山田陽翔(近江)

投手としての実力は世代トップクラス

 今年の高校球児はさまざまな選手が注目されている中で、近江山田 陽翔(3年)は投手として最注目である。

 近江では、夏は2年連続ベスト4を記録しており、春は準優勝になった。今年の世代は、山田のワンマンチームだったため、投げさせすぎた懸念点もあるが、実力は申し分はないだろう。

 150キロ近いストレートとスプリット・スラッターを中心の投球スタイルは、短いイニングであれば起用できるレベルだ。理想としては、体力がつき始めて、球速も向上していければ、文句なしの投手になれるのではないだろうか。さらに、フィールディングも上手いことから、練習を積み重ねていけば、自らの守備で助けることもできる。

 甲子園でのピッチングは、完璧に抑えた上で完封勝利はないものの、打たれる姿含めて華やかさも兼ね備えている。

 人気の面を見ても、申し分はないだろう。2022年の甲子園において、「甲子園を味方につける」存在になりつつあった。声援は、試合や大会が進むごとに山田を後押ししていた。近江は、山田頼りなのが不安材料だったものの、打撃陣の勝負強さと守備陣の奮起が山田の力投を盛り立て、それが球場をも味方につけた。足を引きずる山田を投げさせた近江を手放しで称賛することも含めて、山田の「主人公力」が感じられた甲子園大会だった。

 そう言った点を見ても、山田を獲得する球団は出てくるだろう。

データから見るトップクラスとわかる山田の実績



山田陽翔(近江)

 山田の甲子園通算成績は下記になる。

15試合 112回 115奪三振  四死球42  自責点39 防3.13
被安打率7.39 奪三振率9.24 四死球率3.38

 この成績で注目をしたいのは、奪三振である。115奪三振は、歴代3位の記録だ。

歴代記録(TOP10)は下記になる。

1位:桑田 真澄PL学園)150
2位:島袋 洋奨興南)130
3位:山田 陽翔近江)115
4位:柴田勲(法政二)113
4位:石井毅(箕島)113
6位:斎藤 佑樹早稲田実業) 104
7位:尾崎行雄 (浪商)102
7位:田中 将大駒大苫小牧) 102
9位:奥川 恭伸星稜)100
10位:荒木大輔 (早稲田実業)97
10位:松坂 大輔 (横浜高) 97

 この成績を見ても、奪三振をとる能力は歴代的にトップクラスなのがわかる。防御率は3点台と多少高めに見えるが、大会終盤の疲労の影響もあるだろう。分業制がメインになりつつある高校野球において、一人で投げ抜きながら、この成績は非常に素晴らしいものがある。

 3年の活躍が印象深いが、2年生の時には優勝候補だった大阪桐蔭を抑えて勝利したことも、実力としては申し分がない。さらに、三冠を達成した今年の世代でも、春季近畿大会の準決勝で、山田自身が降板する6回までのスコアは、2対2と大阪桐蔭を相手に僅差の試合運びをした。

 一人で投げ抜く上で、今年の夏の甲子園では、大会を通した力配分を意識して、スラッター・スプリットを主体に組み立てるなど、ピッチングを通してクレバーさも見受けられた。試合の中で見ても、状況に応じて配球を変えることや判断力・対応力の高さは長いシーズンを戦うプロ野球でも活かせることができるだろう。

 現在の高校野球では、球数制限がある中での戦略で、20〜70球前後を3〜4人で繋いでいくチームは増えていくと推察している。投手として、守られる部分はあるが、山田のような馬力があり、完投能力が高いスーパーエースの存在は、魅力的に感じる。球数の多さは賛否両論になったが、スタミナや変化球、フィールディングはプロ野球のレベルに達しつつある。球速をもう少し上げることにより、早い段階で一軍でも活躍できるレベルに達することができるのではないだろうか。甲子園のスターとして活躍をした山田は、プロ野球の世界でも人気と実力を兼ね備えた選手になることに期待していきたい。

(文=ゴジキ)