ミレニアム世代のトッププロスペクト Vol.26 根尾昂(大阪桐蔭)「潜在能力はナンバーワン。精神的な強さが最大の武器」
ミレニアム世代の逸材をトッププロスペクト方式で紹介。今回もドラフト候補としてハイパフォーマンスが期待される逸材を追っていく。
根尾昂(大阪桐蔭) 潜在能力はナンバーワン。精神的な強さが最大の武器
今や高校野球界で最も注目されている選手と言える根尾昴(大阪桐蔭)
今年の高校生を代表する二刀流・根尾昂(大阪桐蔭)。投げては最速148キロのストレート、130キロを超えるスライダーで勝負し、野手としても高校通算20本塁打を超え、軽やかな遊撃守備。野球選手としての総合力はナンバーワンと評される根尾。今年のドラフト1位候補として多大な注目をされる根尾だが、ライバルは根尾をどう見ているのか。
智弁和歌山の主砲・文元 洸成はこう言う。
「精神的に強いなっていうのが一番だと思います。今までやってきたピッチャーだったら、ある程度、点を取ってしまえば、ひるんでくれるんですけど、近畿大会決勝では先に2点を取ってたんですけど、まったく精神的なブレがなくて、そこが一番根尾くんのいいところで、一番やっかいなところだと感じました」
智弁和歌山は今年に入ってから3度対戦。そのうち春の選抜決勝、春の近畿決勝で根尾と対戦し、打ち崩せずに敗れている。根尾と対戦して感じたのが精神的な強さだったのだ。また、招待試合で大阪桐蔭と対戦した東邦の主砲・梅田。根尾から2安打を打ったが、そこには満足している様子はない。
「根尾君はあまり表情は変えません。だから見下ろされているかなと思って、2安打を打っていたとしても悔しかったです」
能力があって勝てる投手、勝てない投手の境目は「精神面」。根尾はそこが一切乱れなかった。選抜準決勝、決勝、そして北大阪大会の準決勝・履正社戦で先発を任されたのはそういうぶれない精神的な強さがあるからだろう。首脳陣からすれば、頼もしい投手だ。
そして根尾は投打ともに求めるものが高い。試合を振り返っても自分のパフォーマンスについて満足することはない。投げれば「あの場面、ボールが高かった。テンポも良くなかった。立ちあがりの入りが良くなかった」と語れば、打撃面では「まだ下半身で打つことができなかった」という調子だ。
選抜から急激に成長を見せたのは遊撃守備。5月下旬に行われた日体大とのオープン戦では、三遊間の深い位置から逆シングルで追いつき、そこからダイレクトスローでアウトにしたり、また愛知の招待試合ではセンターへ抜けそうな打球を横跳びに追いつき、そのまますぐ立ち上がりアウトにしたプレーもあった。だが、根尾は「まだまだ一歩目が遅いので、自分の中ではよくないプレーです」と理想は高い。
この夏は、投手として2試合に登板して、5失点。打者としては23打数12安打、7打点、打率.522と別格の成績を残した。だが、もっとやれるのではないかと期待感を抱かせるのが根尾の魅力だ。最後の夏となる甲子園。このひのき舞台で、根尾の潜在能力はさらに引き出されるのか。
史上初の2度目の春夏連覇へ。第100回の夏の主役となる。
文=河嶋宗一