Column

ただ走るのはもったいない!効果を引き出すラントレーニングの組み立て方

2015.11.01

 走ることに苦手意識をもっていませんか?冬を迎え、トレーニングが本格化するにあたり少し憂鬱になっている球児も少なくないはず。
でも、この時期に走ることは実際、とても効果的なんです。
では目的に合った正しい走り方とは?さらにただ走るのではもったいない!ということで、四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックス殖栗 正登トレーナーにお話をうかがいました。球児はもちろん、指導者も必見です!

体を休め、トレーニングに耐える体を作る有酸素運動をする移行期を取ろう!

トレーニングの組み立て方

 まず知っておいてほしいのは、この時期のプロ野球選手は、実はかなり走っているということです。総距離は様々ですが、決められた距離を何本も走ったりして、日々だいたい30分から1時間、走ることに充てています。

 これはなぜかというと、体に酸素を取り入れ回復させるという調整を行う時期だからです。これは移行期と言って、フルでシーズンを戦ってきた体を労わり、これから行われるトレーニングに耐えさせるためにも重要になってきます。ですので、シーズンを終え、これから冬トレに向かう高校生も取り入れてほしいですね。走ることには意味があるし、効果的なんだということをまず頭に置いてください。

 ではこの移行期をどうとればいいのでしょうか。プロでは2~3週間の期間をとります。高校生はだいたい3月に練習試合が解禁となりますので、そこから逆算をしましょう。
トレーニングの組み立ては試合に向けて、筋力→パワー→スピードと鍛え、仕上げていくのが基本です。2月にスピードを鍛え、1月にはパワー、12月に筋力をトレーニングしていこうとすると、ちょうど11月の最初の2週が移行期として、身体のリカバリーにあて、残りの2週の導入期として、ウエイトトレーニングなどの正しいフォームを確認して、今後のトレーニングの導入する時期にあてます。ですから、この月は有酸素系の運動を多く取り入れていきましょう。

 また、ここで体力測定をするのもオススメです。チームとしてどうなりたいのかという技術的、戦術的なことも大事ですが、意外と見落としがちなのが、そのためにどんな体にしていけばいいのか?というところです。
ただ漠然と取り組んでしませんか?体力測定を行いチームとして共有した数値を基に、足りないところをトレーニングで補っていくことでチームの力が付きます。

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[page_break:学年、時期別!効果的な走り方]

学年、時期別!効果的な走り方

11月からのメニュー例

 さて、野球部に入ったら1年生は球拾いが中心。新チームになったとはいえ、後輩が入ってくるまではまだその役割は継続中…ということで外野を走り回っているでしょうか。私も経験がありますし、嫌だった思い出もあります。でも、悔しいことに実は理に適っていたりもするのです。

 人間の体は、成長する部分、トレーニングの成果が出る部分は、年齢によって違いがあります。逆に言えば、辛い思いをして鍛えても効果が出にくい場合もある。トレーニングの意味が無いばかりか、体を壊したり成長の芽をつぶしてしまうケースもあるのです。ですから、球団によっても違いますが、プロ野球選手は年齢別にトレーニングの種類や回数、量を変えています。高校生と大学、社会人の体つきは違うのだから当たり前ですし、時間は限られているのですから、効率的に効果を最大限に引き出すようにするのは当然ですね。

 中学2年生から高校1年生の時期は、体の内部が出来上がる時期。内臓が大きく発達する時期なので、体の中に血液を循環させ送り込む持久系の力が伸びる時期なんです。つまり長い距離を走るトレーニングを行うにはもってこいの時期!どんどん走りましょう。
高校2年生からは筋力が伸びてくる。だから、同じ走るのでもスタートダッシュや加速を意識した走り、負荷をかけた走り――例えばタイや引きや坂道ダッシュなどが効果的です。

 ですから、1年生が長い距離を走っている横で、2年生が短距離のダッシュを繰り返す、タイヤを引く、坂道ダッシュをするというのが理想的であったりします。
そういったことを考えると、トレーニングの組み立て方も決まってきますね。

