02年世代は野手豊作世代だ!プロ入りした先輩たちを凌駕する可能性を持ったスラッガーとショートストップたち【前編】
2020年には高校3年生となる現在の高校1年生たち。02年生まれとなるこの世代は清宮幸太郎など数多くのスラッガーを輩出した99年生まれに匹敵する野手豊作世代だと主張したい。個人的には来年の世界ワールドカップについては、1年生野手を多めに入れてもいいのでは?と思わせるぐらい、レベルが高い布陣なのだ。
今回は前編・後編に分けて紹介していきたい。まずはスラッガー・逸材ショート編だ。
02年生まれを牽引する注目スラッガー陣
(左から)井上朋也、西川僚祐、杉崎成、山村 崇嘉
スラッガータイプのトップだと、西川 僚祐(東海大相模)だろう。現在、高校通算30本塁打。これは清宮が1年秋に記録した22本塁打を上回る。佐倉シニア時代は主将を務め、ジャイアンツカップ決勝戦で本塁打を放った。ここまで順調に数字を伸ばしていると言えるだろう。入学前、ひじの状態が良くなかったが、秋の大会を見る限り、レフトからのバックホームは強肩と呼べるものがあった。
また、西川とともに注目されている山村 崇嘉(東海大相模)は1年生ながら名門の4番を打つ。武蔵府中シニア時代は侍U-15代表を経験。投手としての能力も高い山村は、夏の北神奈川大会でも登板している。ただ投手としてよりも、ボールの合わせ方がうまい打撃を存分に生かした方が良い選手だろう。
甲子園デビューを飾った井上朋也(花咲徳栄)は、対応力、長打力ともに抜群のスラッガー。1年生にしては逃げる変化球は見極めるのがうまく、ストライクゾーンに入った変化球は流し打つ巧さがある。北海道日本ハムから2位指名を受けた野村佑希の1年秋よりもずっと上であり、何より野村も絶賛する勝負強さがある。2年たてば、誰もが頼りにするようなスラッガーへ成長するのではないだろうか。
遠くへ飛ばすことに関しては杉崎成(東海大菅生)がずば抜けている。この秋の都大会まで高校通算20本塁打を記録。和田一浩のようなオープンスタンスから、ヘッドの重みを利かせたスイングでボールをとらえた打球は広角に本塁打を狙える。
11月5日に行われた東京代表のセレクションでは、木製バットながらフェンス際まで飛ばす長打を放っている。
まだ本塁打数こそ少ないが、秋広優人(二松学舎大附)は198センチの大型スラッガー。本人は中距離打者と話しているように、弾道が低いが、この2年で打球に角度がついて、コンタクト能力も高まれば、本塁打量産が期待できる。また198センチの長身にして、小顔で、動きもスマート。人気選手になりそうな予感がある。
左から小深田大地、西野力矢、来田涼斗
近畿地区では小深田大地(履正社)、西野力矢(大阪桐蔭)の2人だろう。中学時代にはNOMOジャパンを経験している小深田。大阪大会では東海大仰星戦でサヨナラ本塁打、大阪桐蔭戦でも本塁打を放つなど、近畿大会準々決勝終了時点で高校通算9本塁打。さらに量産が期待できる左のスラッガーで安田尚憲タイプである。
西野は高校通算10本塁打。180センチ90キロと、近年の大阪桐蔭にはいない体型をしたスラッガーで、パワフルな打撃、キャラクターといい2013年度の4番打者・近田 拓矢を思い出させる選手だ。
来田涼斗(明石商)は本物の柳田悠岐2世。179センチ79キロとがっしり体型をしており、走っている姿はバネの強さを感じさせるアスリート型。智辯和歌山戦では高校通算14号本塁打を放った。スイング軌道を見ると、かち上げスイングを意識しており、捉える打球を見ても角度があり、一打席を見てこれほどワクワクさせるスイング、打球を打てる1年生はそうはいない。
