隅田 知一郎(西日本工業大)

 今年も10月11日、運命のドラフトを迎える。すでに、全国ではドラフト1位候補の話題で満載だが、各地域でも全国と同等の知名度を持つ選手から、「埋もれた存在」的な好素材もいる。今回は九州の大学生投手にスポットを当てる。

九州の大学生プロ志望者(9月24日現在)

★九州六大学野球連盟
九州大 芦谷 汰貴投手(広島・修道
北九州市立大 豊村 直大投手(長崎・清峰

★福岡六大学野球連盟
九州産業大 佐田 健介投手(福岡・東海大福岡

★九州地区大学野球連盟
西日本工大 隅田 知一郎投手(長崎・波佐見
西日本工大 下山 泰輝投手(鹿児島・れいめい
西日本工大 伊藤 昂将投手(大分・情報科学
近大産業理工学部 高比良 駿投手(福岡・北九州市立
久留米工大 大江 海透投手(佐賀・神埼清明

 

 最速150キロ左腕。今年は九州から即戦力の「ドラフト1位」が生まれようとしている。西日本工大の隅田は、今年の大学野球選手権で神宮デビュー。いきなり、自慢の速球の威力をいかんなく発揮し、強豪上武大相手に14三振を奪ってみせた。完投負けを喫したが、ネット裏のプロスカウトの評価はさらに上昇した。この秋のリーグでも視察を続けるプロのスカウトも多く「1位で消える」といわれている。速球だけではなく、変化球の精度も高く、プロの世界ですぐに通用しそうだ。

 隅田に注目が集まるが、その他の候補にも「隠し玉」的な逸材がいる。同じ西日本工大の下山はサブマリンの技巧派。れいめい時代は控えだったが、180センチながら下手投げにチャレンジし、大学で自分のものにした。楽天・牧田を目標に、うきあがる直球も習得し、シンカーにも磨きをかけた。隅田とともにスカウトからも注目され、運命の時を待つ。

 広島から九州大に一浪して入学してきた左腕が芦谷。カナダにも留学するなど、博学を身に着け、あこがれだったというプロ野球の世界に飛び込む決意をした。最速は144キロ。クレバーな投球で、ワンポイントの左としてプロでも通用しそうな素材をもっている。これまで九州大からドラフト指名された選手はいない。歴史を作ることができるか。

 大学としても無名な近大産業理工学部からは、最速147キロ右腕、高比良がプロ志望届を提出した。北九州市立時代は体の線は細かったが、175センチ、77キロと、体もしっかり出来て、球速もアップ。将来性を感じさせる素材で、育成でも指名される可能性はある。

 九州の大学生投手としてのドラフト上位指名は、3年前には広島で2位指名を受けた島内 颯太郎(光陵ー九州共立大)以来。ドラフト1位となると2013年に九州共立大・大瀬良 大地投手(長崎日大)が広島1位指名を受けて以来となる。隅田が8年ぶりの「九州大学生ドラフト1位」投手となれるか。

(記事:浦田 由紀夫)