Column

東海大学付属甲府高等学校(山梨)【後編】

2016.03.12

 2番手だった松葉 行人投手の急成長で菊地 大輝とのダブルエースが最大の武器となり、村中 秀人監督の体制になってから初めてとなる準レギュラーの鬼頭 孝明選手を主将に抜擢。鬼頭主将の抜群のキャプテンシーにより強い組織になりつつある東海大甲府に、後編では勝ち上がるためにどんな課題を持ってやっているか迫った。

今年は機動力で勝負

原田 隆聖(東海大学付属甲府高等学校)

 東海大甲府といえば、強打のチームだ。昨年まではまさにそんなチームだった。今年はロングヒットを打てるのが4番の松岡 隼祐しかいないが、足の速い選手が多く、機動力を仕掛けられるのが強みだ。
「今までにない攻撃パターンができましたし、粘り強さ、しつこさという点では上かもしれません」

 うまく足を絡められた試合を振り返ると、関東大会初戦春日部共栄戦だった。相手捕手は強肩がウリの磯田 歩甫だったが、あえて足を使って崩しにかかろうとした。1回裏、二死一塁から3番の福武 修が盗塁を仕掛け、4番松岡の適時打で先制した。この先制パンチが大きかったという。
「相手が、盗塁が起点となって点を取られたことで動揺してしまったのか、四球、四球の連発で点を重ねることができて、コールド勝ちができました。今後もこのような効果的な走塁ができればと思っています」

 機動力を絡めた攻撃ができればと考えている。足のキーマンとなるのは、1番萩原 杏磨、2番谷口 極 、3番福武、5番原田 隆聖がいる。萩原が故障し、選抜に間に合うか微妙な状況だが、それでもチーム内で激しい競争を行った結果、「萩原に代わる力のある選手が出てきています。本人にはとにかく無理をするなと伝えています」と上手くカバーできている様子。

 だが機動力だけではなく、しっかりと打撃力を身に付けていかなければならないと感じている。冬は金属バットを使わず、竹バットで打ち返す練習。そして筋トレ、走り込みをトレーニングに明け暮れた。選抜出場するチームは早めに仕上げるために実戦練習が多くなる。だが、村中監督は紅白戦の始まりを例年より1週間だけ早めただけで、例年とメニューはほぼ変わらないという。

「やはりしっかりトレーニングをしなければ、パワーだけではなく、スピード、技術も上がっていきませんから」と村中監督が語るように、多少の実戦遅れがあっても、しっかりと土台を作り上げることが大事だという。それは選抜だけではなく、夏も見据えている。

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[page_break:打撃面はさらに強化したい]

 そして2月6日、7日に紅白戦が行われた。初めてなので、ミスが多いと予想されたが、「それがですね、あんまりなかったんですよ。自覚があったんでしょうね」と選手たちの戦いぶりを評価していた。

打撃面はさらに強化したい

ティー打撃に取り組む選手(東海大学付属甲府高等学校)

 主将の鬼頭によると、結果を残すことができたのは、普段から自主練習を遅くまでやっている選手たちだったようだ。
「みんな、トレーニングを目いっぱいやる中でも、自主練習は各自の技術練習に取り組んでいたと思うので、それができていた選手は結構打っていましたね。だんだん大会が近づいてきて、選手たちの気合いが入ってきていると思います」

 課題とする打撃力はレベルアップできている様子。ここで、冬の成果を確かめるために、クリーンナップ候補にスイングトレーサー(※ミズノ社製のスイングアプリ)でスイングスピードを測ってみた。
まず不動の4番である松岡は、142.3キロを計測。3番の福武は139.9キロ、さらに5番候補と期待され、188センチ78キロと恵まれた体格を誇り、長打力で勝負したい栗田 峻至も挑戦し、栗田は135.0キロだった。この結果を見て3人は、

「僕は、右方向に強い打球を打つことと、一スイングすることで、相手投手や相手外野手を恐れさせるような打者を目指しています。この結果を見て、まだまだだと感じています」(松岡)

「自分はあんまり速くないと思っていたので、ひやひやだったのですが、想像以上に出ていましたけど、やっぱり140キロを超えたいですね」(福武)

「結果を見て、悔しさを感じました。もっと努力して、さらに上を目指したいです」(栗田)

 と悔しさを感じている様子だった。実際に数字で自分のスイングスピードを理解した選手たちがこの春、どう変わっているか注目である。

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今年は2012年の夏の甲子園ベスト4入りしたチームに近い

村中 秀人監督(東海大学付属甲府高等学校)

 今年の東海大甲府について村中監督は、2012年夏の甲子園ベスト4のチームに近いという。
「あの時は、神原 友(現・東海大)、本多 将吾(現・横浜金港クラブ)と2枚看板がいて、二遊間には渡邉 諒(現・北海道日本ハムファイターズ)、新海 亮人(現・横浜金港クラブ)がいましたし、捕手の石井 信次郎(現・東海大)がいて、実に安定感がありました」

今年も、菊地、そして松葉のダブルエースがいて、ショートの福武、セカンドの川上の二遊間の守備力には自信を持っている。そして主将・鬼頭の声かけにより、いっそう気合いの入る東海大甲府

 村中監督は東海大相模で監督を務めた時、吉田 道投手を擁し、1992年選抜で準優勝を果たしている。決勝まで勝ち進んだ要因を伺うと、
「バッテリーがしっかりしていて、安定感がある。そして少ないチャンスをモノにできる。それがあのチームにはありました。そういうチームを目指していきたいですね」

 そのためにはやはりダブルエースの存在とチームは考えている。主将の鬼頭は、
「僕たちは攻撃、守備でレベルアップを目指していますが、やはりあの2人が頑張らないと勝てないと思うので。甲子園で優勝するチームは良い投手が2人います。2年前の大阪桐蔭、去年の東海大相模。2人は本当に頑張っているので、ぜひ活躍してほしい」と願っている。

 最後にダブルエースと期待される2人に意気込みを伺った。まず菊地が
「努力した姿を見せていきたい。もし完全試合を狙えるチャンスができる投球ができた時、そのまま狙っていきたい」

と語ると松葉も、
「背番号1は狙っていますけど、マウンドに上がれば、背番号関係なくマウンドにりう投手がエースと監督といわれているので、しっかりと好投したい。やっぱり1人だけでは、甲子園5試合は投げられないですし、2人いれば、その1試合を責任持って投げることができる。そんな投手になりたい」

 主力投手として投げきる自覚がしっかりと伝わってきた。

 東海大甲府の選抜での最高戦績は、1987年1990年のベスト4。計4回の出場で3回以上はベスト8以上に名を連ねている。実は選抜でも強さを発揮していた東海大甲府。今大会も、注目校に相応しい強さを見せてくれるのは間違いない。

(取材・写真:河嶋 宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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