第430回 花咲徳栄高等学校(埼玉)「徳栄投手メソッドの原点」【vol.3】2017年04月30日

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【目次】(ページ下部のフォトギャラリーもチェック!)
[1]「夏に勝つ」に至るまで
[2]自立を促すことでもたらされた確かな効果

■第1回「選手を『育成』しつつ『勝利』も呼び込む二刀流理論 徳栄メソッドの正体」
■第2回「非日常な状況で勝てる投手になるには」

【花咲徳栄の野球部訪問 3回連載】第1回 / 第2回 /第3回

 最終回は岩井 隆監督はなぜ今の指導スタイルになったのか、その原点に迫ります。

「夏に勝つ」に至るまで

トレーニングの様子(花咲徳栄)

 岩井 隆監督が「自立」の重要性を説く裏には、花咲徳栄での指導経験が大きく影響している。岩井監督が「恩師」と仰ぎ「偉大すぎる」と尊敬するのが、稲垣 人司前監督だ。2人の出会いは岩井監督がまだ中学生3年生の時。
「自分に野球の技術を納得させてくれたのが稲垣さん。最初から“この人に一生ついていかないと”って思わされた」ほど理論的で、選手づくりに関しては職人だった。

 その後、桐光学園、東北福祉大を卒業した岩井青年は、花咲徳栄高校で稲垣監督の下コーチにつく。ともにチームを作っていく中で、プロに進む選手が次々に育つ。だが、なぜか甲子園には出られない。なんとか甲子園にも出たいと考えた岩井コーチは当時、徹底的に選手を鍛え上げるタイプだった。だが、2000年10月、稲垣監督が急逝される。突如チームを引き継ぐことになった岩井監督は、初めての冬を越える前に、当時野球部部長でもあった佐藤 照子校長に呼び出された。「懐かしいなあ」と言いながら当時を振り返る。

「『試合の後半に弱い。どの試合でも後半になるにつれ選手たちの自信がなくっているように見える』と言われて。だったら自信を持つようにもっと練習しましょう、と進言したら『あなたに教わる選手たちがかわいそう!』とガラスが割れるんじゃないかぐらいの勢いで怒られて」

 佐藤部長から下されたのは「毎日走らせなさい」という指令。しぶしぶ受けた岩井新監督だったが、実際やっていくうちにチームの変化を感じ始める。
「どうせやるなら苦しい中でも楽しんでやろう、と。みんなで乗り越えていこう、と考えるようになって。そうしたら、本当に試合の後半に強くなったんです」

 一冬越えたチームは埼玉県の春季大会で優勝し、関東大会でも初優勝。その年の夏の県予選は後半の逆転劇もあり、そのままの勢いで甲子園初出場(2001年)を決めた。そして2003年のセンバツにも出場し、当時ダルビッシュ 有がエースだった東北を下してベスト8に進出するなど快進撃を見せる。この時の成功体験は今でも引き継がれ、「我慢強くしぶとくなるため、あと集団性を身に付けるため」チームでの走り込みは必ず行っているという。

 果たして、プロレベルに達する選手を育てるだけでなく、勝てるチームになった。だが、2003年から次の甲子園出場まで7年間の空白があく。
「完全な過信です。この野球を続ければ勝てると思い込み、コーチに任せるようになってしまった。この7年間の間に2回くらいは自信のあるチームを作ったんですが、それでも勝てなかった。そこで原点回帰をして、もう一度自分が選手の中に入っていったんです」

 2010年春のセンバツで甲子園復帰を果たすと2011年夏2013年春にも甲子園へ出場する。だが、今度は甲子園で勝てなくなった。
2010年に1度勝ったきりで、2011年夏2013年春はともに初戦負け。特に2013年は優勝を狙う勢いだっただけにショックでした。当時は無理やりやって甲子園に行っている感じだった。それでも、特に夏は勝ち切れないイメージが強くて。春は勝てても夏は勝てないその違は何だ、と考えた時に思い浮かんだキーワードが『自立』だったんです」

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プロフィール

伊藤亮
伊藤 亮
  • 生年月日:1977年
  • ■ 東京都出身。都立三鷹高校野球部
  • ■ 2004年よりフリー編集兼ライターに。
    『ジーコ備忘録』『ピンポンさん』『セルジオ越後のフットサル入門』『直伝 澤穂希』『俊輔の言葉』など幅広くスポーツ関連書籍の取材・編集を行う傍ら、『新興衰退国ニッポン』(講談社)など、時事問題やカルチャーに関する書籍編集にも数多く携わっている。
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