Column

オフ期間のバッティング計画と練習法 (JX-ENEOS 大久保秀昭監督)

2012.10.16

早大の走塁

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▲今夏、第83回都市対抗野球大会にて10度目の優勝を遂げたJX-ENEOS

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 今夏、東京ドームで行われた第83回都市対抗野球大会で史上最多10度目の優勝を遂げた、社会人野球の強豪・JX-ENEOS。主軸の池辺啓二選手(智弁和歌山-慶応大)を筆頭に強打者が揃う。
 今年はシーズン始めから、ある試みを行い、バッティング改革を求めてきた。「二塁打、三塁打の数が前年よりも増えました。目に見えて、効果があったと思います」と語るのは、大久保秀昭監督だ。
 桐蔭学園、慶応大、日本石油(現・JX-ENEOS)を経て、近鉄バファローズに入団。5年間の現役生活のあと、横浜ベイスターズでコーチを務め、2005年12月にJX-ENEOSの監督に就いた。
 社会人の王者は、どのようなバッティング練習をしているのか。指揮官として2008年、2012年に日本一を遂げている大久保監督に聞いた。

【関連記事】第83回都市対抗野球大会 決勝 JX-ENEOS VS JR東日本(社会人野球ドットコム)

970グラムのバットを振り込む

▲JX-ENEOS 大久保秀昭 監督

 今年、年頭にかかげたテーマは「パワーアップ」でした。

 バッティング面でいえば、練習では970グラム以上、オープン戦では930グラム以上のバットを使うことを徹底しました。普段、公式戦で使うのは900グラム前後です。

 練習の段階から、重たいバットを振り込むことで、パワーをつける狙いがありました。二塁打、三塁打の数は前年より増えましたね。目に見えて、効果があったと思います。

 高校生も重たいバットを振ることは、大いに意味があります。形も大事ですが、まずは振る体力、スイングスピードがなければどうにもなりません。

 ピッチャーが投げたボールが、バッターのところに届くまで、およそ0.4秒です。その間に細かいことを考えていたら打てませんよね。

大会に合わせてメニューを組む

▲スイングについて語る大久保監督

 練習メニューは、期間によって変わってきます。

 社会人の場合、都市対抗がもっとも大きな大会でその予選が6月にある。まずは6月にピークを持っていくようにしています。

 具体的にいえば、練習量です。ピークを作る前に強化期間を作って、スイング量を増やす。そこから、徐々に落としていくようにしています。

 スイング量は、予選前の強化期間でいえば、3日間で1000~1200。冬に入る12月は、1日で1000~1200スイングで、10日間で15,000スイングを目標にしています。

 12月に行うのはティーバッティングと素振りが中心です。ティーは基本的にはスタンドティー。斜めからトスをあげるティーよりも、実戦に近いという考えです。ネットがあるのなら、正面からのティーが一番いいでしょう。

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素振りの注意点

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▲大久保監督のバッティング革命により打撃力を手に入れたJX-ENEOS

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 みなさんはティーと素振り、どちらのほうがきついですか?

 ぼくの感覚では、ティーはボールを打つことができるので楽ができるんです。ですから、ティーだけでは振る力はついてこない。必ず、素振りをやるようにしています。

 ただ、素振りをするときに注意点があります。社会人の選手でも多いですが、ミートポイントを意識して振っていない。右バッターでいえば、左腰の前を振っているんです。これでは、ファウルにしかならないですよね。

 ホームベースを意識して、ボールが通過するところを振るだけで、素振りの意味合いが変わってきます。

意識の差が結果にあらわれる

▲JX-ENEOS練習場に掲げられた段幕

 うちの練習は短くて、全体練習は3時間程度です。まるまる1日練習することはありません。

 社会人は大人の集まりですから、私は大人として選手を見ています。大切にしてほしいのが、全体練習を終えたあとの自主練習。それぞれ課題は違うものですよね。それを、自主練習の中でレベルアップしていくのです。 

 何をやるにしても、意識だと思います。自らうまくなりたいという高い意識があれば、練習に取り組む姿勢も変わってきます。高校生には、まずはそこを身につけてほしいですね。

1本の素振り、1球のティーバッティングの価値

▲「悔いのないように1本1本を大事に」

 最後に高校球児にメッセージをお願いすると「目標設定がうまい選手ほど伸びる」と語ってくれた。

 「その日の目標設定、その先の目標設定をしっかりと定めることができるか。たとえば、前日のバッティングで10本中3本しか芯でミートすることができなければ、『今日は5本とらえられるようにしよう』ということでもいい。1日の練習を、いかに目標を持って取り組むことができるかです」

 また、こんな表現もしていた。

「高校生は自らやめない限り、2年半は野球ができます。でも、社会人は1年でクビになることもあるんです。こちらが言わなくても、自主的に練習に取り組んでいます」

 野球を終えたあとに、「あのとき、もっと一生懸命やっておけば」と悔いても遅い。
 1本の素振り、1球のティーバッティングに魂を込めて練習しよう。その積み重ねが、結果につながっていくはずだ。

 (解説・大久保秀昭(JX-ENEOS 監督)、構成・大利実

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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