【逸材レポート】横山陸人(専大松戸)「貫き続けたストレートのレベルアップ。だからこそ今の立ち位置がある」
全国トップクラスの右サイドハンド・横山陸人(専大松戸)の夏が終わりを告げた。最速148キロの速球、130キロを超えるスライダーと1つ1つの球種は超高校級だ。そんな横山の成長を振り返りつつ、ピッチングを分析し、次のステージで活躍を誓う横山の今後の課題について述べていきたい。
2年春から右肩上がりに成長
市立松戸戦の横山陸人(専大松戸)
見るたびに急成長する投手だった。今では懐かしい話だが、2年春の地区予選・市立松戸戦に登場した横山は右アンダースローだった。例年、右の本格派が多い専大松戸にしては珍しいタイプで、伸びのある110キロ台のストレートで5回まで9奪三振の快投だった。高橋礼(福岡ソフトバンク)以来の本格派アンダースローになると思いきや春の県大会では腕の位置を上げていた。すると常時110キロ台だったのが、一気に130キロ台を記録するまでになっていたのだ。おそらく一時的なアンダースローだったと思うが、半月間でこれほど球速が変わる投手はあまり記憶にない。
それ以降、横山は順調にレベルアップを続けた。2年秋は130キロ後半、そして今春ではストレートが140キロ台に達し、県大会、関東大会でも好投を続け、右サイドではトップクラスの評価を受けるまでになっていたのだ。特筆すべきはストレート。なんといっても打者よりで離し、回転数抜群のストレートは見ていて唸らされるものがある。この夏は最速148キロを計測し、高校生の右サイドでは昨年プロ入りした市川悠太(明徳義塾)レベルに達したといっていいだろう。
しかし夏の千葉大会では苦しい投球が続いた。2回戦の日体大柏戦では初回に4点とられ、4回戦の八千代松陰戦ではいきなり先制本塁打を浴びてしまう。
この夏の横山はらしさがみられなかった。横山といえば、回転数抜群のストレートを内外角に投げ分けしつつ、高めに力のあるストレートで圧倒する本格派の右サイド。しかし夏では高めに力のないボールがいったり、外角のベルトゾーンにストレートが集まってしまい痛打を浴びるシーンがみられた。横山を打ち込んだ日体大柏打線、八千代松陰打線は徹底した横山対策をしており、横山は春先に比べてアベレージ3キロ~5キロぐらい速くなり、ストレートそのものは格段にレベルアップしているものの、それでも対策をされると痛打を浴びてしまうものなのだ。
[page_break:左打者に打たれるのはある意味、必要なステップ それを乗り越えることができるか?]左打者に打たれるのはある意味、必要なステップ それを乗り越えることができるか?
横山陸人(専大松戸)
打たれるシーンを振り返ると、直球だと分かっている相手にストレートを投げ込んでいるシーンが多く、また本塁打を打たれたのも、痛打されているのも左打者が圧倒的に多い。課題は左打者に対しての配球となる。
右サイドはボールの角度上、左打者に対して弱い傾向にあるが、横山もその1人に入る。
今回の敗戦は夏まで左打者対策へ向けて完璧な準備ができなかったのが響いたのかもしれない。大学、社会人、プロで活躍するサイドハンドは左打者に対して逃げる軌道、落ちる変化球があるが、横山は横のスライダーか緩急を使うカーブのみ。八千代松陰戦でチェンジアップを解禁したが、まだ完成度は高くない。それは今後のステージで磨くことになるだろう。
ただこれまでのステップは悪くない。ストレートに比べ、変化球の精度が低いと感じるのは、専大松戸の方針上、致し方ない見方ができる。専大松戸の投手はまずストレートを優先的に磨かせる。持丸監督は北海道日本ハムで活躍する上沢直之を育てたときも、ストレートを優先的に磨かせた。その理由について持丸監督はこう語る。
「やっぱり最後はストレート。これは投手ではなく打者にも言えることなのですが、キレの良いストレート、本当に速いストレート、キレのあるストレートを打つには、実は変化球を打つよりも難しいと思っています。まず変化球もしっかりとしたストレートがあって初めて生きるものですから」
上沢に対しては、極力、ストレート勝負で行くことを指示した。もちろん打たれることはある。それでも、その指示は曲げなかった。それが正しい方針であるかは上沢だけではなく、大学、社会人、プロで活躍する投手を見れば明らかだ。
逆に言えば、勝つために変化球を磨くことを優先していたら、今の横山の立ち位置はあるかといえば、ノーだろう。横山を高校レベルで勝つか?ではなく、プロや大学、社会人で活躍できるほどの可能性を持たせるまでに育て上げた専大松戸の投手育成力は恐れ入る。
甲子園を目指した中で4回戦敗退。非常に悔しいものがあるだろう。ただこの3年間の過程は素晴らしいものであること。
これからは横山自身で、打たれにくい投手になるために創意工夫を重ねてほしい。そうすれば、日本のトップレベルで活躍する右サイドハンドの道が訪れるはずだ。
文=河嶋 宗一
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