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200球の力投も及ばず。平均球速から測る大阪桐蔭のエース・中田 惟斗の成長ぶり

2019.07.26

 200球を投げぬいた2019年の大阪桐蔭のエース・中田 惟斗。夏の大阪大会準々決勝で敗れ、全国舞台に顔を出すことなく、夏を終えることとなった。改めてお伝えしたいのは中田は全国レベルの投手へ成長し、歴代の大阪桐蔭のエースに負けない投手になっていた。それは数字面を比較しながら紹介をしていきたい。

夏にフォームが大きく改善

200球の力投も及ばず。平均球速から測る大阪桐蔭のエース・中田 惟斗の成長ぶり | 高校野球ドットコム
中田 惟斗(大阪桐蔭) ※6月の招待試合で撮影

 

 和歌山御坊ボーイズから140キロ台の速球を投げられ、地上波のバラエティー番組でも登場するなど鳴り物入りで入部した中田だが、下級生の時から思うような実力を発揮できなかった。2年春で先発した中田は130キロ後半は数球ぐらいで、130キロ中盤がほとんど。コントロールもままならなかった。その理由として不安定なフォームにある。当時の中田は大きく顎が上がり、軸のブレが目立つ投球フォームだった。

 ただこの夏はフォームが大きく改善。顎が大きく上がることは少なくなり、フォームのブレが少なくなり、恵まれた体格、パワーを最大限に発揮できるようになった。立ち上がりから140キロ台を連発。中田の球速を7イニング測ったが ストレート36球中、うち140キロ以上が30球と平均球速140.41キロと格段にレベルアップしていた。

 8回でも143キロを計測しており、延長戦になってもその勢いは衰えることはなかった。また速球以外でも変化球のレベルも高く、120キロ後半のフォーク、120キロ前半のスライダー、120キロ後半のカット系の変化球は低めに投げることができていた。

 中田は「終盤になっても疲れはなかったですし、このように終盤でも勢いあるストレートを投げることができたのは、メンタル面を鍛えてきて、負けられない気持ちがあったからだと思います」とメンタル面の成長を挙げたが、技術的な側面で見ていくと、無駄な力が入らない投球フォームにしたことも大きかった。

 200球を投げ、サヨナラ負けに終わり、「去年の秋、今年の春と悔しい負けをしているので、この夏こそという思いで投げてきましたが、こういう形で悔しいです」と涙を流しながら振り返った。

 ただこうも振り返った。

「投手として自分の仕事はできたと思います。ただ相手投手が上でした」

 13.1回を投げ、被安打7、12奪三振、4失点とこの内容に責めるものは誰もいないだろう。こと平均球速に関しては2017年のエース・徳山壮磨の同時期と比べると上であり、キレ型の徳山と比べて、中田は威力型。簡単には飛ばない力強さが中田にはあり、2018年のエース・柿木蓮に近い投手へ成長した。

 改めて数字にしたことで見えてくる中田の成長度。どのステージに進むかはわからないが、これからも努力を重ねていけば、今以上に脚光を浴びる時が来るだろう。それだけの可能性を感じさせるボールを投げ込んでいた。

文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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