Column

福岡大学附属大濠高等学校(福岡)

2015.12.16

 夏3回、春3回の甲子園出場を誇る福岡大大濠。常に福岡県内で上位に進出する強豪校だ。
選手たちは福岡大の硬式野球部のグラウンドに隣接されたグラウンドで、日々、ボールを追っている。そんな福岡大大濠秋季大会の戦いを振り返りつつ、来季へ向けてどんな取り組みをしているかに迫った。

好投手攻略が課題に残った秋季大会

濱地 真澄(福岡大学附属大濠高等学校)

 全国へ行ける手応えは感じていた。
率いる八木 啓伸監督は、「近年見てきた中ではトップクラスの力量があるチーム」と評する。今年の福岡大大濠は、最速146キロ右腕・濱地 真澄の存在が大きい。

「濱地の魅力は分かっていても打たれないストレートがあることですね。投手としても独特の感性があり、素質も素晴らしいですし、潜在能力としてはプロ入りした大石 達也(埼玉西武)、川原 弘之(福岡ソフトバンク)より上回るものがあります」と絶賛。濱地は失点が計算できる投手だけに、打線の働きがカギと見ていた。

 その打線だが、レベルは非常に高く、一発長打のある田中 力哉東 怜央、走攻守三拍子揃ったショートストップ・古賀 悠斗、そして一発を打つパンチ力もある濱地と打力が高い選手が揃っている。そんなチームだからこそ、新チーム当初の目標は神宮大会出場。秋ではエースの濱地に頼らず打って勝つ野球を求めた。

 しかし、秋季大会は苦戦が続いた。県大会2回戦から登場した福岡大大濠はまず修猷館に4対1で勝利し、福岡柏陵にも4対1で勝利、4回戦で強豪・福岡工大城東と対決。この試合3対0で勝利し、エースの濱地が完封。続く5回戦の筑紫台では濱地は投げなかったものの18対0で快勝し、準々決勝では福岡自由ヶ丘に2対0で勝利。これも濱地の完封勝利だった。そして準決勝で速球派右腕・梅野 雄吾擁する九産大九産と対戦。勝てば九州大会進出が決まる一戦だったが、梅野の最速149キロの速球と切れ味鋭い変化球が冴え渡り、ノーヒットノーランで敗戦した。

 このレベルを打ち崩さなければ全国への道はない。八木監督は、
「ああいう投手を打ち崩さなければだめなんだよと選手たちも痛感したと思いますし、課題を感じた試合でした」

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[page_break:打線のカギを握る強力クリーンナップ]

左から古賀 悠斗、田中 力哉、東 怜央のクリーンナップ(福岡大学附属大濠高等学校)

 好投手攻略は全国へ行くためには避けて通れない道。また高いレベルに勝ち上がるにはいろんなタイプの投手を打ち崩していかなければならない。
右でもサイドハンド、アンダースロー、コントロールが良い投手、荒れ球で勝負する投手、縦の変化球を使うのが上手い投手などさまざまなタイプがいる。そういった投手を打ち崩すために日頃の打撃練習から意識づけていることは何だろうか。

「色んな投げ方、色んな球種、そこに惑わされたら打てません。結局はどんなボールでもベース上に来るので、そこで打てる球なのか見極めて、一振りで捉えることができるか。どんな投手でも甘いボールはあるわけです。そこに食らいつく技術ですね。色んな投げ方で惑わされるということは、投手を主体に置いているということです。高校生の段階では、ベース上に来たボールをしっかりと捉えることを指導させた方がいいですね」

 今よりも打てるゾーンを増やし、打てると思った球をミスショットせずに打ち崩すことを念頭に置いている。そこに「犠打、エンドラン、盗塁」という戦略が入ってくる。大会後の練習試合ではそれもテーマにして取り組んできた。夏の甲子園出場へ向けて数々の実戦で成長を促す狙いだ。

