ミレニアム世代のトッププロスペクト Vol.18「山下航汰」
ミレニアム世代の逸材をトッププロスペクト方式で紹介。今回もドラフト候補としてハイパフォーマンスが期待される逸材を追っていく。
超高校級ドラフト1位候補・「山下航汰」
山下航汰 (健大高崎)
山下航汰が最も鮮烈な印象を残したのは昨年のセンバツ大会だろう。1回戦の札幌第一戦では6対1でリードした7回裏、真ん中に入ってきたカーブをとらえてライトスタンドに満塁アーチを架けた。
2回戦の福井工大福井戦では第2打席でタイムリー三塁打を放つがチームは延長15回までもつれながら7対7で引き分けた。2日後の再試合では1回裏に一死三塁の場面でセンター前に先制タイムリーを放ち、6対0でリードした4回には2死満塁の場面で内角低めスライダーを振り抜いてライトスタンドにライナーの満塁ホームランを放り込んだ。1大会2本の満塁ホームランは大会史上2人目の快挙だが、「大会屈指の強打者」という前評判があったことを考えれば、マークされながら記録を達成したことに価値がある。
バッティングフォームは右足のヒザを突っ張って上げる形に特徴がある。その上げ方も蹴り上げる動きが入るので、「反動上げ」と言っていい。安定してヒットを打つ形とは言えないが、2年春のセンバツでは強打を振るい続け、今年に入ってからは春の関東大会決勝の日大三戦、無死一塁の場面でもライトスタンドに2ランを放っている。
私が今年見たのは群馬大会準決勝の前橋商戦と、関東大会準決勝、木更津総合戦。まず驚かされたのが1番・左翼手という役割。今年の健大高崎は山下以外でもプロの注目を集める高山遼太郎、大越弘太郎、大柿廉太郎たちがいて、山下のワンマンチームではない。山下が1番を打ってもいいチーム状況が見えてくるが、3、4番に置けば、打順に合った大きな振りをしたくなるだろう。そもそも、山下のバッティングは反動を使う分大きな調子の波に翻弄される恐れがある。しかし1番ならバッティングを小さくしないまでも、ぶんぶん振り回すリスクを軽減できる。1番に置いた理由が何となくわかる。
またクリーンアップのときは走力に特徴がなかったが、木更津総合戦では第1打席で二塁ゴロを放ち、このときの一塁到達タイムが全力疾走と認められる4.22秒だった。2年のときに出場したセンバツ大会では打者走者としての「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」をクリアしたことは1回もなく、最速は引き分けた福井工大福井戦の一塁到達4.46秒、三塁到達12.35秒だった。1番をまかせる効用が早くも現れたと言っていいだろう。
守備は下級生のときの一塁も、3年になって就いているレフトも、うまいとか下手だとか、プレーに目が行ったことが一度もない。今までは打つことしか考えていなかったのだろう。しかし、今の健大高崎は群馬を勝ち抜くことより、甲子園で上位に進出することが使命とみなされるようになった。中心選手の山下の役割もおのずと変わってきたのだろう。
文=小関順二