■移行期には長めの距離を少しゆったり走る。
■その後、タイムを測り意識しながら、
2年生>負荷をかけた走りにして、スタートダッシュや方向転換、反応速度を高めるスピードトレーニングを導入
1年生>インターバル走などで心肺機能を鍛える
■2月のスピードを鍛える期間に向けて、短距離ダッシュや、下り坂の加速走に切り替えていく。
こういった流れがスムーズです。

 ちなみにこのダッシュは盗塁に直結しますので、足を武器にする選手はもちろん、走塁を中心とした戦術を取りたいのであれば、チームとして取り組むのもいいでしょう。もちろん、1年生も鍛えてあげてくださいね。そしてその際には短時間でパワーを生み出す「速筋」を鍛えているということを意識してください。持久走で身につく「遅筋」ではありません。

■具体的なトレーニングメニュー
【11月】…長中距離走
メニューとしては、3000メートルラン、12分間走、pppppダッシュ、ppppダッシュ、pppダッシュ
【12月】…インターバル、レペテーション
メニューとしては、300メートルシャトルラン、100、80メートルインターバル、25メートルガスラン、PP(ポール間ダッシュ)、PC(センター−ポール間ダッシュ)
【1月】…最初の加速を意識したレジストラン
レジストラン(タイヤ引き、ウェイト、チューブ、ロープ)を10メートル~30メートル行う
タイヤ押し(低い姿勢からの加速)を10メートル~30メートル
マニュアルプッシュ(一歩目のスタート、トリプルエクステンション)
坂上りレジストラン
階段かけ上がり(一段、二段階とばし:リニア、ラテラル、クロスで行う)
【2月】…スピード、アジリティ、クイックネス系
アシステッドラン(チューブ、ロープで牽引する)
ラダー
4コーナーなどのアジリティトレーニング
リアクショントレーニング(目、耳で反応して、一歩目の反応早く)
オープン、クロス、ダウン等の各ステップを獲得しておく

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[page_break:目標を明確にし、納得して走ろう!]

目標を明確にし、納得して走ろう!

 もちろん、チームとして長い距離を走る、いわゆる根性練習トレーニングというものも、僕は反対しません。ただし、「理由があるのであれば」という前提です。
トレーナーがついてトレーニングを行う場合、例えばスプリント能力をあげようと思ったら600mと決めたらそれ以上は走りません。それを超えると持久系のメニューになってしまう。50m×12本か100m×6本とするかはその時次第ですが、上限を決めて走るというのは変わりません。鍛える部分を明確にし、そのために一番いい方法を取るのが正しいトレーニングです。そのラントレーニングが、スプリントトレーニングなのか、持久走トレーニングなのか、指導者側が明確にしないと意味のないトレーニングになってしまいます。

 もし、ただ精神的に鍛えたい、追い込みたいというのであれば、時間や環境が許せば100本ノックやアメリカンノックなどにしてしまうのも良いでしょう。指導者や周囲と良いコミュニケーションになりますし、極限状態でも最後の一歩を出し切る、グラブを出す、という練習になります。黙々と走らせるよりもよっぽど効果的です。なんといっても野球選手ですから、スパイクを付けてグローブをはめて、という方が力が出るんです。そして、心拍数計を付けて行えば、100本ノックも立派な心肺機能を鍛えるトレーニングになってくると思います。

「走る理由」を明確にすれば効果は上がる!

 校庭や人数などの問題で難しいというのはあるでしょう。そう言った場合でも、なんとなく走らせる、というのであれば効果はあまり見込めません。走るのであれば「何故走るのか?」「走るとどうなれるのか?」そのあたりを指導者自身が理解し、選手に伝え納得させることがとても重要になってきます。
「長距離を走ることが伝統で、それを大事にしている」。あるいは、「合宿でこのくらいの量のラントレーニングをこなしてきた先輩の代は強かった、というチームの伝統的な目標数値がある」というのも選手が納得しているのであれば立派な理由の一つです。しっかりと裏付けを理解することで、トレーニングの効果は飛躍的に向上します。その方がお互いにとっても良い結果を生みますよね。

■目標を明確にする
■そこから逆算をする
■学年、目的に合わせた走りを意識する

 このあたりを意識してトレーニングを組み立てるだけで、だいぶ変わってくるはずです。ぜひチームや指導者を巻き込んで考えてみてください。


注目記事
・2015年秋季大会特設ページ

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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