Column

ノーヒットノーラン達成した市川祐(関東一)が同世代の投手より頭1つ抜けたコントロールと投球術を分析!

2020.09.13

ノーヒットノーラン達成した市川祐(関東一)が同世代の投手より頭1つ抜けたコントロールと投球術を分析! | 高校野球ドットコム
市川祐(関東一)

 下級生の時から将来性の高さを評価されていた関東一の本格派右腕・市川祐。新宿シニアから実績十分の市川は1年夏から甲子園の登板を経験。さらに最速143キロもマークし、順調な成長を遂げていた。そして秋初戦の都立新宿戦で高校初のノーヒットノーラン達成した。

 好投手がプロ注目投手へ成長する過程はいろいろある。もともと飛び抜けた球速があって、あとから制球力がつくタイプと、高い制球力があって、あとから球速がつくタイプ。市川は後者だろう。中学時代は130キロ前後。そして1年春、横浜との親善試合で登板した姿を見たことあるが、125キロ前後の速球とカーブをテンポよく投げ分ける投手。また東東京大会でもベンチ入りしたが、128キロ程度で速くなかった。それでも米澤監督は制球力の高さと精神力の高さを評価してベンチ入り。実際に大舞台でも動じずに投げることができる強さは当時から光っていた。

 そしてコロナから開けて7月でも練習試合でも140キロ中盤の球速を計測するなど順調にレベルアップしていた市川。そして東東京大会ではベストメンバーで臨む4回戦からベンチ入りし、キレのある快速球を投げ込み、主に中継ぎ役として活躍した。

 そしてこの夏休み。米澤監督は先発完投できる投手を目指してほしいという願いをこめて、大会終了後の練習試合では先発として投げ、順調に結果を残し、この大会に臨んだ。

 都立新宿戦の先発マウンドに登った市川はこれまでと同じく、良い意味で脱力ができており、さらに冷静なマウンド捌きを見せてくれた。


 最速143キロを誇る市川。市川は力を入れず、コントロール重視したと語るように、ストレートは常時130キロ前半~138キロと突出した数字ではない。ただ、1年生だった時と比べるとアベレージは常時5キロ以上は速くなっている。

 スピード以上に良いのは球質の良さだ。角度のあるストレートは縦回転で使える投球フォームから生み出すことができている。

 

 ワインドアップから始動し、左足をゆったりと上げていき、右足の膝を適度に伸ばしてバランスよくたち、内回りのテークバックからしっかりと右肘を上げていき、打者よりでリリースすることができる。バランスの良いフォームによってキレのあるストレートを投げ込むことができる。

 

 また本人も手応えを感じていたのが変化球のコントロール。スライダー、カーブ、チェンジアップの3球種を投げ込んでいたが、特に良かったのがスライダー。膨らみが小さく、打者の手元で鋭く曲がるこのスライダー。それほどスピードはあるわけではないが、次々とストライクが決まる。都立新宿ナインは変化球に狙いを絞っていたが、予想を上回るキレに次々と空振り。またコーナーに絶妙に決めるので、見送るしかない。また、都立新宿の打者がベースから遠ざかって構えるのを見逃さず、ボールが遠く感じるアウトコース主体の投球で試合を作った。

「ストライク先行ができたので投球として楽となりました」と語るように、初球からストライクが取れたのは打者28人中、22人。ボール球もほとんどなく、ほぼ市川の意のままに投球ができた。

 結果として、打者28人 15奪三振、外野フライ5個、内野フライ2個、内野ライナー1個、内野ゴロ3個(うち併殺1個)と圧巻の内容でノーヒットノーラン達成した。

 ストレートは本調子ではなかったとはいえ、最後まで大記録を意識しなかったと語るように、マインド面、投球内容がこの世代の中では突き抜けている。

 2016年以来の選抜を目指す関東一。それは新エース・市川祐の投球にかかっている。

関連記事
第1186回 140キロの剛腕左腕だった早真之介が高校通算27本塁打を誇る京都屈指のスラッガーになるまで【前編】
第1174回 完成系は稲葉篤紀か?高校通算27本塁打・早真之介が見据える、ラストサマーへの想い【後編】
今年の近畿地区は野手豊作年。土田龍空(近江)、西野力矢(大阪桐蔭)などすでに8名がプロ志望を表明

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.16

【春季埼玉県大会】2回に一挙8得点!川口が浦和麗明をコールドで退けて県大会へ!

2024.04.16

【群馬】前橋が0封勝利、東農大二はコールド発進<春季大会>

2024.04.16

社会人野球に復帰した元巨人ドライチ・桜井俊貴「もう一度東京ドームのマウンドに立ちたい」

2024.04.17

「慶應のやり方がいいとかじゃなく、野球界の今までの常識を疑ってかかってほしい」——元慶應高監督・上田誠さん【新連載『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.1】

2024.04.17

仙台育英に”強気の”完投勝利したサウスポーに強力ライバル現る! 「心の緩みがあった」秋の悔しさでチーム内競争激化!【野球部訪問・東陵編②】

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!

2024.04.15

四国IL・愛媛の羽野紀希が157キロを記録! 昨年は指名漏れを味わった右腕が急成長!

2024.04.12

【九州】エナジックは明豊と、春日は佐賀北と対戦<春季地区大会組み合わせ>

2024.04.11

【埼玉】所沢、熊谷商、草加西などが初戦を突破<春季県大会地区予選>

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード