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プロ野球のスカウトが見た 甲子園球児たち。根尾、藤原、小園、吉田の評価は如何に?

2018.08.19

 熱戦が繰り広げられている第100回甲子園。気になるのは、ドラフト候補となる選手の状況である。今回は高校野球ドットコムで選手の視察に訪れている某球団のスカウトに注目選手の感想を聞いた。

根尾、小園、藤原の野手ビッグスリーの評価

プロ野球のスカウトが見た 甲子園球児たち。根尾、藤原、小園、吉田の評価は如何に? | 高校野球ドットコム
根尾昴(大阪桐蔭)

 まず何といっても注目が集まるのが大阪桐蔭根尾昂藤原恭大のNFコンビ。スカウトは両選手についてこう評価している。まず根尾。

「投打ともに優れた中背の選手となると、今宮健太選手(明豊-ソフトバンク)を思い出す選手ですね。根尾選手は今宮選手よりも投手としての力量は上ですし、投手としては、投球スタイルを見ると、高校時代の山岡泰輔選手(瀬戸内-オリックス)に迫るものがある選手ではないでしょうか」と過去の選手を例に出して評価し、一方、野手としては「作新学院戦の三塁打は非常に速かったですし、かなり鍛えられているように感じます。そして打撃ではフルスイングをしたときのコンタクト率がまだ低いように感じます。そのコンタクト率が高くなるように、打撃を鍛えていけば、もっと長打が出ますよ」とコメントした。

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藤原恭大(大阪桐蔭)

 さらに藤原については
「藤原君はやや硬い印象を受けるのですが、沖学園戦の本塁打は素晴らしかったですね。あの強い押し込みは左投げ左打ちだからこそできたかなと思っています。そして走塁ですが、本当に俊足ですが、何より先の塁を盗むという意識が出ています。それは全国制覇を目指す大阪桐蔭だからこそ叩き込まれたものだと思いますし、楽しみな選手ですね」

 この2人に並ぶ逸材として注目されたのが報徳学園小園海斗だ。
「小園君は野球IQが高い選手ですね。同じ失敗を二度しない選手で、たとえば聖光学院戦の初回の二塁打。その前、外角ストレートを空振りしているんですよね。そのストレートをしっかりと打ち返し、左中間を破る二塁打を打ったのは見事でした」

 そして小園の守備についても言及した。小園の守備位置は天然芝付近で守っており、かなり後ろ目で守るが、スカウトは「かなり後ろに守っていても、前進して打球に対して、凄い脚力でダッシュできていますし、自分の脚力、肩の強さを理解しているからこそ守れると思います」と守備力を高く評価した。

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小園海斗(報徳学園)

 野村佑希花咲徳栄)については「パワーは素晴らしいですが、まだ打撃が固く、プロのスライダーに苦しむことが予想されます」と厳しく評価。甲子園で本塁打を放ち、脚光を浴びている奈良間大己常葉菊川)は、「172センチと小柄ながらかなりバットが振れる選手です。ただ、走塁面でもう少し見せ場があればよかったかなと思います」と走塁面のアピールを求めた。

 そして大阪桐蔭 山田健太についても評価しており、「沖学園の二塁打はすごかったですね。あの打球は根尾、藤原より速かったと思います」と絶賛した。

[page_break:吉田輝星(金足農)の課題]

吉田輝星(金足農)の課題

プロ野球のスカウトが見た 甲子園球児たち。根尾、藤原、小園、吉田の評価は如何に? | 高校野球ドットコム
吉田輝星(金足農)

 一方、投手についてどうだろう。今大会、評価を上げている吉田輝星金足農)については、ギアが入っていないときの投球について指摘した。
「吉田君ですが、やはり投手が1人しかいないということで、トーナメントで勝つための投球になっています。ギアの入れ下げをしているのはその現れでしょう。ただ気になるのは、ギアが入っていないときのストレートは制球力が悪いこと。普通、力を抜いて投げるとコントロールも安定するんですけど、彼の場合、ボールゾーンになったり、甘く入ることが多い。たまたまなのか、それができないのかで評価が分かれますが、そこが気になりました。
 とはいえ、ギアを入れたときのストレートは素晴らしいですね。私が測っているスピードガンでも150キロを計測しました」
と課題を述べながらも吉田のストレートを絶賛した。そして3回戦の二松学舎大附戦で完封勝利を挙げた渡邉勇太朗浦和学院)も高く評価した。

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渡邉勇太朗(浦和学院)

「ストレートは威力がありますし、素晴らしい素材です。まだ体が強くなれば、スピードも速くなると思いますし、変化球の精度が高めれば楽しみです。そして渡邉君は投球フォームだけではなく、ちょっとした所作までも大谷翔平にそっくりでしたね」

 また今大会最速の151キロを計測した柿木蓮大阪桐蔭)については、「ストレートが素晴らしいですが、今年の3年生の中で、完成度は最も高い投手ではないでしょうか。名門校らしく鍛えられた右腕です」と評価した。また、ほかの3年生投手では、最速146キロ右腕・石橋幹(沖学園)も面白いと評価した。
「183センチの長身にして、140キロ前後のストレートも微妙に動かしていて、おもしろい投手でした」

 さらに今大会は2年生投手の活躍が光った。その中で高く評価したのが、及川雅貴(横浜)だった。

「身長183センチながら、キレイなフォームをしているし、速球よりもキレのあるスライダーが目につきました」とスライダーの切れを評価。また、及川と同じく2年生で、面白いと評価したのが2年生左腕の林優樹近江)だ。
「ストレートは130キロ台ながら、キレがありますし、特にチェンジアップの切れ味は今大会屈指と呼べるものがありました。ああいうタイプは強豪校からすれば嫌らしい投手ではないでしょうか」

 注目選手についていろいろ聞きたかったが時間切れとなってしまった。いずれにしてもプロの目から見る選手の評価はいかがだろう。褒めるところは褒め、もちろん課題となる部分も話していただいたことに感謝したい。

文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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