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常磐大学高等学校(茨城)「わずか1年半で強豪校へ再建!」【前編】

2017.02.26

 茨城県水戸市にある常磐大高。昨秋は県大会ベスト4まで勝ち進み、関東大会まであと一歩に迫った。過去数年、早期敗退が続いていた常磐大高がなぜ大きく変わったのか?その改革の中身に迫った。

選手の中身を大きく変えた毎朝の30分~40分の学習時間

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海老澤 芳雅監督(常磐大高)

 常磐大高は、2007年夏には菊池 保則投手(東北楽天)を擁して、茨城大会準優勝。さらなる躍進に期待がかかったが、そこから春・秋では地区予選敗退。夏は初戦敗退の年もあった。そして2014年夏岩瀬日大に2対4で敗れ初戦敗退。2014年秋は地区予選水戸商に0対8で敗れ、苦しい時期が続いていた。常磐大高はこの状況を打破したい思いで、水戸桜ノ牧で監督を務めていた海老澤 芳雅監督に野球部再建を託した。

 海老澤監督の歩みを振り返ると、水戸農時代は速球派投手として活躍し、卒業後は日体大などでプレー。平岩 了監督(都立豊多摩)、岡田 龍生監督(履正社)、有馬 信夫監督(都立総合工科関連記事)など、その後高校野球で監督を務める方々と一緒にプレーしていた。指導者になると茨城東時代は、監督として1997年夏の甲子園出場を果たし、そして水戸桜ノ牧に赴任した後も高い指導力を発揮。2006年、2009年の夏は茨城大会準優勝、2008年2009年には2年連続で秋季関東大会に出場を果たすなど、水戸桜ノ牧を強豪校に育て上げた。

 そして2015年春、海老澤監督は常磐大高の監督に就任。初めて私立校の指揮を執ることとなった。海老澤監督がまず行ったのは、朝の学習時間を取り入れたこと。
「私が赴任する前の野球部員は、学業の成績も低く、そして野球の成績が芳しくなかったということもあって、学校側からお荷物扱いされている見方がありました。これではいけないと思い、野球部は朝の始業前に30分~40分の学習時間を毎日行おうと決めました。そしてテスト1週間前になれば勉強会を集中的に行い、まずは勉強ができる生徒になることを目指す。朝の勉強は学校の先生から信頼を得るためにスタートしました」

 この取り組みにより、多くの選手たちの評定平均が大きく上がった。正捕手の石川 大悟は進学コースだが、なんと学年トップの5.0。エースの平野 龍翔は入学時の評定平均は3.0ぐらいだったが、4.4まで伸びた。バッテリーだけではなく、他にも3.0台から4.0台まで上げた選手が続出。毎日の朝学習の成果が実を結んだ。

 学業面が大きく伸びたことで野球部の校内の評価は急上昇した。
「学業が良くなると、中学時代までやんちゃだった選手がだいぶ真面目になりましたね。学校の先生から『野球部の生徒のみんなは頑張っていますね!』と声をかけられ、応援してくれる先生も多くなりました」と海老澤監督は選手たちの成長に目を細めた。

[page_break:勉強ができる選手はなぜ野球もうまくなるのか?]

勉強ができる選手はなぜ野球もうまくなるのか?

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ストレッチの様子(常磐大高)

 勉強面を強化したことは野球面で生きることになる。一番変わったのは選手たちに自信が芽生えてきたことだという。
「勉強ができない選手は、自信がないから教室でも授業でも隅っこにいるしかありません。勉強ができるようになれば、教室上でも堂々といられることができる。自分の居場所があり、自信を持てる心を持っていることは、高校生にとって大きいことです。勉強をできるようになってきて、その大事さを知る選手が多くなってきました」

 また指導者が話すこと、練習に対する理解度もぐっと上がってきた。
「勉強ができる選手は先生たちが話していることを理解しているから集中力が高い。逆に勉強ができない選手は何か上の空なんです。だから授業中では寝てしまう。野球ができればいいと思うでしょう。でも指導者が言っていることを理解できないから、集中力がないんですよね」

 野球も、学校の勉強も、与えられた課題に対してしっかりと取り組むには集中力がなければならないのは共通している。球児にとって勉強をすることは苦にしてさぼりがちだが、常磐大高ナインにはそれがない。野球部どころか進学コースで学年一番の正捕手の石川はなぜ勉強をやるのか?その理由を答えてくれた。

「僕は大学でも野球を続けたい思いで、中学3年から勉強をしっかりとやり始めるようになりました。勉強ができないことで、第一志望の学校にいけなくなった時後悔するのは自分。僕はそんな思いをしたくないですし、成績を上げて進路の幅を広げたい。それが勉強をする理由ですね」
石川の考えに触発されて、多くの選手たちも勉強に励むようになった。

[page_break:上昇のきっかけとなった夏のつくば秀英戦]

上昇のきっかけとなった夏のつくば秀英戦

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練習風景(常磐大高)

 理解力がある選手が多くなると、試合でも考えてプレーしたり、チームプレーをしっかりと実践できるようになる。海老澤監督は試合の戦い方について、「相手に応じて、あまり犠打をせず、正攻法で行く場合もあったり、盗塁を多めに仕掛けたり、スクイズ、バントなど小技を多く絡める試合もあったりと、型にはめない野球をしていきます」

 海老澤監督はなるべく色を出さないようにしている。そのため戦い方には多様性があり、それを実行するのは選手たち。これは選手たちが監督の意図を汲み取る理解力がなければ、難しい戦い方だ。就任2年目となった昨年、海老澤監督の就任と同時に入学した今の2年生たちの大半がレギュラーとなった。ポイントとなったのは、昨夏の茨城大会2回戦つくば秀英戦。つくば秀英には、最速149キロ右腕・長井良太(現・広島関連記事)がおり、長井をどう打ち崩すかが、カギとなっていた。

 海老澤監督は「長井君に対しては正攻法で行っても通用しないので、足でかき回していきました」と語るように、13三振を喫しながらも、5盗塁を絡める攻撃で長井を追い詰め、延長10回表、2点を勝ち越して、見事に3回戦進出。勢いに乗った常磐大高は準々決勝まで勝ち進んだ。海老澤監督の体制になってわずか1年で夏の大会でベスト8と、大きく自信をつけた大会となった。夏はスタメン9人中8人が1、2年生。経験者が多く残った新チームのスタート時、チームの目標は「関東大会出場」となっていた。

後編では秋季大会や今年のチームにかける意気込みについて伺いました。

(取材・文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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