根尾昂は将来の一流候補はどうあるべきかを教えてくれる選手だった
小学生の時からすごさを実感させた根尾昂
佐々木 朗希
根尾昂(大阪桐蔭ー中日ドラゴンズ)が「NPB12球団ジュニアトーナメント2018 supported by 日能研」の始球式を藤原恭大(大阪桐蔭ー千葉ロッテマリーンズ)とともに、始球式を務めた。
筆者が根尾を初めて見たのは2012年に行われたNPB12球団のジュニアトーナメントなのだが、その時の根尾はソフトボール投げ89メートルを投げた飛騨の怪童として注目を浴びていた。実際に目にしたとき、あまりのすごさに目を奪われた。
根尾とほかの小学生投手とは格が違った。ストレートは128キロをマークしていたが、根尾と同じく120キロ台をマークしていた投手はいた。最も惹かれたのは体のバネの強さやしなやかな投球フォームである。根尾の投球フォームに入ったとき、左足を下ろしてから、軸足である右足をプレートに押さえつけ、軸足を強く蹴り上げてから投げ込むフォームから繰り出すストレートの回転数は素晴らしかった。当時の根尾はそれほど体が大きいわけではない。それでも120キロ台の速球を投げていたのだから、成長期に伴って体が大きくなれば、140キロ台は実現できるだろうとみていた。あれから根尾は中学3年生にして最速146キロのストレートを投げるなど、スーパー中学生として注目された。
彼が高校1年生の12月のこと、根尾の取材が実現したとき、筆者は小学6年生だった根尾投手の印象を率直に話した。根尾は「ありがとうございます」と頭を下げ、当時のパフォーマンスは当時取り組んでいたスキーで培った「体軸のバランスがあったから」と話してくれた。
「あの時から投球フォームのバランスを大事にしていました。バランスを大事にする考えはスキーの練習があったからだと思います。スキーの姿勢やジャンプするときに気を付けないといけないのは、体の軸が真っすぐになること。それができるための基礎練習をよくやっていましたので、それが野球につながったのかなと思います」
それを小学生の時から意識していたのだから驚かされる。それから根尾のパフォーマンスを注目すると、走攻守にわたって複雑な動きを軽々と実現してくれる。守備では捕球してからの体勢を崩さずのスナップスロー、打撃では軸を崩さず、かち上げスイング、投球フォームでは体を鋭くスピンをさせたフォームから140キロ後半。何においてもすごい選手だった。
筆者が根尾から学んだのは将来の一流選手は目先の数値ではなく、高いバランスから様々な動きを実現できる選手こそ伸びやすい。
筆者は根尾に限らず、いろいろな選手が発した言葉、パフォーマンスからどういう選手が活躍できるのか、伸びるのかを学んでいる最中だが、小学校6年生の根尾は選手を見るときのポイントとして大きなヒントを与えてくれた選手だった。
さて中日ドラゴンズでプロ野球選手としてスタートを切る根尾。高い意識で次々と驚かせる活躍を見せてくれるだろう。その時、また我々に活躍する選手はどういうものなのか?改めて大きなヒントを与えてほしい。
超一流となりミスタードラゴンズと呼ばれる選手になることを願っている。
文=河嶋 宗一