昨年プロ入りを果たした高卒選手たちのプロ1年目。存在感を見せつけたのは藤平尚真と細川成也
昨年は投手豊作の年であった。高校BIG4の今井 達也(作新学院-埼玉西武1位)、藤平 尚真(横浜-東北楽天1位)、寺島 成輝(履正社-ヤクルト1位)、高橋 昂也(花咲徳栄-広島2位)などをはじめとする投手がプロの世界へ飛び込んでいった。野手は人材が少ないと言わていたが、九鬼 隆平(秀岳館-福岡ソフトバンク3位)をはじめとする選手がプロで活躍を果たした。そんな高卒1年目の投手、野手の1年間を振り返ってみた。
高卒1年目から3勝を挙げた藤平尚真
藤平尚真(横浜時代)
今年、高卒1年目の投手のレベルが非常に高い。なんと6人の投手が一軍デビューを成し遂げた。
藤平 尚真(横浜-東北楽天1位)、山本 由伸(都城-オリックス4位)、才木 浩人(須磨翔風-阪神)、梅野 雄吾(九産大九産-東京ヤクルト3位)、寺島 成輝(履正社-東京ヤクルト1位)、堀 瑞輝(広島新庄-北海道日本ハム1位)と6人いる。そして初勝利を挙げているのが藤平、山本の2人。高卒1年目はまず二軍でじっくり育成というのがこれまでのパターンだが、昨今の高校生トップクラスの投手は技術も、肉体的にも出来上がっている投手が多いので、一軍でも投げられる投手がいる。その典型的な例だが、藤平である。
藤平は、1年目から一軍で8試合を投げて3勝4敗、43.1回、防御率2.28と優秀な成績。さらにCSのファイナルステージでも登板した。藤平は高校時代から体格的にも出来上がっていて、自己管理能力も高かった。U-18期間中、同じメンバーだった佐藤 勇基(現・法大)が、藤平の行動についてこう話す。
「藤平はバイキング形式の食事でもバランス良く食べることを心掛け、肘にはサポーターをつけて、肘のけが予防に努めていました」
高卒1年目から投げられるのはある意味必然だったのかもしれない。同じU-18代表メンバーだった堀は一軍で4試合に登板。そのうち先発した試合では、藤平と投げ合うという高卒1年目対決が実現した。寺島は1試合に先発したものの、プロ初勝利とはならなかった。
オリックスの山本は5試合に先発。8月31日のロッテ戦で嬉しいプロ初勝利を挙げた。才木はシーズン終盤に昇格し、中継ぎで2試合に登板。高校時代から定評のあったストレートはさらに威力を増し、150キロ超のストレート、130キロ後半のスライダー、フォークと1つ1つのボールの精度はこの世代でもトップクラスのレベルとなっていた。梅野は2試合に先発したものの、勝ち星は挙げられず来年以降に持ち越しとなった。
1軍登板できなかった投手もいる。昨夏の甲子園で優勝投手となり、U-18でもエースとしてアジア制覇に貢献した今井 達也(作新学院‐埼玉西武1位)は度重なる右肩の怪我により2軍で1年間を過ごすこととなった。ファームでは7試合に登板し1勝0敗。長いイニングを投げることは怪我の再発リスクがあるため、球団もストップをかけている状況だが徐々に状態は回復。キレのあるアウトローへの真っすぐが時折みられるようになってきた。藤嶋 健人(東邦‐中日5位)はファームで5試合に登板。高橋 昂也(花咲徳栄‐広島2位)はファームで2勝を挙げ、防御率も1点台と高校ビッグ4の力を存分に発揮した。アドゥワ 誠(松山聖陵‐広島5位)は9試合に登板し、経験を積んでいる。潜在能力の高さは折り紙付きで、数年後に化ける可能性を秘めている。
その他には古谷 優人(江陵‐福岡ソフトバンク2位)がファームで11試合に登板し着実な成長を見せ、大江 竜聖(二松学舎大附‐巨人6位)はファームで4勝を挙げるなど高卒左腕が奮闘した。
シーズン終盤に衝撃デビューを果たした細川成也
細川成也(明秀学園日立時代)
この世代の野手は人材が少ないといわれたが、ところがどっこい。ど派手なデビューを果たした選手がいる。それが細川 成也(明秀学園日立-横浜DeNA5位)である。高校通算63本塁打を誇る細川だったが、課題としていたのが対応力である。パワーは凄くても、しばらくはレベルの高いプロの舞台で苦しむのではないかと予想されたが、しばらくは二軍でも打率1割台が続いたが、順調に打率を高めていき、最終的にはファームで、打率.201まで上げて、本塁打も10本記録したのである。一軍に昇格した細川は10月3日の中日戦の初打席で、バックスクリーンへ特大の3ラン。10月4日の中日戦でもライトへ勝ち越し2ランを打ち、DeNAファンの度肝を抜く活躍だった。細川はCSでもベンチ入りしており、一軍の公式戦とCSを合わせ、本塁打2、四球3、三振4と、まさにMLBで活躍したアダム・ダンを彷彿とさせる選手なのだ。
それ以外の野手では岡崎 大輔(花咲徳栄-オリックス3位)、坂倉 将吾(日大三-広島4位)、石垣 雅海(酒田南-中日3位)、今井 順之助(中京学院大中京‐日本ハム9位)も一軍デビュー。坂倉に関してはウエスタン・リーグ打率部門で2位となる.298を記録。1年目から木製バット、プロの投手への対応力の高さを見せた。
ファームでは、九鬼 隆平(秀岳館-福岡ソフトバンク3位)は、主に3軍戦で経験を積んだ。ファームでも21試合に出場し、3本塁打を記録するなど長打力は健在。層の厚いソフトバンクだが、攻守でレベルアップし1軍出場を目指したいところだ。鈴木 将平(静岡‐埼玉西武4位)は高校時代からのバットコントロールを武器にイースタン・リーグで打率4位の.280を記録。秋山 翔吾の後継者として期待がかかる。松尾 大河(秀岳館‐横浜DeNA3位)はファームで102試合に出場。打撃で2割を切るなど苦しんだものの、正遊撃手として捕殺246を記録した。
三森 大貴(青森山田‐福岡ソフトバンク4位)は規定打席に到達していないものの.289という高打率をマークした。古賀 優大(明徳義塾‐ヤクルト5位)は57試合、石原 彪(京都翔英‐東北楽天8位)は11試合マスクを被った。
投手豊作と言われた昨年。藤平をはじめとする投手陣がプロ1年目から活躍を見せる形となった。甲子園未出場の山本がプロ初勝利を挙げたことは、きっと同世代投手にとって刺激になったはずだ。野手は多くのU-18メンバーが大学進学するなどして期待値は高くなかった。しかし、細川の衝撃アーチや坂倉のファームでの活躍を見ると野手の人材のレベルの高さも証明した1年となった。
高卒選手は慣れてきた2年目以降が勝負である。来年以降はプロ野球を沸かせる活躍を大いに期待いしたい。
(文・編集部)