俊足でさらにシートノックを見ても強肩。藤原恭大の1年秋と比較しても上回っているのでは?と思わせるパフォーマンスを見せてくれる。高い身体能力ゆえ、怖いのはケガ。ケガに強くなり、残り2年間で走攻守のパフォーマンスをしっかりとレベルアップさせていけば、ドラフト1位級の評価を受ける人材になるかもしれない。それぐらい志を高く持ってやってほしい。
逸材豊富のショート
左:土田龍空 右:内山壮真
この代は逸材ショートが多いのが特徴。1年生ショートでトップを突っ走るのが内山壮真(星稜)、土田龍空(近江)がリードするのではないだろうか。
内山は中学時代、捕手として侍U-15代表として、第9回 BFA U15アジア選手権の優勝に貢献。1年春からレギュラーを獲得した。バットコントロールの高さと対応力が光る打撃、俊敏な動きが光る遊撃守備は高校1年生にしてハイレベル。真面目で、良いと思ったことをどんどん吸収する性格で、たとえば投手の投球時に体を浮かせるスプリットステップを導入しているが、これは小園海斗(報徳学園―広島東洋)から学んだ動きである。それによって速い出足、広い守備範囲を生んだ。内山は秀才型のショートといっていい。
一方、土田は天才型のショートだ。反射神経の良さが抜群で、これは難しいと思ったバウンドに対しても対応してしまう。国体の高知商戦では、左打者が放った打球が土田の手前で急激にワンバウンドした。イレギュラーになりそうな打球だったが、土田はバウンドの軌道を読み、難なく処理した。このプレーについて、近江の多賀監督も「アウトにはならなかったのですが、あのプレーはすごかった。教えてできるものではないですし、あれはセンスですね…」と絶賛。さらに、「プロ入りした植田海(阪神)がいますが、植田よりもワンランク上」と評価している。
打撃は広角に打ち分けるバットコントロールもあり、177センチ70キロと一定以上の体格の良さがある。小園海斗の1年秋と比較しても負けていない選手で、感性の鋭さと遊び心をうまくプレーに生かしている。個人的には1年生ショートでは彼がナンバーワンだと評価したい。
左から角田勇斗、鎌田州真、中村敢晴
他では、神宮大会4強の筑陽学園のショートストップ・中村敢晴も楽しみな大型遊撃手。肩も強く、捉える打球も強い。まだスローイングの確実性に課題を抱えているが、化ければ楽しみな選手である。
1年生ながら甲子園を経験した森田 貫佑(創志学園)はバットコントロールに秀でた打撃、流れるような動きを見せる遊撃守備は同世代でも優れているだろう。広島広陵戦では自身のミスから失点を喫したが、このミスを乗り越え、心身ともに成長を見せることができるか。
福岡 勇人(健大高崎)は中学時代、捕手だったが遊撃手へ転向。守備範囲の広さに秀でており、ヒット性の当たりにも追いついてしまう。上級生ショートを追い抜き、スタメンを獲得した。あとは打撃の強化だろう。
また、国士舘の優勝に貢献した大型遊撃手・鎌田州真はチームトップの打率.529を記録した打撃は潜在能力の高さを感じさせ、中学時代は投手だっただけに強肩。まだショートとして鍛えないといけない選手だが、大化けすれば楽しみ。
関東大会4強の山梨学院の小吹 悠人は関東大会で高校初本塁打。身長180センチ越えの大型遊撃手で、一冬かけてどれだけ攻守でレベルアップできるか、注目していきたい。
さらには習志野を関東大会ベスト4に導いた角田 勇斗はだいぶ守備に磨きがかかり、スピード感が出てきた。ここぞという場面で力を発揮する勝負強い打撃にも注目だ。
帝京の小松涼馬は1年生ながら東京代表に選出されたショートストップ。スピード感があり、正確な守備動作に加え、広角に打ち分けるバットコントロールが光る右打者だ。
東京代表ではセカンドを守っているが、それでも難なく対応し、高い技術を発揮。木製バットを使う東京代表。まだ苦しんでいるが、ヒットを放つなど少しずつ成長を見せている。
後編では各ポジションの逸材を紹介したい。
文=河嶋 宗一