Column

高崎健康福祉大学高崎高等学校(群馬)「機動破壊の到達点はまだ見えない」【Vol.4】

2017.07.08

 最終回では、今年の健大高崎の目指す場所、夏で勝ち上がるために課題にしていることを聞きました。

健大高崎(群馬)「対応は柔軟、プレッシャーは一貫」【Vol.1】
健大高崎(群馬)「機動破壊は打つチームほど完成に近づく」【Vol.2】
健大高崎(群馬)「選手、スタッフのコンビネーションで生まれたホームスチール」【Vol.3】

徹底・共有・対応

高崎健康福祉大学高崎高等学校(群馬)「機動破壊の到達点はまだ見えない」【Vol.4】 | 高校野球ドットコム

練習の様子(健大高崎)

 相手にプレッシャーを与えるために機動力を活用する。そこから逆算して打力も伸ばす。この「逆算の論理」はまだまだ続く。

「選手たちには『ディフェンスができないチームに機動力はいらない』といっています。何点取られるかわからないチームが1点を取るために、機動力を細かく使っても大勢に影響ないじゃないですか。走塁はクロスゲームにならないと効果を発揮しません。センバツの準々決勝の秀岳館戦(2対9で敗戦)がそうであったように、点差が開いてしまっては5盗塁しても効果は薄い。逆に4点差ビハインドまでなら、1個の盗塁で試合の雰囲気が変え追いつける印象はあります。特に甲子園はそういう雰囲気にさせてくれる場所。なので、守備面では“5点差を作らせないディフェンス”をテーマに取り組んでいます」

 毅コーチのこの感覚が普遍的なものだとすれば、対戦相手は健大高崎相手に5点リードを奪うまでプレッシャーを感じ続けることになる。そして、確率を求める健大高崎は年々精度を高めてきている。対戦相手にのしかかるプレッシャーの重さは、今後さらに大きくなっていくことが予想される。

 健大高崎のような、相手にプレッシャーをかけられるチームになるためにはどうしたらいいのか。今回の取材で見えてきたポイントが3つある。

 1つ目は「徹底すること」。バッター1人1人では効果が感じられないことでも、チームで束になってやり続けることでプレッシャーは大きくなる。

 2つ目は「共有すること」。今回の取材で指導陣、選手に話を聞いて驚かされたのは、ある一つの場面で何をすべきか、全員が同じ考えを持っていたということだ。同じ考えを共有することでチームのベクトルが固まる。そのベクトルが固まるほど対戦相手に与えるプレッシャーは重く、鋭利になる。

 3つ目は「対応すること」。野球は机上のゲームではない。試合が始まれば予想外のことの方が多いくらいだ。その変化や流れに応じてそのつど最適の選択肢を選んでいく。それまでの自分の走攻守を振り返りながら、自分が相手の立場だったらどうされるのが一番困るか、を考え続けることでベストな選択肢を選べるようになるはずだ。

[page_break:相手に合わせることは練習試合から常に意識させる]

相手に合わせることは練習試合から常に意識させる

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練習の様子(健大高崎)

 以上の3つのポイントとプラスアルファの感覚を、健大高崎では実戦で養っていく。
「相手に合わせることは練習試合から常に意識させます。練習試合では、対戦相手さんからあらゆる対策をされる。その一つ一つを経験値とし、かつ、予想外の対策を打たれても早めに気付く習慣づけをしていくことで、対策の対策ができるようになっていきます」

 センバツ福井工大福井戦(試合レポート)、土壇場の場面でのダブルスチールも、練習試合では何度もやった形だという。甲子園の試合だけを見ていれば虚を突くような「ギャンブル」に見えるプレーも、関係者にとっては「よくやるプレー」なのだ。裏を返せば、それだけ練習試合を通して準備しているということ。行き当たりばったりでは相手に有効なプレッシャーは生み出せない、ということだろう。

 機動破壊を定着させ、打力を伸ばし、ディフェンス面にもテーマを見出した健大高崎。今は夏の全国の頂点へ、さらに足りないものを見出している。

「すごいスケールがあるチームに立ち向かっていくにはどうすべきか。それを考えると同等とは言わないまでも、近づくくらいのスケール感を自分たちも持ちたい。近づくことができれば、機動破壊や継投を拠り所に互角の勝負ができる。なので、今は選手の身体づくりに重点を置いています」(毅コーチ)

「課題はピッチャー。秋春モデルと夏モデルでは違いますから。夏になると、春まで空振りしていたボールを触ってくる。牽制アウトになっていたところがセーフになる。これまでアウトにできたボールができなくなることを予想して、夏モデルのピッチャーを作り上げていかなければなりません」(美峰コーチ)

 一見、取り組んでいることは別々に見えるが、全ては「機動破壊」を最大限に活かすことを出発点に逆算して考えた結果、関連して見えてきた課題である。適宜課題に取り組むことで、チームの完成度は無駄なく密度を増し、時間がたつほどに隙は埋まっていっているように見える。

 今でも十分な威力の機動破壊。だが、その到達点はまだ先にあるようだ。

(取材・文=伊藤 亮

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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