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木製バットを握った野手陣の実力は?強肩捕手、逸材遊撃手たちを考察!【前編】

2019.04.11

 4月5日から行われた高校日本代表は座学、紅白戦、実戦形式の練習があり、非常に内容の濃いものであった。全国トップレベルの選手が切磋琢磨する姿は見ていて面白いものがあった。選手を分析するものからすれば、これ以上ない機会をいただき、感謝を申し上げたい。今回は参加選手のパフォーマンスを実際に考察していきたいと思う。今回は野手のパフォーマンスについて紹介していきたい。

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4人の捕手の特徴を分析

木製バットを握った野手陣の実力は?強肩捕手、逸材遊撃手たちを考察!【前編】 | 高校野球ドットコム
左から渡部雅也(日大山形)、東妻純平(智辯和歌山)、山瀬慎之介(星稜)、藤田健斗(中京学院大中京)

 渡部 雅也日大山形):捕手/3年/183/84/右/右
 参加した4捕手の中で最も大型な捕手。打撃のメカニズムを見ると、レベルスイングを心がけており、下半身主導で動いているので、時間をかけていけば、4選手の中で最も長打が期待できるスイングだ。また、スローイングタイムは1.9秒台を計測した強肩も魅力だ。打てる捕手としてさらに存在感を発揮したい。

 山瀬 慎之助星稜):捕手/3年/177/82/右/右
 何といっても魅力は1.8秒台の強肩。課題の打撃は外野へ深いフライもあり、少しずつ強さを見せている。投手とコミュニケーションを取りながら持ち味を発揮していた。

 藤田 健斗中京学院大中京):捕手/3年/173/73/右/右
 佐々木朗希のボールを受け取り、一躍、時の人となった藤田。そこで名前を覚えた方に藤田について紹介すると、昨秋の東海大会4強に導いた好捕手で、フットワークの良さと1.8秒~1.9秒台の強肩が光る好捕手。打撃はインサイドアウトのスイングでボールを捉えるアベレージヒッター型。ただ木製バットで打てることを考えると、もう少し打撃に強さが欲しい。

 東妻 純平智辯和歌山):捕手/3年/174/75/右/右
 ほかの3人の捕手に負けじと1.8秒台の強肩を見せつけた東妻。ただ肝心の打撃では苦しんだ。金属バットではホームランを量産する東妻だが、まだ木製バットで長打を打てるフォームをつかみ切れていない様子。いわゆる手打ち気味になっていて、体の回転が弱く、スイングが弱い。普段から木製バットでの練習をしているようだが、対投手と対戦して、いかにして強いスイングができるかにこだわってほしい。またセカンド、外野だったり、いろいろなところを守って学び取ろうとする志は良し。木製バットでも強肩強打の捕手へ成長することを期待したい。

攻守でバランスが取れていた武岡、韮澤

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左:武岡龍世(八戸学院光星) 右:韮沢雄也(花咲徳栄)

 武岡 龍世八戸学院光星):内野手/3年/178/76/右/左
 好遊撃手揃いで、攻守で存在感を示した。守備はステップともに軽快で、スローイングも強く、全く乱れない。機敏なクイックネス、強い体幹を生かし、どの距離でも強いボールが投げられるスナップスローと安定感は抜群。

 ほかの遊撃手に聞くと、「武岡君が一番うまかった」という評価だ。ノックでは外野の練習をしていたが、肩の強さ、安定感は素晴らしく、深い位置からでもダイレクト送球かワンバウンド送球でバックホーム、バックサードができていた。外野手の練習もすれば、相当評価が上がる選手になるのではないだろうか。

 打撃は京田陽太(中日)に似ていてコンパクトで内回りのスイングで捉える。構え遅れがなく、145キロ前後の速球をクリーンヒットにできる技術がある。広角に安打が打てて、欠点が少ない選手だが、長打はあまり期待できない打撃フォームなので、長打を求める場合、メカニズムを考え直す必要はあるだろう。その回り道をどの時期にするのか。注目してみたい。

 韮沢 雄也花咲徳栄):内野手/3年/177/80/右/左
 2015年から4年続けて高卒プロ入りしている花咲徳栄が誇るショートストップで、2016年、オリックス入りした岡崎大輔よりも上と断言できる。

 まずは木製バットでも長打を打てるメカニズムをしているということ。今年にかけて2学年上の西川愛也(埼玉西武)に近い構えになり手元までボールを呼び込んで、インサイドアウトのスイングで広角にボールを打ち返す。左中間にも長打が打てて、ミート力もあって、長打も打てるというバランスが素晴らしい。

 守備もフットワークも軽快で、スローイングも安定している。武岡に負けない魅力はあった。

 またメンタルの強さを示すエピソードもある。2日目の午後の紅白戦で韮澤は死球を受けて、膝に受け、グラウンドを後にしたが、最終日の3日目は元気にアップに参加。永田監督は「我々が状態を確認する前からアップに入っていました。何事もなくてよかったです」と、シートノックからキレの良い動きを見せ、さらにシート打撃では左中間へ長打を放ち、三塁打を記録した。

 この経験を機に韮澤はどんな進化を見せるのか。

[page_break:森、熊田、紅林、内山の4ショートを徹底分析!]

森、熊田、紅林、内山の4ショートを徹底分析!

