2019年のドラフトの目玉・佐々木朗希(大船渡)投手へ 今年お願いしたいこと
更なる進化を予感させる佐々木朗希の能力
佐々木 朗希
逸材輩出という意味では、岩手県民がうらやましいと感じるときがある。なんといっても2009年、菊池雄星が選抜で素晴らしいピッチングを見せてから、一気にドラフト1位候補の目玉となった。さらに菊池はMLBから誘いもあった。高卒でMLBにいけるような才能を持った投手が岩手では10年で菊池も含めて3人も現れたのだから恐ろしい。2012年は大谷翔平(花巻東)が熱狂させ、2019年は佐々木朗希(大船渡)だ。
2019年は佐々木の行く末が気になる高校野球ファンが多いのではないだろうか。
まず佐々木の評価についてだが、2019年9月の韓国で開催される2019年U-18ワールドカップに出場すれば、世界的に見てもトッププロスペクトとして評価される選手に入ると評価している。毎回、ワールドクラスの選手が登場するアメリカの逸材と比較しても負けていない選手だ。
過去、世界大会を見てきて、トップクラスの投手の球速は常時150キロ越え。スライダー、フォークも高校生の年齢ながら140キロを超える化け物ばかりである。そういう投手と比較すると、まず佐々木は
・常時150キロ~150キロ中盤 最速150キロ後半を投げられるポテンシャルがある
・130キロ前半ながら打者の手元で落ちて空振りが奪えるフォーク、スライダーがある
・189センチの長身ながら、全身を使える投球フォームをしている
まだ体つきや技術を見ても完成されていない。現状のパフォーマンスが桁違いで、さらに進化を予感させるからこそ、佐々木は岩手県民を熱狂させる投手となっているのだ。
世界大会を糧に更なる成長を願う
佐々木 朗希
そんな佐々木はどういう1年を送ることになるのか。昨秋は岩手大会3位決定戦に敗れ、選抜への道はほぼ途絶える形になり、佐々木のピッチングが全国大会で見られる可能性は夏しかないが、佐々木の成長、将来を考えると、かなり良かったと思っている。
まず秋の大会から佐々木はタイトなスケジュールで投げてきた。秋初戦は9月16日、2回戦は9月17日、準々決勝は9月19日、準決勝は9月23日、3位決定戦は9月24日と、わずか1週間で5試合に登板しているのである。速球投手ほど肩、ひじ、体への負担が大きくなる。このまま勝ち進み、選抜が仮に決定していれば、急ピッチで調整を続ける。そういうことを踏まえると、夏にピークを持っていく調整をしたほうが、佐々木にとっても、チームにとってもよいといえる。吉田輝星(金足農-日本ハム)が夏に躍進を遂げることができたのも、春の甲子園出場がなく、夏までじっくりと仕上げる時間があったことが一つの要因だといえる。
願うのは160キロではなく、夏まで肩、ひじを守りながら、心技体がそろった状態で夏を迎え、そして日本代表となることだ。
もちろんチームとして甲子園に出て大船渡フィーバーを起こしたい思いが佐々木の中にもあるだろう。我々が望むのは佐々木が世界で羽ばたくことである。なぜ佐々木が世界大会に出場してほしいかというと、得られるものが違うからである。
ハイレベルな選手とともにプレーができる時間、世界のライバルと戦う時間、異国の地で戦う時間、日本の高校野球と異なるリズム、ルールがある国際大会。そのすべてが糧になる。
これまで多くの日本代表経験者の選手を取材した感想を聞くと、全員が「糧になった」と答えてくれた。佐々木もその思いをぜひ感じてほしい。
だからこそ佐々木には、日本代表を狙うことを頭の片隅においてこれからの練習に励んでほしい。ぜひ今秋のドラフトまで大きなケガをすることなく、最後まで人々を熱狂させる佐々木朗希でいてほしい。願いはそれだけである。
文=河嶋 宗一