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【2015年高校生ドラフト総括】「高橋 純平、オコエ 瑠偉など指名を受けた選手たちの顔ぶれを振り返る」

2015.10.26

 10月22日、2015年度のドラフト会議が開催された。今年は高校生では78名の選手がプロ志望届を提出し、育成枠を含めて39名の選手が指名を受けた。今回は高校生に焦点を当ててドラフトを振り返っていきたい。

上位24名に入った逸材たち

高橋 純平(県立岐阜商)

 今年は昨年に続き、4名が高卒ドラフト1位指名を受けた。

・東北楽天 オコエ瑠偉関東一
(※指名直後のオコエ選手の様子
・中日 小笠原慎之介東海大相模
(※関連コラム
・千葉ロッテ 平沢大河仙台育英
(※指名直後の平沢選手の様子
・福岡ソフトバンク 高橋純平県立岐阜商
(※2015年インタビュー

 まず高橋純平は3球団の競合の末、福岡ソフトバンクが交渉権を獲得。三軍制を敷いて、しっかりと実戦機会を積ませるだけではなく、個人のスキルを伸ばす育成力がある福岡ソフトバンクならば、高橋は日本を代表するような投手へ成長していくのではないだろうか。スケールが大きい選手をそのまま伸ばすことができる福岡ソフトバンクの育成力に期待したい。

 また平沢大河は2球団の競合の末、千葉ロッテが交渉権を確定。野手の高卒ドラフト1位は西岡 剛(現・阪神2013年インタビュー)以来。西岡は高卒1年目から一軍を経験し、高卒3年目の2005年にレギュラーを獲得、日本一に貢献した。走攻守で完成度が高い平沢は西岡のような活躍が十分に期待できる逸材である。
小笠原慎之介は外れ1位で中日と北海道日本ハムの競合の末、中日が交渉権を獲得。左の先発左腕が少ない中日ということで、小笠原には大きなチャンスがある。

 オコエ瑠偉は1年目から二軍ならばレギュラーを獲得できる完成度がある。課題は打撃。打撃を磨いて、一軍の投手に対応できる術を磨いていきたい。元々素晴らしいパンチ力の持ち主なので、必ずやチャンスは訪れることだろう。

 2位では廣岡 大志智辯学園2015年インタビュー)、小澤 怜史日大三島・2015年インタビュー【前編】 【後編】)の2人が指名を受けた。廣岡はパンチ力溢れる強打、ここぞという場面で見せる勝負強さが魅力の強打者。遊撃守備も今年にかけて成長した。今年の打撃部門を独占した東京ヤクルトの野手育成力の高さならば、廣岡も強打者としての開花に期待できる。自分たちがどの分野の育成に長けているのか。それをしっかりと理解した2位指名といえる。

 この夏、最速152キロを計測した小澤は、高橋に負けないスケール感を持った剛腕。時間をかけて育てていけば、高橋と一緒に福岡のファンを沸かせる剛腕へ成長していくだろう。それにしても高校球界を代表する剛腕2人を指名した福岡ソフトバンクのスカウティングも見事で、数年後が実に楽しみである。

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[page_break:3位~4位も個性的な選手がずらり!]

3位~4位も個性的な選手がずらり!

成田 翔(秋田商)

 そして福岡ソフトバンクは3位に谷川原 健太豊橋中央)を指名。全国的には無名だが、強打の捕手として評判だった逸材だ。スローイングの速さ、選球眼の良さなど選手としてのスキルは高く、拓也(甲斐 拓也)、山下 斐紹栗原 陵矢といった若手捕手に刺激を与える意味でも大きい指名といえる。
同じく3位に指名を受けたのは高橋 奎二龍谷大平安)、成田 翔秋田商)、高橋 樹也花巻東)、與那原 大剛普天間2015年インタビュー)の4名。

 このうち左腕投手が3名なので、左腕投手はいつでも需要があることが分かる。高橋奎は独特の足上げから打ち難さで勝負する好左腕、成田は140キロ前半の速球、縦スライダー、チェンジアップと勢いよく投げ込む左腕、さらに高橋樹は、140キロ前後ながら、スクリュー気味に落ちるチェンジアップで打たせて取る投球に長けた投手。それぞれに個性があり、いずれ一軍で活躍する可能性を持った左腕投手の指名をした3球団はナイスな戦略だ。

 そして與那原は甲子園出場はないが、190センチの長身から140キロ後半の速球と落差抜群のフォークを投げ込むスケール感たっぷりの大型右腕。巨人が「育成の巨人」として評価されるには、與那原のような投手をしっかりと育て上げることが必要となる。

