奥川恭伸、さらなるステップアップへ。全国トップクラス・東海大相模打線と対戦して学んだこと
今年の高校生を代表する豪腕・奥川恭伸(星稜)。自身4度目の甲子園出場を目指して、調整を続けている。6月23日、楽しみな対決が訪れた。強打で関東の頂点に立った東海大相模相手に先発したのであった。その対決を聞きつけ、多くのギャラリーが集まった。そんな奥川はどんなピッチングを魅せたのか?東海大相模戦のピッチングを振り返っていきたい。
<試合レポート>
あの東海大相模のクリーンナップを封じ込む奥川の凄さ
奥川恭伸(星稜)
「22日の山梨学院戦では立ち上がりに課題がありましたので、この試合では立ち上がりからしっかりと投げることを意識しました」
奥川からストライク先行のピッチング。まず1番でドラフト候補として期待される遠藤成を追い込んでから、122キロの縦スライダーで空振り三振。2番・井上恵輔も縦スライダーであっさりと三振。3番・鵜沼魁斗に対してはこの日、最速の148キロのストレートで見逃し三振。東海大相模の中心打者である3人に対し、あっさりと打ち取った。
そして2回表、4番・西川 僚祐も縦スライダーで空振り三振。この4人から連続で三振を打ち取った価値は大きい。遠藤成は高校通算40本塁打のスラッガー、井上は公式戦で7本塁打を誇る強打の捕手、鵜沼は関東大会で打率5割の巧打者、西川は高校通算38本塁打を誇る大型スラッガー。その4人が手も足も出ない形で三振も打ち取られたのはあまり見たことがない。序盤のピッチングだけでもインパクト十分だった。
打席に立った西川は「本当に凄い投手でした。前日に上武大学さんとオープン戦をやらせていただいたのですが、大学生の投手よりも奥川さんの投球はすごかったです」
奥川の凄さを実感していた。奥川はがむしゃらに三振に狙いにいくのではない。100キロ台のカーブを織り交ぜたり、ストレートのスピードを140キロ前半に抑えて、打たせて取る投球ができていた。なんと4回までパーフェクト。5回裏、西川を失策で出塁させ、牽制悪送球で1点を失ったが、ノーヒットワンランを続けていた。
しかし6回裏、1番遠藤に初安打を浴び、2番井上を一邪飛に打ち取り、二死まで追い込み、3番・鵜沼は縦スライダーで空振り三振に打ち取ったが、パスボールとなり、振り逃げ。そして4番西川 僚祐に対して追い込んだが、最速146キロのストレートを打たれ、同点の2点適時二塁打を浴びてしまう。
さらに5番本間 巧真には143キロのストレートを打たれ、左前適時打。さらにベースカバーのミスなどもあり、本間も生還し、5失点となった。それでも奥川のピッチングは勢いが落ちることはなく、8回でも145キロを計測。ストレートを計測した42球中、41球が140キロ超えで、平均球速は143.57キロと、まるでプロの先発投手のような数字である。
[page_break:場面に応じて併殺も打ち取れるピッチングを]場面に応じて併殺も打ち取れるピッチングを
奥川恭伸はこの夏、石川県勢初の優勝をもたらすことができるのか
投球成績を見ると、8回を投げて、107球、被安打5、四死球2、12奪三振、5失点と安定感抜群のピッチングだ。ちなみに東海大相模相手に、130キロを超えるフォークボールは投げておらず、さらに基本的に縦スライダー、カーブのコンビネーションで12三振を奪ったのだから恐るべしだ。
5失点はエラー絡みのものも多く、奥川は「それでも抑えるのが僕の役割なので、負けたのは悔しいです」と悔やんだ。8イニングを投げて、107球と効率的なペースで投げているように見えるが、奥川は「無駄があります」と納得していない。
奥川は夏の大会の課題として、一塁時のピッチングをあげた。
「簡単に走られているのもそうですし、少ない球数で併殺を打ち取ることができないので、そこが次のステップですね」
東海大相模の選手たちもクイックが遅いと見て、盗塁を敢行。結果的に3盗塁を許した。走らせないようにするにはクイックが速ければいいものではなく、クイックタイムを速くしたことで、投球のクオリティが落ちて打たれてしまうのは、プロの世界で見られており、最近は高速クイックの弊害も語られるようになった。
奥川はピッチングの精度を落とすことなく、クイックタイムを速くするピッチングが求められる。
8回まで安定して140キロ台を出せているようにピッチングの精度は日増しに高まっており、コンディションの状態が良ければ、150キロを出すのも時間の問題。全国トップクラスの強力打線・東海大相模と対戦したことは、「通用したところもあり、自信になったところもある」と手応えを感じている。
初戦の相手も決まり、同ブロックの強豪には遊学館が入った。初の石川県勢の全国制覇へ、どんなイレギュラーがあっても、勝利に導く。それが奥川に求められる役割であり、奥川自身も理解をしている。
奥川はこの夏でも格の違いを見せることができるのか。
文=河嶋宗一
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