大阪桐蔭高等学校(大阪)「『2016~2017年型』大阪桐蔭、全国制覇への風土づくり」【後編】
■大阪桐蔭の野球部訪問「『2016~2017年型』大阪桐蔭、その序章」【前編】から読む
後編では冬練習での底上げと、来るセンバツへの意気込みについて伺った。
「チームを引っ張る」人材を求めて
バッティング練習の様子(大阪桐蔭)
例年通り「チームのことは一切気にせず、個人のレベルアップに努める」大阪桐蔭の12月・1月の練習。ただ、西谷 浩一監督はその様子をジッと観察している。そして心中で願っている。「主軸となる選手」の出現を。
「今年のチームはチームワークは良いですし、一生懸命やりますし、主将の福井(章吾)が選手たちを集めて、ミーティングすることができる。意識の高い選手が多い。ですが、まだ軸となる選手がいないのが課題です。秋は1年生が活躍しましたけど、やはり軸となる選手は2年生になってほしいです」
チームをまとめ上げるのはもちろん福井。ただ、頂点を奪うにはもう1つの柱が必要だ。プレー面で引っ張れる絶対的な選手。その1人として期待されているのが副主将の岩本 久重。守っては投手陣をリードする司令塔である。西谷監督は岩本についてこのように評する。
「現在は8番を打っていますが、ホームランは打てますし、体は大きいですし、捕手として肩は強いですし、主軸を打てる選手。ですから、昨年秋の段階でプレーでチームを引っ張る存在になってほしかったのですが……。ですから、岩本の成長はチームの成長と相関していると思います」
もちろん、岩本自身も周囲の期待は承知している。大津北シニア時代は侍ジャパンU-15代表として西浦 颯大(明徳義塾<高知>2年)・増田 珠(横浜<神奈川>2年)らと共に「第2回IBAF U-15ワールドカップ」に出場。182センチ80キロと恵まれた体格にチームNO.1の高校通算16本塁打。「自分が8番なのは悔しく思いますし、やはりもっと打てて、上位打線を打てるようになりたい」。意気込みは十分だ。
「努力する葦たち」が束となり、頂を狙う
福井 章吾選手(大阪桐蔭)
頂点へ。努力をしているのは主将の福井も同様である。左打者の彼は「先輩の森 友哉(埼玉西武ライオンズ)さんの打撃フォームを参考にして」打撃を鍛錬。一方、投の中心である徳山 壮磨は常時140キロ中盤・最速150キロに到達するべく、ウエイトトレーニングに余念がない。その他の選手も葦のように挫折してもまっすぐ上に伸びる作業を怠らない。
西谷監督はそんな彼らの姿に目を細めながらこう言った。
「今年は大阪も近畿も優勝していないチーム。そういうチームが日本一を目指すのはおこがましいかもしれませんが、やるからには日本一を目指しています。
そして2014年夏の甲子園で優勝した代は『チームで勝った』。僕たちも勉強になりましたし、どの代になっても日本一を目指せる風土を作りたいんです」
「まず初戦へ向けて、しっかりと調整をすること。これまで通り、一戦、一戦大事に戦うことを大事にしていきたいです。気づいたら勝てたというのが理想です」と語る福井は、最後にこんなことを明かした。
「僕は甲子園で優勝して閉会式で優勝旗をもらって、それを持って場内行進をしていることをイメージしています。主将をやっていると、つらい部分も多いですけど、それを乗り越えて『しんどいことばかりだったけど、やりがいがあったな』という思い出ができる大会にしたいですね」
先輩たちの風土が伝統を作り、伝統をさらに高めようとする現役生たちが、また新たな風土を作る。「努力する葦たち」が全員で個の力を結束させ仕立てあげた先には、5年ぶりのセンバツ制覇の頂が紫紺の優勝旗と共に待っている。
(取材=河嶋 宗一)
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