の監督となったのは2015年夏の新チームから。誰がどんな特徴を持っているか全くわからない、そんな手探り状態から始まった新チームのチーム作りでまず始めに決めたのが当時2年生の植田健人をピッチャーで4番にすることだった。

 投打で注目される植田は「テンポ良く打たせて取ることが出来るピッチングが持ち味です。最近は狙って空振りを取れるようになってきました。試合の中でも三振が欲しい場面は絶対あると思うので、欲しいところでとれるようになれば、もっと良くなると思います」と話す。

 中学時代はコントロールで勝負するタイプの投手だったが、体が逞しくなるにつれ球速も上昇。
「ストレートで簡単に追い込むことが出来るようになったことが夏に向けての手応えです。春が終わってからも球威上がって夏に勝負出来るレベルになったと思います。春の舞台でいい経験させてもらって強いチームとやる中でアドレナリンが出たというか、抑えようという気持ちが強く出てその中で手応えのあるボールが投げられるようになりました」
 春の大会を通じての成長は、大会後もさらに右肩上がりの曲線を描いているという。

 中野に喜多部長のアドバイスが効果的だったように、植田にも頼もしい存在がいる。主に投手陣を見る清原大貴スーパーバイザーは元阪神の投手。植田によると教わったのは体の使い方や配球などのメカニズム。知識が増えることで試合の中での修正能力が向上したという。田中監督も「春以降、フォアボールが少なくなって無駄なランナーを出さなくなりました。変化球でカウント取れるようにもなって、安定感が出てきたように思います」と信頼を寄せている。

 エースとしてはもちろんだが、旧チームでも主軸を務めた打撃力も魅力十分。昨年末には大阪選抜の一員に選ばれ、台湾の好投手を相手に8打数4安打4打点の好成績を残した。主に5番・指名打者として試合に出場し、履正社の安田尚憲(3年)、若林将平(3年)とクリーンアップを組んだ。

「大阪を代表する選手のスイングを見て学ぶものがありました。安田や若林はボールに合わせるのではなく、自分の素振りの中にボールを当てはめている。飛ばせる理由がこれなんだなと思いました」

[page_break:投打の次は守備強化]

投打の次は守備強化

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興国高校ナイン

 1人で試合の流れを変えられる選手がいることは大きなアドバンテージだが、植田、中野以外にも好選手は多い。投手陣ではキレで勝負する傳佐が台頭。春は上宮太子戦を含む3試合に先発し結果を残した。ブルペンには外野と兼任でマウンドにも上がる山内尚哉(3年)らもいる。1番・藤川嵩平(3年)から始まる打線は自己犠牲の精神でつなぐキャプテンの内藤裕貴(3年)など力のある選手が並び、智辯和歌山の強力打線を熟知する喜多部長も「切れ目ない打線が出来つつある」と手応えを感じている。

 さらに「スイングスピードがつかないとキレのあるボールに対して目切りが早くなって、ボール球に手を出してしまう。振る量を確保しないと。自信を持って試合に臨めるよう全てやり切って試合に入れたら。どんな相手が来ようと動じないところまでこの6月にやらせたい」と鍛え夏へ挑む所存だ。

 投打に充実する一方、底上げしたいのがディフェンス面。田中監督は「強いなっていう勝ち方をする時と、ミスから失点することもありますので、もうちょっと戦い方に安定感増したいですね」、キャプテンの内藤は「1つのミスを全員でカバー出来るように、いかにフォロー出来るか」と話す。

 ハマった時の強さならどこが相手でもがっぷり四つに組めるが、1つのミスが命取りになるトーナメントでは足元をすくわれかねない。ノックのテーマは大きく2つ。しつこくボールを追いかけることと簡単に弾く、簡単なエラーを無くすこと。僅差の終盤を想定し一、三塁や二、三塁からの挟殺プレーにも時間を割いていた。

反省と対策で準備万端。1975年以来の甲子園へ

 清原スーパーバイザーは試合巧者・常総学院のエースとして2007年の甲子園に出場。キメの細かい野球を得意とする同校のサインは複雑で、選手は入部してまず最初に40項目ある常総学院野球部の基本方針を叩き込まれるという。5年目を迎えた吉田久人コーチはPL学園出身。当時指揮を執っていた藤原弘介監督(現・佐久長聖監督)はベンチ内でも常にストップウォッチを握りしめ、選手には打球方向と守備位置だけでなく外野手が膝をついて捕球するかどうかでゴーかストップかの判断を求めた。そういう環境で緻密な野球を学んだ2人なだけに春に敗れた上宮太子戦での反省と対抗策は持っている。もう同じ轍は踏まない。

 抽選の結果、初戦は大会2日目の第1試合で貝塚南と対戦することが決まった。舞台となる[stadium]南港中央球場[/stadium]は表面温度の高くなる人工芝。暑さ対策としてアップではジャンパーを着用し、人工芝での打球処理に慣れるため[stadium]南港中央球場[/stadium]を借りての練習も行う。対策と準備には余念が無い。

「よく2年でここまで成長したな。まだまだ力つけていかないとあかんのですけど楽しみです。夏の大会を迎えるにあたり僕はワクワクしてます。どんな戦い方してくれるか楽しみです。彼らの持ってる力を存分に発揮させてやりたい、それだけですね。学校、OBも含めて期待してくれているので、その期待に応えたい」(田中監督)

 単なる有力校の1つではなく注目校の1つとして迎える今夏、1975年以来32年ぶりの甲子園出場を目指す。

(取材・文=小中 翔太

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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