木製バットを握った野手陣の実力は?強肩捕手、逸材遊撃手たちを考察!【前編】 | 高校野球ドットコム
左:森敬斗(桐蔭学園) 右:熊田任洋(東邦)

 森 敬斗桐蔭学園):内野手/3年/173/73/右/左
 この選手の魅力は何といってもスピード。ベースランニングの速さは視察していたスカウトも驚嘆させた。

 守備を見ると、足さばきが軽快で、捕球してから送球するまでも速く、スローイングも非常に強く、深い位置から刺せる強肩が光る。外野手としてノックに入っていたが、強肩を披露し、二塁手として入ると、キレの良い動きを見せる。

 打撃も173センチだが、小さくまとまらず、先輩・茂木栄五郎のように、手元までボールを呼び込み、捻りを入れてフルスイングを行う。腰をしっかりと回転させて、振り切っており、打撃練習でも強い打球を飛ばし、紅白戦では宮城大弥興南)から左中間へ三塁打を放つ。

 三塁打を放った時のベースランニングは非常に速く、思わずスカウトも「スピードが素晴らしいね」と絶賛した。最終日のシート打撃では、及川雅貴のストレートにもくらいつき、右前安打としっかりとアピールした。

 この合宿で評価を高めたのではないだろうか。

 熊田 任洋東邦):内野手/3年/174/74/右/左
 センバツでは21打数9安打、打率.421、1三振と抜群のバットコントロールと強肩を生かした遊撃守備で、優勝に貢献した熊田。魅力といえば、高い技術を追求する姿勢。東邦グラウンドで取材した時、鬼気迫る表情でいくつものティーをこなしていたが、それはこの合宿に参加しても変わらない。

 普通のティーバッティング、真横からのティー、インステップした状態からのティーバッティングと工夫を重ねていた。それは紅白戦で結果となって表れる。6日の紅白戦では2安打、さらに午後の紅白戦は速球、変化球に合わせて2本の三塁打を記録した。

 熊田はタイミングの取り方が上手く、歩幅を広げ、小さい動きから右足を踏み出し、レベルスイングを行う。ピタッと合い、レベルスイングでボールを捉え、広角に安打を量産していたのだ。

 木製バットは金属バットのように手打ち気味で打てるほど甘くはない。誰よりもこだわって練習していた熊田が実戦練習で結果を残してくれたのは、良かったと思う。結果を残すにはあれぐらい考えてやらないといけないという手本を示してくれた。

 守備を見るとスピードがあり、肩の強さもある。三塁手としての動きは非常によく、打球反応もよく、スローイングも安定。ただ二塁の熊田を見ると体を反転する二塁の動きに慣れていない印象。ステップを苦手にしていた。考えて努力ができる熊田の姿勢は高校代表を担うのにふさわしい選手。ぜひ夏まで攻守で躍動したパフォーマンスを表現することを期待したい。

木製バットを握った野手陣の実力は?強肩捕手、逸材遊撃手たちを考察!【前編】 | 高校野球ドットコム
左:内山壮真(星稜) 右:紅林弘太郎(駿河総合)

 紅林 弘太郎駿河総合):内野手/3年/186/82/右/右
 今年にかけてスカウトからの評判が高かった大型遊撃手。ベールに包まれていた逸材だが、合宿3日間通して、どんな選手が見えてきた。それは、186センチの長身ながら動きがしなやかで、独特の技術を持った選手であるということ。

 打撃練習から独特のステップをする。左足を高く上げて踏み込む。紅林の場合、あまり膝が割れずに突っ立った状態で打ちに行くのだ。多くの人がそれで打てるの?と思うだろう。だが縦ぶりのスイング軌道で捉えた打球は誰よりも角度があり、長打を連発する。

 本人によると意識しているのは「軸足」。つっかえたように見えるが、軸足で支え、タイミングを取り、ここで力を溜めることにより、うまく体を回転させることができるようだ。

 紅白戦では奥川恭伸が投じた140キロのストレートを左横線を破る二塁打。紅林は「ストレート、変化球をどちらかに絞らないと打てない投手なので、狙い通りストレートがきました」と振り返る。

 ただ膝が割れず、突っ立ってしまうのは本人も課題だと自覚している。レベルが高い投手と対戦したことで、どう打撃フォームを変化させるのか、工夫をしていくのかは今後の試合でチェックをしていきたい。

 また守備では、186センチなので、他の選手と比べると重心はやや高い。とはいえ、足さばきは軽快でシングルハンドで打球を取りにいき、素早く送球態勢に入る。肩も強く、大型遊撃手として面白い選手だろう。

 内山 壮真星稜):内野手/2年/172/72/右/右
 2年生ながら一次候補に入った内山。打撃練習を見て驚かせた選手だった。左足を一本足のように挙げてから腰を回転させてフルスイングを行う。その振り抜き方、フォロースルーの取り方はまるで中田翔のようであった。打球も長打も多く、こんなに飛ばせて、長打が打てるフォームということに驚きを隠せなかった。

 ただ実戦になるとなかなか安打が出ない。内山に「木製バットなので、しっかりと振り切らないと飛ばないのでああいう打ち方をしているのですが、投手が投げると、なかなか捉えられないです」と下を向く内山。実はセンバツ・習志野戦後に話を聞いた時、「自分の狙い球に対して、仕留めきれないんです」と悩みを明かしていた。

 守備では小さい動きでボールを捌き、送球をする動作はコンパクトで強い。もともと捕手ということもあって、コンパクトに動作する習慣が染みついているのだろう。それはキャッチボール姿からもうかがえた。

 ただ先輩遊撃手の差をかなり感じたようで、「まだまだ自分の思う動きができていないですし、課題はたくさん見つかりました」と振り返る。非常に良い体験をした内山はこの夏、躍動することを期待したい。

文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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