清宮幸太郎が歴史に残るスラッガーになるにはしっかりとした準備期間が必要だ
第28回WBSC U-18ベースボールワールドカップ一番の注目は清宮幸太郎のパフォーマンスだった。清宮にとってプロ、大学で使用する木製バットを使った真剣勝負を臨める良い機会。清宮がプロ1年目からどのくらいの数字を残すのか?それが想像できる良い大会だった。結果は、41打数7安打 2本塁打6打点 打率.219と悔しい結果に終わった。ここからは清宮が高卒プロ入りした前提で話を進めるが、これまでの実績をすべてリセットして、一から取り組むべき選手だと実感した。
清宮幸太郎(早稲田実業)
南アフリカ戦の本塁打シーン
周囲が期待しているのは、松井秀喜、清原和博級の活躍だろう。2人とも高卒1年目から二桁本塁打を放ったが、清宮もそれができるかというと現時点では厳しい。ただ、将来的にはそのクラスまで成長できる可能性は秘めているが、高卒1年目からそのハードルを設けるのは本人のためにならないように感じた。
なぜ厳しいのを感じたのかを説明すると、140キロ~145キロ級のストレートに対応ができていないということだ。清宮は力のある投手に対し、力負けするバッティングが目立った。海外の打者を見ると、145キロ前後の速球に対し、振り遅れせず打てる打者が実に多い。その選手たちを見ると振り遅れをしない待ち方、スイングスピードを持っている。清宮がそれができないのかというと、できる可能性を持った打者である。
カナダ戦の本塁打シーン
ホームランを打った打席を振り返ると、まず南アフリカ戦は、112キロのスライダーを引っ張ったホームラン。カナダ戦のホームランは131キロのストレートを打ったバックスクリーン弾。変化球には合わせるのが上手い選手だが、まだ140キロを超える速球に対してジャストミートして本塁打にすることはできていない。そうなると、清宮が取り組む課題は、140キロ以上の速球をしっかりとコンタクトして、本塁打にできるか?が課題となる。切れの良い変化球の対応は次のステップになる。
今回の打撃不振。これは実戦不足に尽きる。打撃結果を見ると、木製バットに適応できていなかったという考えになってしまうが、清宮の場合、普段の打撃練習では代表選手の中で最も本塁打を打っている選手で木製バットには対応をしている。しかし打撃練習と実戦は別物。実戦での備えが足りなかったといえる。これは代表入りして、約10日間余りで本番に入ってしまう準備期間の少なさから考えれば致し方ないといえるだろう。
韓国戦の打撃シーン
140キロ台の速球に負けていた
つまりU-18の例を見れば、清宮がプロに進んだ場合、順応するまで多くの実戦機会を積む必要がある。145キロ前後も打てる、変化球にも対応できる、安定して自分の打撃フォームで打てる。その段階になってからこれまでのスラッガーの成績と比較してよい段階に入るのではないだろうか。清宮はしっかりとした準備期間があれば、想像を超える速度で、進化を見せてくれるのではという期待感はある。
清宮も、「自分も実力が足りないものが多くあり、悔しさを多く得られました」とかなり悔しがっている様子。その悔しさが今後の練習へのモチベーションになることだろう。
清宮がプロを選択した場合、ぜひその球団のファンは焦ることなく、多くを求めすぎず、地道にスターの階段を昇る清宮を見守ってほしい。
(文=河嶋宗一)
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