パ・リーグ3連覇を目指すオリックスを俊足強肩巧打のリードオフマンとしてけん引するルーキー・茶野 篤政外野手(中京出身)。5月13日現在で、35試合に出場し、132打数41安打、打率.311、9打点。打率はリーグ2位、安打数はリーグ1位であり、育成出身から一気に新人王候補に急浮上した。

 そんな茶野は昨年、名古屋商科大を卒業後1年間独立リーグでプレーしていた。それが四国アイランドリーグplus所属の徳島インディゴソックスである。

 徳島インディゴソックス(以下、徳島)は「NPBへの登竜門」といえるチームだ。昨年まで10年連続で20人のNPBドラフト指名選手を輩出し、ここ5年では11人の選手を送り出している。

 まずはこの数値がどれだけ凄いかというデータを示してみよう。日本には「独立リーグ」と呼ばれるチームが20チーム以上あるが、そのうち7割以上のチームは今年NPBに選手を送り出していない。徳島に継ぐ2番目にNPBに輩出しているチームも4人(5年間)と徳島の半分以下の数値。これだけでも徳島の優秀さが見て取れる。

 この「異次元」とも言えるNPB高輩出率には確かな裏付けがある。第一は「選手の高い意識レベル」だ。

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NPBに進む先輩からの学びが、高い意識と伝統を創り上げる



オリックス・バファローズ茶野 篤政(徳島インディゴソックス時代)

 徳島の場合、2019年3人、2020年2人、2021年2人、2022年3人と毎年複数名がNPBドラフト指名を獲得。「身近なチームメートがNPBに行く」→「茶野を始めとする元チームメイトの活躍を見ると、「次は自分だ!」のマインドに」。

 この好循環が常に高い意識でシーズンを走り切る大きな原動力となる。

 特に茶野とプレーした選手たちの影響は顕著。昨年、茶野、日隈 モンテル外野手(金光大阪出身、西武育成)と鉄壁の外野陣を形成し、長打力と機動力の高さで次のNPBドラフト指名候補に挙がる井上 絢登外野手(久留米商ー福岡大卒2年目)はこう語る。

 「茶野は継続する能力に長けていました。たとえば前でさばく、バットが遠回りしない右手一本でのティーはずっとやっていました。僕もティーは茶野から話を聞いてやっていますし、茶野から教わった走塁トレーニングにも今取り組んでいて、盗塁数も増えています」

 また、正確な二塁送球と堅実なリードで2021年育成ドラフト1位指名を受けた古市 尊捕手(高松南出身、西武)に続く捕手としてのNPB入りを狙う北村 辰輝捕手(有明卒2年目)も、「茶野さんは練習や試合で失敗しても、すぐに切り替えて見つかった課題をすぐに消化していました。そこは自分のリードの部分でも生きていますし、同じ独立リーガーの先輩が1軍で活躍しているのを見ると勇気づけられます」と語る。

 また、オフシーズンになるとOBのNPB選手が徳島に戻り、現役選手と一緒に自主トレを行ったりもする。

 これこそが徳島の伝統であり。異次元のNPB輩出実績の秘密の一端である。

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