Column

ミレニアム世代のトッププロスペクト vol.20 「野村大樹」

2018.08.03

 ミレニアム世代の逸材をトッププロスペクト方式で紹介。今回もドラフト候補としてハイパフォーマンスが期待される逸材を追っていく。

高校野球界でのフライボール革命の先駆者

ミレニアム世代のトッププロスペクト vol.20 「野村大樹」 | 高校野球ドットコム
野村大樹

 清宮幸太郎(日本ハム)が話題を集めた早稲田実にあって、4番を打ち続けたのが野村大樹。上背が170センチを少し上回った程度で大きくない。しかし、そのパワーは筋金入りと言ってよく、夏の大会を前にして高校通算ホームラン数は70本に迫っていた。

 度肝を抜かれたのが今春の東京大会準々決勝、[stadium]神宮第二球場[/stadium]で行われた関東一戦だ。相手校の4番もプロ注目のキャッチャー、石橋康太。ドラフト候補に順番をつけるとき高校生に対しては上背が180センチ以上あるほうを上にしたがるが、この試合では1回裏、2死一塁の場面で初球のストレートを豪快に降り抜いてレフト越えに2ランを放ち、石橋との序列を同等にしてしまった。

 飛んだ打球がどこまで飛んだか興味がある。打ちっぱなしのゴルフ練習場を兼ねた神宮第二球場の周囲にはぐるりと金網が張り巡らされていて、野村の打球はレフト方向フエンスの2段目に設置されている「ANS」という看板の上部をわずかに越えていった。推定距離○○メートルか私にはわからないが、どの球場で打っても誰からも文句を言われない完全なホームランだったことは間違いない。

 飛距離も凄かったが、打ち終わったあとのフォロースルーの大きさに私は魅了された。下からしゃくり気味にバットを出し、体がねじ切れるようなスイングでボールをとらえたあと、バットの動きを止めずキャッチャーのほうまでもっていく振り幅の大きさ。「フライボール革命」の影響で大学、社会人にもこういう打ち方をするバッターは増えてきたが、高校生では先駆的存在だろう。

 キャッチャーとしてのディフェンスに目を向けると、この関東一戦ではイニング間の二塁送球で最速1.86秒、8回表に二盗を阻止したときは2.06秒を計測した。これはプロまで含めても十分「強肩」と評価していい肩だ。1年前の春の関東大会準々決勝、作新学院戦では2秒以上かかり、5回と7回表には二盗を決められている(ともに失点につながっている)。1年で進歩した部分だと思う。

 バッティングの形は下級生のときからよかった。始動で上げた左足の滞空時間が長いというのが変わらない長所で、投手がタイミングを狂わそうとしてフォームに長短をつけても、そのステップに合わして野村もステップを出すので、タイミングの狂いようがない。

 最も見応えがあった試合は昨年春の関東大会2回戦の花咲徳栄戦で、清宮がホームラン1本を含む4安打、花咲徳栄野村佑希(当時2年)がやはりホームラン1本を含む3安打を放てば、野村はホームランこそ出なかったが第2打席で逆方向にタイムリー安打、9対9で迎えた延長10回に無死満塁で左中間にサヨナラヒットを放ち、チームに劇的な勝利を呼び込んだ。最初の2安打が好投手タイプの綱脇慧、サヨナラ安打が本格派の清水達也(中日)から打ったのも価値がある。進路は早稲田大進学が有力視されているが、プロ志望届を出せば3位くらいの指名があってもおかしくない。

文=小関順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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