Column

光泉高等学校(滋賀)【後編】

2016.07.06

 前編では春季大会までの軌跡を描きました。後編では、今年のキーマンである投手陣や夏へ向けての意気込みを選手たちに伺いました。

ラグビー高校代表の監督に目に留まるほどの体格を持つエース左腕・山田篤史

山田 篤史選手(光泉高等学校)

 に失点を1試合平均1.17点に抑えられたのは、ミスをしなかったことに加えて投手の力によるところが大きい。エースの山田 篤史(3年)は身長192センチの大型左腕。自分より背の高い左投手に会ったことはないという。入学直後はラグビー部の薬師寺 利弥監督から「ラグビーをすれば絶対日本代表になれる」とのラブコールを受けた。

 光泉は野球部以外にも部活動が盛んで、中でもラグビー部、バスケットボール部、硬式テニス部、アイスホッケー部は滋賀県では敵なしを誇り、全国大会常連だ。しかもラグビー部の監督は昨年、高校日本代表チームのコーチを務め今年は監督として指揮を執る予定。

 その薬師寺監督のお眼鏡にかなった山田だが、野球を選んだ。今でも体重は80㎏弱と線は細いが、これでも入学時からは約15㎏の増量に成功している。得意とするのは右打者の内角を攻めるストレートと低めへのチェンジアップ。長身を生かした球筋は年間100試合以上をこなす強豪校であっても初見で打ち崩すことは難しい。

 春は山田が先発を務め終盤を西条 耕太朗(3年)で締めるのが勝ちパターンだった。西条は1年秋から公式戦のマウンドに上がり、経験は豊富。投手陣の中では唯一昨年夏もベンチ入りしていた。しかし、春先の練習試合では先発した試合でピリッとせず。

 その結果、山田と交互に先発するのではなく山田から西条へ、長身左腕から右のスリークオーターへの継投が基本スタイルとなった。出番が巡って来るのは6回か7回であることがほとんど。そのため山田がどれだけ完璧なピッチングを披露していても3回からはブルペンに向かう。投手にとって立ち上がりや代わり端は永遠の課題だが西条は途中からでもすんなり試合に入り込める。

 夏へ向けては「打たせてとるのが持ち味なんですけど、ウイニングショットを作って三振も取れるようになりたい」とレベルアップを誓う。決め球候補は1年秋から投げているカットボール。現在の完成度は70~80点といったところで、夏までに100点を目指す。

このページのトップへ

[page_break:甲子園で校歌を歌うためにも好投手揃いの滋賀を勝ち抜く]

 投手陣の柱は山田と西条の左右2枚看板だが、北大津戦で苦いマウンドを経験している小傳良 創にはこの夏、隠し球としての期待がかかる。西条とは中学時代も同じボーイズに所属し当時のチーム内評価は上。高校入学時も新入生の中でナンバーワンの評価を得ていた。左腕から繰り出すストレートの威力は抜群で、ストレートと変わらない腕の振りから投げるスライダーは、ホームベースの手前でワンバウンドする球でさえも打者は思わず手が出てしまう。

 春先にインフルエンザにかかりしばらく休んだことでフォームを崩したが、最近になって復調。安定感に欠ける一面もあるがハマった時は打たれない。

甲子園で校歌を歌うためにも好投手揃いの滋賀を勝ち抜く

古澤 和樹監督(光泉高等学校)

「山田がどれだけ放れるかにかかっている。ただ山田だけでは勝てないので、西条もどれだけ放れるか。夏は完投もさせようと思っています。2回戦を山田、3回戦を西条で行けたら最高ですね」と夏を見据えている古澤 和樹監督。は全試合継投で戦ったが、練習試合では完投させている。しかもその過程で山田が好投。の優勝が自信となったか調子は今の方が良い。もう一段階上のレベルに行ける予感が漂っている。

「春と同じ戦いをしたい。ピッチャー中心に守備でリズムを作って攻撃につなげる野球が出来れば。高校野球ってメンタルの部分も大きいと思うんですよ。夏はいろんな要素があるので、相手の方が強くてもうちが攻め続けて100の力出すことが出来れば、相手が70や80の時に勝機はある。自分達の力を100%出せるようにしたい」

 今年の滋賀には北大津竹村 航以外にも近江京山 将弥(3年)と内林 瑞貴(3年)、滋賀学園神村月光(2年関連記事)ら好投手が揃う。他にも2季連続準優勝の近江兄弟社はコンスタントに結果を残し、八幡商の打線は強力など、優勝争いは極めて熾烈。ただ安里 翔太(3年)はキャプテンに就任して以来、目標を甲子園出場ではなく「甲子園で勝つこと」に設定しチームに言い続けてきた。

 光泉2002年夏に甲子園に出場しているが、その時は帝京に0対5で敗れ、初戦敗退。練習の最後には全員で校歌を歌って締めるのがお馴染みの光景となっているが、聖地ではまだその歌声を響かせていない。

 に優勝したことで夏は日程に余裕のあるトーナメント表の左端に入る。今年のチームは北大津に並々ならぬ思いを抱いており、新チームになってから1勝1敗の北大津とは反対のゾーンになったため、もし当たるとしたら決勝戦。

 彼らは甲子園行きを懸けて北大津と対戦し、そして大舞台で校歌を歌う…
そんな最高なシナリオをすでにチーム全員が同じものを思い描いている。

 後は春に続いて実演するだけだ。

(取材・文/小中 翔太


注目記事
【7月特集】「夏を制するためのコンディショニング術」

このページのトップへ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.18

【神奈川】保土ヶ谷球場では慶應義塾、横浜が登場!東海大相模は桐蔭学園と対戦!<春季県大会4回戦組み合わせ>

2024.04.18

強豪校を次々抑えて一躍プロ注目の存在に! 永見光太郎(東京)の将来性を分析する<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.04.18

首都二部・明星大に帝京のリードオフマン、東海大菅生技巧派左腕などが入部!注目は184センチ102キロの大型スラッガー!

2024.04.18

【春季埼玉県大会】ニュースタイルに挑戦中の好投手・中村謙吾擁する熊谷商がコールド発進!

2024.04.18

【岡山】センバツ出場の創志学園は2回戦から登場! 2回戦で昨年夏の決勝戦と同じカードが実現の可能性も!<春季県大会地区予選組み合わせ>

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.15

四国IL・愛媛の羽野紀希が157キロを記録! 昨年は指名漏れを味わった右腕が急成長!

2024.04.17

仙台育英に”強気の”完投勝利したサウスポーに強力ライバル現る! 「心の緩みがあった」秋の悔しさでチーム内競争激化!【野球部訪問・東陵編②】

2024.04.15

【春季和歌山大会】日高が桐蔭に7回コールド勝ち!敗れた桐蔭にも期待の2年生右腕が現る

2024.04.16

【群馬】前橋が0封勝利、東農大二はコールド発進<春季大会>

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード