明桜・風間球打の「ある1球」に素質の高さ見た
風間球打(明桜)写真:日刊スポーツアフロ
今大会NO・1の注目右腕、明桜(秋田)の風間 球打投手(3年)が、初戦を突破した。強打の帯広農(北北海道)を2失点完投。10奪三振の快投だった。150キロもマークし、プロのスカウトをうならせる内容だった。体格も素晴らしく、ドラフト上位候補であることは間違いない。この甲子園でさらに評価を上げたことになる。
個人的には、「ある1球」に驚かされた。それは150キロの次の球だった。
3回1点を失い同点に追いつかれて、なおも一死二、三塁。勝ち越しは許されない状況だった。風間はギアをひとつ上げたのだろう。初球から力を込めた。
1球目145キロ直球が外角高めに浮いてボール。2球目も148キロ直球が外角に外れた。そして3球目。さらにギアを上げたのだろう、150キロ直球が低めに外れた。渾身のストレートだったが、気持ちが空回りしていることを知った。
風間の強味は、最近あまり見なくなった典型的な「上手投げ」にある。振りかぶってテークバックまでは普通だが、それから体をやや左に傾け、それにより右腕が自然に上から振り下ろすようにリリースする。体が強くなければこのフォームに耐えられない。風間は上からフォームの利点とスナップの強さで上からたたきつけるように直球を投げ込む。だから、低めにいくと角度のある剛速球となる。これが風間の生命線であると思っている。
勝負の場面でそれが裏目にでた。力が入りすぎていた。カウント3ボールノーストライクと追い込まれた。やや球速を落とすように制球力重視の直球でストライクを取りに来ると思っていた。しかし、予想は裏切られる。
ど真ん中のカットボールだった。
驚いた。絶対にストライクを取らないといけない場面で選んだのは直球ではなかった。その1球でフォームが修正できたのか、次は144キロの直球でファウルを奪うと、最後は149キロの直球で空振りの三振を奪った。追い込まれた状況でも、カットボール1球を入れて、すべてを修正した。続く4番は3球三振でピンチを切り抜けた。
調子がいい時に抑えるのは当たり前だが、本当にいい投手かどうかは、調子が悪い時にどれだけ修正できるかにかかっている。それも試合中にできる投手が本物だと思っている。風間にはその「修正力」がある。
12日の初戦は4回まで無安打無得点もノーゲームとなった。それから3日。あのときと状況は違う。雨も降っていないし、相手も自分を研究し尽くしている。そのなかで上ったマウンドだった。自分の調子はもちろんだが、相手がどうしてくるかを探る必要もあった。3回は自分の「修正力」で立て直し、直球を狙われているとみるや5回以降は、力も少し「抜いた」。4回まで7個だった三振は5回以降3個(1つはスリーバント失敗)だった。圧倒的に力で抑え込む投手のようなフォームと球筋ながら、クレバーで自分を変えられる能力を持つ。プロにいけば必要となる素質があると痛感した。
自分をよく知っていないと備わることができない「修正力」。風間は、試合をするたびにこれからも成長していくのだと思う。次の相手は、百戦錬磨の明徳義塾(高知)。地方大会決勝で、同じくプロ注目の高知・森木 大智投手(3年)を倒した。名将・馬淵監督を中心に自分を「裸」にしてくるであろう相手に対して、またも「修正力」が試される。今から対決が楽しみで仕方ない。
(文=浦田 由紀夫)