ミレニアム世代のトッププロスペクトたち Vol.8「川畑大地、日置航」
第100回大会の主役となる「ミレニアム世代」。全国各地の逸材をトッププロスペクト方式で紹介。チームの精神的な支柱に成長した2名の選手に迫る。
3季連続の優勝へ更なる高みへ 川畑大地(乙訓)が目指すもの
川畑大地(乙訓)
マウンドの立ち姿を見ても、実際に近づいてみても、どこからそんなスピードボールが投げられるのか…。そう我々を驚かせる速球を投げ込むのが乙訓の川畑大地である。初の甲子園出場の立役者となり、飄々と投げこむ川畑はこのチームの精神的な支柱となっている。
173センチ68キロと投手としては小柄。実際に話をしていても口数も少なく、おとなしい。だがマウンドに挙がると一変。柔軟な体のバネを生かし、鋭く体を回転させて投げ込むストレートは常時140キロ前後・最速144キロは回転数が高く、1イニングに5球~10球ほど140キロを計測するスピード能力の高さは全国トップクラスだ。
入学当時から130キロ台を投げる逸材として乙訓に入学した川畑は同期の富山大樹と競いあうように3年間を送ってきた。
1年秋にベンチ入りし、背番号「1」を獲得。2年夏には140キロ台のストレートを投げるまでに成長したが、京都大会初戦敗退。ここから川畑は変わった。勝てる投手になるために自分のピッチングを見直し、コントロール、変化球、投球術を突き詰め、秋の京都府大会では優勝。近畿大会では智辯学園戦で好リリーフ。そして準決勝の智辯和歌山戦では完投負けを喫したが、先発ながらコンスタントに140キロ台を計測し、成長に期待を持たせた。
そして選抜でも快調なピッチング。5回からリリーフとして登場し、5イニングを投げ3奪三振、無失点。自己最速の144キロを計測したストレートは手元でぐっと伸びる球質に変化していた。さらに三重三重戦では5回三分の1を投げて無失点と選抜2試合を投げて無失点のピッチング。大きく自信を深めたピッチングとなった。
だが、自分のピッチングには満足をしていない。3期連続の優勝へ、龍谷大平安、東山と強敵が立ちはだかる。
更なるレベルアップへ。川畑が目指すは最速149キロ。そして勝てる投手になること。夏も甲子園初出場を決める。
今や精神的な支柱 日置航(日大三)が目指すは5年ぶりの甲子園出場
日置航(日大三)
これほど選手像が変わった選手はいない。5年ぶりの甲子園出場を狙う日大三。今年も投打で大型選手を揃えるが、その中心選手が日置航だ。今や日置なしでは考えられないチームへ成長したが、下級生から悔しい経験を味わってきた。
上田南シニア時代はジャイアンツカップ優勝を経験。父・透さんは上田高OBで、1987年夏に甲子園出場している。
日大三に入学し、1年秋からレギュラーを獲得。しかしここで屈辱を味わうことに。7番ショートで出場した早稲田実業の決勝戦では5打数0安打に終わり、初めて出場した選抜では4打数0安打に終わった。まだこの時は日大三の下位打線でショートを守る選手という印象しかなかった。
この悔しさをしっかりとばねにして、2年春の都大会では大爆発。34打数13安打、5本塁打を放つ活躍。1年秋は本塁打を続けて打てる選手ではなかっただけに、驚きの成長である。
主将に就任した2年秋では精神的な支柱として活躍。9試合で打率.444。特に決勝戦の佼成学園戦では5打数4安打2打点の活躍。無安打に終わり、何もできなかった1年前とは別人となっていた。ここから大舞台に強い日置が始まった。
選抜・由利工戦では先制本塁打を放ち勝利に貢献。続く三重三重戦でも、2安打を記録し、選抜では計2試合で、8打数5安打の活躍。さらに、春季関東大会準決勝の常総学院戦では1点ビハインドの9回裏に同点弾となる高校通算17号本塁打。土壇場で強さを発揮できる頼もしいショートストップへ成長した。
日置は強打だけではなく、精神的な焦りが見える投手を見ればすぐにタイムを取り、落ち着かせる視野の広さがある。
こうした活躍が認められ、侍ジャパンU-18代表の一次候補に選出された日置。今度は5年ぶりの甲子園出場を目指して。偉大な先輩が成し遂げられなかった夏の甲子園をつかんで見せる。
文=河嶋宗一