第254回 この4人は別格。中森俊介(明石商)、高橋宏斗(中京大中京)、篠木健太郎(木更津総合)、小林樹斗(智辯和歌山)の魅力とは2020年08月18日
夏になると、多くの選手が台頭し、ニュースターの登場が多く聞かれる。それでもトップ選手の地位は簡単に揺るがないと強く痛感する。2020年の高校生右腕でトップ4として注目していたのが高橋 宏斗(中京大中京)、中森 俊介(明石商)、篠木 健太郎(木更津総合)、小林 樹斗(智辯和歌山)の4人だ。 夏の4人の投球を見ると、改めて抜けていることが分かる。まず4人は期待通りのパフォーマンスを発揮するメンタルの強さがある。その上で、高橋、中森、篠木、小林はそれぞれの違いと強みがある。
4選手の強みをもう一度迫っていきたい。

左から篠木健太郎、小林樹斗、中森俊介、高橋宏斗
まず高橋は圧倒的に馬力が違う。常時150キロ台・最速154キロの速球は今年の高校生どころか、大学・社会人と比較してもトップクラスの平均球速。リリーフで活躍した愛知大会の投球を振り返るとこの豪速球に加え、130キロ中盤のフォーク気味に落ちるツーシーム、135キロ前後のカットボールを自在に投げ分け、相手打者をねじ伏せる投球はプロのセットアッパーにひけをとらないものがあった。そして先発として投げた智辯学園戦では最速153キロ・148.4キロ。1イニング別で見ると平均球速149キロ以上だったのが4回と、調子が悪いながらも3失点に止め、改めて別格のパフォーマンスを示した。延長までクオリティが高い投球を実践できたのは試合中の修正がうまくいった。高橋は「ストレートがスライダー回転、シュート回転してしまい、ストライク、ボールがはっきりしてしまいバラバラだった」と語るように、スピードは出ていても甘いコースはあった。そこで高橋はセットポジションに入った時にグラブの位置を高くした。
フォームのバランスも良くなり、終盤にギアを上げる投球ができるようになった。自粛期間中は慶応大野球部だった高橋怜介さんと一緒にキャッチボール、トレーニングを行ってきた。その期間について「兄からより速く質のある速球を投げるための方法、変化球、野球への考え方。すべてにおいて教わりました」と有意義なものだと語っている。
愛知大会、甲子園での投球は自粛期間でしっかり自覚を持って取り組んでいる様子が伝わってきた。どんな進路をたどるのか注目したい。
そして中森はこの3人の中で変化球が多く、多彩な投球を展開する。スライダー、チェンジアップ、ツーシーム、スプリットと縦、横に自在に投げ分ける。この器用さは大学生や社会人にも負けていない。桐生第一戦では最速150キロをマークし、平均球速143.86キロと高校生トップクラスの球速をマーク。150キロを連発していた高橋と比べると物足りなさは感じるかもしれないが、多彩な変化球を投げる中森のタイプとしてはこの平均球速は恐ろしいものがある。最後の公式戦を2失点完投勝利で終えた中森はいつものように自分の投球を厳しく振り返った。
「序盤は良い感じで、テンポよくで投げられましたが、終盤にかけて体力が無くなって来てしまいました。それでバットに当てられることも多かったです」
連日の猛暑。精力的にトレーニングを続けていた中森でも、やはり大変なものがあっただろう。ただ、9回115球と1イニング平均12.77球で少ない球数で終えている。これは中森もテーマにしていたことだった。
「現在の投球のテーマは打たせて取ることです。去年の履正社戦の敗戦の時は警戒しすぎて増やしてしまったので、自分のボールに自信をもってどんどんストライク先行で投げていくことを大事にしました」
効率重視の投球を見せた中森。この安定感、投球術の上手さは素晴らしいものがある、
プロ志望届けを提出すれば、上位候補としてマークされる存在。どんな進路をたどるのか注目である。
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- 編集長 河嶋 宗一
- 出身地:千葉県
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