 4位もそれぞれ個性を持った選手が指名された。左スリークォーター気味のフォームから最速145キロを計測する日隈 ジュリアス高知中央)は東京ヤクルト、185センチの長身から角度ある常時140キロ台の速球を投げ込む茶谷健太帝京三)は福岡ソフトバンク、選抜優勝投手の平沼 翔太敦賀気比2015年インタビュー)は内野手として北海道日本ハムから、常時145キロ前後の速球を投げ込む望月 惇志横浜創学館)は阪神タイガースから、走攻守三拍子揃った大瀧愛斗花咲徳栄・2015年インタビュー【前編】 【後編】)は埼玉西武、強肩強打の捕手・堀内 謙伍静岡)は東北楽天から指名を受けた。

 茶谷、日隈、望月はそれぞれ完成度の高さというよりもスケール感で勝負。プロで生き残る実戦力を身に付けていきたい。平沼は投手として完成度の高さは高校生トップクラスだが、野手については外野手で出場していることはあったが、国体で初めてショートで出場したばかり。身のこなしは軽快だったが、鍛錬がかなり必要な選手。だがしっかりと場数を踏んでいけば、楽しみな野手になりそうなポテンシャルを秘めているのは確かだ。大瀧も左打ちの外野手が目立つ埼玉西武ではチャンスがある。地元・埼玉の選手であり、将来の人気選手となる可能性は大きい。

 堀内は春から夏にかけて急成長した捕手。春前、静岡栗林 俊輔監督は堀内に「プロを目指すならば、同学年から大学生、社会人もライバルになるよ」と話していた。そう意識付けしたことが、成長した要因といえる。確かな守備力を持っている選手で、近い将来、正捕手争いに加わることは間違いない。

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[page_break:下位指名の選手も潜在能力は高く、逆転する可能性を秘めている]

下位指名の選手も潜在能力は高く、逆転する可能性を秘めている

原 嵩(専大松戸)

 5位以降は下位指名という位置づけになるものの、潜在能力が高い選手が指名されており、今後活躍する選手になる可能性は十二分に秘めている。ここは球団の育成力が試される。

 5位では140キロ台の速球と縦横の変化で勝負する吉田凌東海大相模)がオリックス、長身から振り下ろす速球を投げ込む綾部翔霞ヶ浦2015年インタビュー)が横浜DeNA、常時140キロ台の速球、縦の変化に磨きがかかった原 嵩専大松戸)は千葉ロッテ、高校通算97本塁打のスラッガー・黒瀬健太初芝橋本2015年インタビュー)が福岡ソフトバンクから指名を受けた。

 6位では140キロ台の速球とフォークをウリにする佐藤世那仙台育英2015年インタビュー)がオリックス、強打の遊撃手・渡辺大樹専大松戸)が東京ヤクルト、中島卓也(北海道日本ハム)を彷彿とさせるようなセンス溢れる遊撃手・川瀬 晃大分商)は福岡ソフトバンク、140キロ台の速球とスライダーを武器にする巽 大介岩倉)が巨人から指名を受けた。また青柳昴樹大阪桐蔭)は横浜DeNAから指名を受け、同校では2010年から続く6年連続の高卒プロ入りとなった。自慢の強打を披露していきたい。

 7位以降は強打の捕手・青木陸山形中央)が広島東洋の7位、大阪府の好投手として注目されていた村林 一輝大塚)は野手として東北楽天から7位指名、投打で高い才能を秘める姫野優也大阪偕星学園)は北海道日本ハムから8位指名を受けた。下位指名とはいえ、ポテンシャルの高さは上位指名された選手と比較してもひけを取らないものがあり、必死の努力でレギュラーを掴むことに期待したい。

 実力は全国的には無名だが、埼玉西武から9位指名を受けた藤田 航生弘前工)は130キロ後半の速球とキレのある変化球で勝負する好左腕で、青森大会4回戦の弘前学院聖愛戦で力投を見せており、将来が楽しみな投手だ。

 育成枠では甲子園で3本塁打を放った山本武白志(九州国際大附)、190センチの長身から投げ込む速球を武器にする中村 晨ルーテル学院)など9名の選手が指名を受けた。育成枠とはいえ、それぞれ潜在能力が高く、その能力が開花すれば、支配下登録される可能性を持った楽しみな選手たちだ。これから厳しいプロの舞台が始まることになるが、いつでも野球のことを考えトレーニングに励み、ぜひ一軍の舞台に立ってもらいたい。そして最終的には実力、立ち居振る舞いも、次世代の高校球児のお手本となる選手へ成長してくれることに期待したい。

(文=河嶋 宗一


注目記事
・2015年ドラフト特設ページ
・2015年秋季大会特設ページ

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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