打線のカギを握る強力クリーンナップ

 そんな打線向上のカギを握るのは3番古賀、4番田中、5番東の3人だ。1年生ながら3番を打つ古賀は、この夏から出場。八木監督も主将の松本 敦輝も、「走攻守で三拍子で信頼できる選手です」と評価するように攻守のキーマンだ。公式戦で力を発揮できる勝負強さがあるようだ。

 そして4番田中は高校通算38本塁打の左のスラッガー。178センチ85キロとがっしりした体格をしていて、練習中から見せる鋭いスイング、そして打球の速さまで、他の選手に比べて目立つものがあった。あとはこの打棒を公式戦で発揮するだけだ。また5番を打つ東は182センチ85キロと体格の良さが際立つ1年生スラッガー。まだ1年生ながら高校通算17本塁打を放っており、来年以降、更なる量産に期待が持てる右の大砲候補。

 東と古賀の1年生コンビは10~11月にかけて行われた第2回 福岡地区高等学校一年生野球大会で中心選手として活躍。「まだ球速は135キロ前後ですが、ボールのキレ、コントロールが優れた投手で、コーナーへの出し入れが上手い投手」と八木監督が評する1年生右腕・三浦 銀二の活躍も光り、見事優勝を果たした。また主将の松本は濱地の持ち味を引き立て、捕ってから投げるまでの速さにも定評のある好捕手。濱地は「やっぱりあいつ(松本)が中心ですよ」と絶大な信頼を置く。

 選手たちの力量は高い。選手たちは「公式戦の場」でいかにして力を発揮できるかとういことをテーマに日々の練習に取り組んでいる。

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[page_break:九州大会に行けなかった悔しさをいつまでも忘れず]

九州大会に行けなかった悔しさをいつまでも忘れず

八木 啓伸監督(福岡大学附属大濠高等学校)

 取材した日、福岡大大濠の選手は効率よく練習をしていた。ティーで打撃練習する選手、ワンバウンド捕球の練習をする捕手、ライトフェンス奥でトレーニングに取り組む選手、エースの濱地を中心に遠投に取り組む投手、ブルペンで投球練習する投手陣と、限られたスペースの中で各自が課題を持って取り組んでいた。特別な練習メニューはない。さらなる技術向上のために基礎の練習をして、地固めをしている。

 八木監督が大事にする「意味のある練習」になるために選手が話し合いをしながら練習している。そして八木監督は「練習の1つ1つの動きが、すべてにつながる」ということも話している。

「例えばティー打撃。トスの動きはスナップスローと共通したところがあるので、コントロール良く投げる練習にもなりますし、ティー打撃は単調な練習。選手をその気にさせる声のかけ方もあります。またボールを集める時は何となくで集めるのではなく、内野手の動きでボールを集めるとか。そういった、他につなげることを意識することが大切です」

 一歩上へいくため、この基礎練習に意識高く臨むのは、秋の悔しい敗戦があったからこそ。エースの濱地は、「あの試合(県大会準決勝)、先に点をあげてはいけない試合で、先制点を与えてしまった。今までの敗戦で最も悔しい負けです」

 主将の松本も「負けた翌日に決勝戦が行われたのですが、その舞台に自分たちがいないことに、悔しさがだんだんこみ上げてきました。その悔しさはみんな忘れていないと思います」と語るように多くの選手が悔しさを感じているようだった。

 その松本から見て、選手たちはどう取り組んでいるように見えるだろうか。
「やはり軸となる選手が自覚を持って取り組んでいるので、良い練習ができていると思います。個性が強い選手の集まりですから、主将としてしっかりとまとめ上げていきたいと思っています」
と決意を新たにしていた。

 夏では1989年以来となる甲子園を目指して――。
練習、練習試合、公式戦とすべての経験を自分たちの糧にして、新チーム時に描いていた全国舞台を実現させる。

(取材・文=河嶋 宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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