Column

佐久長聖高等学校(長野)【後編】

2015.12.08

 前編では佐久長聖のチーム作り、取り組みを紹介してきました。後編では秋季大会の戦いぶりを振り返りつつ、現在、オフに取り組んでいる取り組みや、選手たちに意気込みを伺いました。

秋のポイントになった試合とその理由

秋季長野県大会準決勝 佐久長聖vs松商学園レポートより

 先の通り、今秋は北信越大会準決勝で敗れ、「センバツ切符」を確実なものにできなかった。
藤原 弘介監督によると、この敦賀気比戦を含め、秋はポイントになった試合が3試合あったという。あと2試合のうち1つが、県大会準決勝松商学園戦だ。

「今夏の県決勝で敗れた上田西さんも県のライバルですが、私にとって大きな存在はやはり(県内ダントツの春夏合わせて甲子園出場51回/夏35回は全国1位タイを誇り、松本商時代の1928年夏には全国制覇の実績がある)松商学園です。この秋、就任4年目で初めて対戦したのですが、やはりここに勝たなければ、という思いが強かったですね。結果的に7対0で勝たせてもらいましたが、これからも立ちはだかってくるチームだと思っています」

 もう1つは秋の北信越大会の準々決勝、新潟の日本文理との試合だ。
この試合は雨天のため6回スコアレスドローになった前日に続く再試合という形になったが、背番号「10」の左腕・森本 雄河(2年)が延長11回を1人で投げ切り、2対1で接戦をものにした。

「北信越では必ずと言っていいほど、待っているのが敦賀気比さんであり、(県1位の甲子園勝利数(春夏合わせて11勝)をマークしている)日本文理さんですからね。今回勝てたのは大きかった。県大会の初戦でエースの小林がヒザを痛め、本調子でなかった中、二番手の森本がよく投げてくれました」

 元山 飛優主将、小林 玲雄投手、甲田 尚大選手の3人も、センバツ出場を手中にできなかった敦賀気比戦を、秋のポイントになった試合と考えている。

 元山主将は「途中までは先行逃げ切りの、僕たちの勝ちパターンで進んでいたのですが、中押し点が取れず、後半には守りでエラーも出てしまった。チームの弱いところが出てしまった試合でしたし、集中力に課題がある、とも感じました」と、主将の立場から敗因を分析。

 小林投手は「秋は本来、投手が中心にならなければいけないのに、(エースである小林投手がヒザを痛めていたため)大事な敦賀気比戦ではそれができませんでした」と反省の弁を語り、甲田選手は「グラブではじいてしまった自分のエラー(記録はヒット)から失点につながってしまった」と悔しさをにじませる。

このページのトップへ

[page_break:大人数でもたくさん打てるようにボールは潤沢]

大人数でもたくさん打てるようにボールは潤沢

カーテンネットで仕切った室内練習場でティー打撃に励む佐久長聖の選手たち

 藤原監督によると、佐久長聖の今オフのテーマは3つあるという。
1つ目は「振る力をしっかりつける」、2つ目が「キャッチボールの正確性を身につける」、そして3つ目が「ランニングでの下半身強化」だ。

「振る力をしっかりつける」ために活用されているのが、25m×25mほどの室内練習場。
藤原監督は「冬場はチームを5つに分け、全員が同じ練習をしているのですが、部員数が多いですからね。さほど大きくない室内練習場をカーテンネットで仕切ってスペースを作り、ティー打撃なら平日でも、1人最低300は連続で打てるように工夫しています」と教えてくれた。

 ティー打撃は横からトスされたボールを打つだけでなく、投げ手の三方を防球ネットで囲んだゲージを使っての、正面からのボールを打つティー打撃も行っている。また、限られた練習時間内で大人数がたくさん打てるよう、ボールは潤沢にある。

