Column

叡明高等学校(埼玉)

2016.01.17

 昨春、小松原から学校名の変更とともに越谷レイクタウンに移転してきたグラウンドからは新生・叡明高校の選手の元気な声が響く。2015年4月に入学した叡明1期生である1年生を加え、さらに実力も結束力も増す。近年、激選区・埼玉県でベスト16の成績を残すなど、注目が集まる新鋭校の取り組みに迫る。

確かな自信をつけるための取り組み

中村 仁一監督(叡明高等学校)

 現在、チームの指揮を執る中村 仁一監督は、小松原時代から同校野球部を率いて今年で4年目。前々任の栄東時代には、チームの最高成績である埼玉県大会準優勝、関東大会出場へと導いた。

 そんな中村監督擁する叡明のオフシーズンのトレーニングには、さまざまなメニューやこだわりがある。最先端のトレーニングが注目を集める中でも、あえて走ることをベースに体幹トレーニングを行ったり日々鍛錬を重ねる。
そしてその中でも、「ランメニューの距離」と「スイング数」、そして「ウエイトトレーニングの重量」の3つの数字にこだわりを見せる。

 まずは、「ランメニューの距離」。
その日の練習内容や選手達のコンディションによって長い距離を走ったり、30メートル程度のショートダッシュを行ったりと細かく調整を行うが、特にオフシーズンであれば1日に5~10kmはトータルして走り込む。これは1年間のラントレーニングで走った合計の距離で[stadium]甲子園[/stadium]に到達できるほど走ろうと決めて行っている。叡明高校から兵庫県西宮市にある[stadium]甲子園球場[/stadium]までは、約560キロメートル。「トータルすると[stadium]甲子園球場[/stadium]に着くくらいの距離を走らないと、本当に『甲子園に行けない』」と一つの目安において取り組んでいる。

 次に、「スイング数」。
「今、1ヶ月で1万スイングしようと取り組んでいます。そうすると春の大会までには約3万スイングすることになるんです。『俺、これだけバットを振ってきた』という自信をもった上で、ワクワクしながら『よっしゃ!かかってこい!!』という勢いで相手ピッチャーに立ち向かってほしいんですよ。これは、以前指導していたチームでも行ってきていて、力の無い選手でも、練習量と自信を持つことで、強豪チームのピッチャーから打てたり、楽しく戦っていたことが印象的で、今の選手たちにも、そんなふうに試合をしてほしいです」

 そして最後に「ウエイトトレーニングの重量」。
ウエイトトレーニングでは、ベンチプレスやスクワット、デッドリフトを中心に行うが、重視しているのはトータルで挙げる重量が決まっているということ。例えば、ベンチプレスであれば1人1日で合計2000kgを挙げる。これは、50kgのおもりをつけてトレーニングする選手であれば40回行わなければならない数字。これも「ランメニューの距離」や「スイング数」同様に鍛えることの他に、ここまでやってきたという自信をつけさせる意味も込められている。ウエイトを行っている場所が、グラウンドのネットを挟んだ真横に位置し、グラウンドで練習をする選手からもウエイトトレーニングをする選手からも、熱心に取り組む姿勢が見えることから相乗効果が期待できる。

 この3つのトレーニングや練習で自信をつけた上で、さらに取り組むことがある。それは、現在チームで力を入れている「走塁」だ。塁に出たら常に走る、前の塁を盗る姿勢を見せる。アウトになっても良いから積極的に行うことをチームで決めている。次の塁を狙う姿勢を見せることによって、相手をかく乱させたり、自分たちのペースで野球を進めるために「走塁」という武器を身につけようと取り組んでいるのだ。

 この取り組みに叡明1期生の1年生たちも、「プレーをしていて、走塁の大切さを痛感する」(上條 幹高選手)、「盗塁やエンドランなど足を使うことで、強いチームでも混乱させることによって勝てるように」(中山 雄太選手)と「走塁の重要性」の意図を学年問わず共通認識として捉えていることが分かる。

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[page_break:チームを上手く作り上げるポイント]

チームを上手く作り上げるポイント

大島 一哉主将(叡明高等学校)

 現在の叡明野球部の部員は2学年で65名。練習中に誰かが大きな声で指示を出しても通らない。では、チームにまとまりを持たせるために、どんな工夫がなされているのか。

「キャプテンに替わるような選手を1年生2年生関係なく見つけて、自分がその何人かに指示を出します。そして、その選手たちが指示を広げていく、というように自分一人だけではなく協力して上手くチームを動かすようにしています」と話すのは大島 一哉主将。

 大人数に対して一人で指示を通すことは難しく、チーム内に指示の中継をしたり補助してくれる役目を作ることが円滑に進めるポイントなのだ。

 その役割を担うのは、チームの主軸であっても例外ではない。永関 大輔選手は、「キャプテンのサポート」をチーム運営の重要ポイントに挙げ、「気づいたことがあったら自分からどんどん言って、チームの皆が同じ方向を向くようにしています」と続ける。その指示に対しても「言われたことは1回でしっかりできるように、指摘されたことは次には完璧にできるように」(室賀 優斗選手)と個々の意識も高い。

 選手たちにチームについて質問をしても、どの選手からもチームとして一貫性のある回答が返ってくるように、チームの指示系統が整っているために、チーム全員が同じ方向を見ることができていることが分かる。

 これらの取り組みの要となる叡明の目標は、もちろん「甲子園」。「個人個人の目標の集大成が甲子園に行くことだと思う」と大島主将が語るように、何事にも一致団結する姿が終始みてとれる。チームを率いる中村監督も「小目標として、県大会でベスト8入り。大目標は埼玉県で優勝」と掲げる。

 こだわりと明確な目標をもって前に進む叡明ナイン。強豪校がひしめく埼玉県で「叡明=新鋭校」ではなく「強豪校」と認知される日も近いはずだ。

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[page_break:叡明高校の取り組みを動画で紹介!]

叡明高校の取り組みを動画で紹介!

 

(取材・写真:佐藤 友美


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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