なぜ浅野1位を掲げた巨人はドラフトでの野手獲得が急務なのか?
高松商・浅野翔吾
阿部慎之助ヘッドコーチが見るドラフト論
2019年に引退した阿部 慎之助は、来年から巨人のヘッドコーチを務めるようになる。その阿部は、巨人で戦略コーチなどを務めた橋上秀樹氏の共著『阿部慎之助の野球道』では、独特のドラフト論を語っている。阿部は取りたい選手を「主要都市で勝ち抜いた選手」と答え、次のように述べているのだ。
「『今年のドラフトなら◯◯』というような、具体的な名前まではわかりません。でも、あえて言わせていただけるのであれば、主要都市で野球をしていて勝ち抜いた経験を持った選手がいいなと思います。地方出身の選手は資質が高いのは間違いありませんが、肝心なメンタルの面は大都市でもまれた選手のほうが強いように思えるんです。とくに高校生を獲得する場合は、たとえば東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫、広島、福岡といった都市部エリアで野球をやっている選手を獲るべきだと思うんです」。高校生は「主要都市」で勝ち抜いた選手が他のエリアの球児よりも強靭なメンタルを持ち、ポテンシャルがあると強調している。
さらに、大学についてはこう語っている。「僕の経験でいけば、やはり東都(東都大学野球)出身の選手が一番いいですよ。東都には入れ替え戦があります。春に1部で優勝しても、秋に最下位になれば、2部の1位との入れ替え戦に回らなくてはいけない。そこで万が一、2つ負けてしまったら、2部に落ちてしまいます。反対に2部のチームは1部への昇格がかかっていますから、それはハングリーになりますよ」。
阿部自身、具体的なリーグ名まで挙げている。昔ながらのハングリーさやメンタリティーを評価軸に置いている。その点を見ても、阿部が指揮を執る時の若手選手の育成やドラフト戦略、チームビルディングは楽しみである。
野手陣の獲得が急務の2022ドラフト
今年のドラフト会議前に、巨人は高松商の浅野 翔吾外野手(3年)の指名を表明した。無事に交渉権を獲得すれば、岡本 和真内野手(智辯学園出身)以来の高卒大型野手である。これまでの巨人のドラフトを見ると、2017年に清宮 幸太郎内野手(早稲田実業出身)や村上 宗隆内野手(九州学院出身)を外したことが、野手の高齢化につながっている。さらに、2020年も佐藤 輝明内野手(仁川学院出身)を外したため、グレゴリー・ポランコ外野手が入団する前は、左打者で長打を打てる選手が丸 佳浩外野手(千葉経大附出身)しかいない状態だった。
そのため、2017年のドラフトから、1位指名は投手を指名している。
下記が2010年〜2021年のドラフト1位の選手である。
2010年:澤村 拓一
2011年:松本 竜也
2012年:菅野 智之
2013年:小林 誠司
2014年:岡本 和真
2015年:桜井 俊貴
2016年:吉川 尚輝
2017年:鍬原 拓也
2018年:高橋 優貴
2019年:堀田 賢慎
2020年:平内 龍太
2021年:大勢
これまでのドラフト1位の選手を見ても、ほとんどが投手なのが分かる。澤村 拓一投手(佐野日大出身)や菅野 智之投手(東海大相模出身)、大勢投手(西脇工出身)といった選手たちは活躍したが、長期的に戦力として起用できる選手を考えると、もう少し野手にシフトしてもよかっただろう。野手を獲得をしても、中位から下位選手のため、現状、大城 卓三捕手(東海大相模)以外はチームの主軸になるまでには育たないのが現状だ。逆に、先発陣はある程度枚数が見込まれている。
しかし、野手陣は岡本と吉川 尚輝内野手(岐阜中京出身)、大城以外は30代である。主力である坂本 勇人内野手(光星学院出身)や丸 佳浩、中田 翔内野手(大阪桐蔭出身)や外国人は、30代前半から中盤に差し掛かるため、いつパフォーマンスが落ちてもおかしくはない。そんな中で、野手の獲得は必要不可欠である。そのため、今年のオフのドラフトは、全力で若い野手の獲得に動いてほしい。そのため、何がなんでも、浅野を獲得し、外れたとしても野手を狙うべきだ。
さらに、浅野が巨人に入れば、坂本や岡本といった高卒で、駆け上がった選手の下でプレーができるのも大きい。浅野を含めた若い野手の獲得が巨人復活への鍵になるのは間違いない。
(文=ゴジキ)