「ボール集めに時間を費やさなくてもいいように、学校など各方面に協力を仰ぎながら、ボールの数にはこだわっています」と藤原監督。
ともすれば、選手からするとその環境が当たり前になってしまうが、ボールの大切さを教えるためだろう。練習終了後、藤原監督はグラウンドのバックネット上に1球残っているのを見つけると「おーい、ここにボールが残っているぞ」
この時ばかりは藤原監督の表情も口調も厳しかった。

 2つ目のテーマである「キャッチボール」については「外部コーチの方に1つ1つの動作原理を教わりながら、理に叶った送球ができるよう、基本動作が体に染み込むまで、ひたすら繰り返します」とのこと。
ただし藤原監督は「野球では動きの中で送球するのがほとんど。キャッチボールの練習だけでは送球は良くならない」と考えている。そのため、第2段階として「野球のプレーに即した送球の正しい基本動作を身に付けるようにしています」

このページのトップへ

[page_break:限られたスペースの中で、効率良く練習するのは藤原監督のスタイル]

限られたスペースの中で、効率良く練習するのは藤原監督のスタイル

「レッドコード」を使って筋力とバランスを鍛える選手たち(佐久長聖高等学校)

  3つ目の「ランニング」は前述の通り、平日でもタイムを計りながらトータルで12~3㎞走る。
佐久長聖ではウエイトは行わず、こうした走り込みや振り込みで下半身を作っていく。これはPL学園時代と同じやり方でもある。
筋力強化にはもっぱら「レッドコード」と呼ばれる、吊るした2本のロープで身体の様々な部分を支えたり、負荷を与える器材を使い、これで体のバランスも鍛えている。

 大所帯でもスペースを上手く使って効率良く練習する―。これが藤原監督のモットーだ。
例えば4月になって新入部員が加わると、ノックする時は外野ノックを先に行う。

「そうすれば内野手がノックを受けている間に、外野のスペースで新入部員が練習できますからね」
取材日も午後4時から7時までの3時間、100人近い部員の誰一人も動きが止まることはなかった。

 藤原監督はオフについて「2人いればできるメニューを、正しいやり方で反復していくことで個人の技量を高める期間」と考えている一方で、「それだけではレギュラーにはなれませんし、チームは勝てない」とキッパリ。そこで必要とされるのが「状況判断」としている。佐久長聖では3月に入ると、すぐにチーム練習が始まり、「状況判断」できるかどうかが試される。個人からチームにおける個への切り替え。これが出来る者だけがレギュラーを勝ち取っていくのだ。

 これから約3か月は、自分と向き合い、個の力を蓄える日々が続く。北信越大会準決勝で敗れた悔しさも糧になろう。チームの中心である3選手も、
「ランニングの時も最後の一歩まで走り切り、集中力を養います」(元山主将)
「まず体作り。夏の大会でもバテない体を作ります」(小林投手)
「来夏も四番として試合に出たいので、精神力も高め、強い心を培います」(甲田選手)
と、オフでの成長を誓った。

(取材・文=上原 伸一


注目記事
・【12月特集】冬のトレーニングで生まれ変わる

このページのトップへ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.16

【春季埼玉県大会】2回に一挙8得点!川口が浦和麗明をコールドで退けて県大会へ!

2024.04.16

【群馬】前橋が0封勝利、東農大二はコールド発進<春季大会>

2024.04.16

社会人野球に復帰した元巨人ドライチ・桜井俊貴「もう一度東京ドームのマウンドに立ちたい」

2024.04.16

【12球団4番打者成績一覧】開幕ダッシュに成功した4番はOPS1.1超のWBC戦士!

2024.04.16

城西国際大の新入生に大阪桐蔭、帝京、作新学院、神村学園ら強豪校の好選手が揃う!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!

2024.04.12

【九州】エナジックは明豊と、春日は佐賀北と対戦<春季地区大会組み合わせ>

2024.04.11

【埼玉】所沢、熊谷商、草加西などが初戦を突破<春季県大会地区予選>

2024.04.11

【千葉】中央学院は成田と磯辺の勝者と対戦<春季県大会組み合わせ>

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード