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クイックネストレーニング解説編(1)

2014.11.02

 四国アイランドリーグ・徳島インディゴソックス、ストレングス&コンディショニングトレーナーの殖栗 正登です。今日は「クイックネストレーニング」についてお話します。

クイックネスとは何か?

パワーポジションの準備姿勢

【A】

 まず初めに、クイックネストレーニングの「クイックネス」とは何かを説明します。クイックネスとは車のギアの一速目のことで、守備や走塁でより素早く正確に加速し反応する能力です。この「認識→反応→爆発的動き」が高い選手をクイックネスな選手と呼べるでしょう。

【B】

 このクイックネスな動きをバイオメカニクの観点から見れば、多方向への爆発的スタートを行うことができるということであり、その動作は、

(1)パワーポジションの準備姿勢
(2)水平方向への体重移動できる足の位置
(3)片脚での方向転換

 
の3種類があり、それぞれをさらに細かく見てみると、

(4)各方向へのストップとスタート
(5)カッティング
(6)ターン
(7)バックペダル
(8)ターンオーバー
(9)ランジ

 
のような動きになります。

【C】

 さらに、解剖学・生理学的な観点で見ると、ストップ&GOのくり返しを早くするのに重要なことは、筋の伸張反射と腱の弾性と、ストレッチ、ショートニングサイクルを利用する、ストップ動作の早さをつくることです。これはかなりの負荷がかかる動きです。

 そのためにこのようなエキセントリックな負荷に対抗できるベースの筋力が必要です。クイックネス能力向上には動的な柔軟性や筋力などの土台が必要で、最初に正しい両足、片足でのストップ動作を習得することが必要です。これを習得したのちに、スタート、そしてSSCを利用した爆発的重心移動、と順々を追ってトレーニングしていくことが筋の生理学的、解剖学的にいえます。

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[page_break:「脳→神経→筋→フィードバック」]

「脳→神経→筋→フィードバック」

横方向のクイックネス動作

【D】

 クイックネスに関して重要なことは、トレーニングドリルを行う際に、筋をより素早く発火して、脳に特定の高速動作パターンを覚えさせて、過負荷ではなく、完璧な動作でどんどん爆発的に行わせることを意識することが重要です。この種のトレーニングは筋を素早く動かす、「脳→神経→筋→フィードバック」のトレーニングです。

 神経系のトレーニングは「運動神経の発火頻度の増加」、「より素早い反応」、「より爆発的に」、という3点が重要です。クイックネスに必要な筋肉は内、外旋筋、内、外転筋です。これらの筋肉は、筋力が低いので、強いパワーはなかなか出せません。よって、いかに正しく効率的に行うかが大切です。

【E】

 野球のクイックネスはATP-CP系の短時間のエネルギー系の運動です。トレーニングをする際は、最初は5秒、ピッチャーなどは15秒という短い時間を集中して行うことが重要です。もちろん、きちんとトレーニングのセット間はレストをとることも重要です。

【F】

 体型については、クイックネスの高い選手は体脂肪が低いことが言えます。当たり前ですが、同じ筋力ならは、体重が軽い方がクイックネスです。例えば、30m走は、体脂肪率が9%アップでパフォーマンスが低下。10mきり返し走では3%アップからパフォーマンス低下。5mきり返しは6%アップ、反復横とびは3%アップでかなりおちます。

 特に注目すべきは反復横とびで3%でかなりパフォーマンスが落ちることです。これは、横の動きの筋肉は縦の動きの筋力より弱いからです。野球では盗塁、また、特にセカンド、ショートを守る選手には横方向のクイックネスが必要です。これらのポジションには比較的身長が低い、脚の太い選手が多い理由がわかります。特にショートは肩力も必要ですから、アスリート体型の選手が多いのもわかります。

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[page_break:爆発的クイック動作に入るために]

爆発的クイック動作に入るために

ストップ動作

【G】

 ドリルの流れとしては、動力のメインの下肢とコア(腹筋、背筋、スタピライザーマッスル、股肉節の内、外、転、回旋、屈伸)を優先的に鍛え上げることです。注意することは、上半身に比べて下半身が弱いと、重心の位置があがり、上の質量があがり、素早い重心、体重移動を阻害する点です。次にパワーポジションの確保に必要な動きを確認します。

・ストップ動作
・動的なバランス能力
・低い重心
・ダイナミックな可動性

 これができて爆発的クイック動作に入ることが出来ます。

【H】

 クイックネスの基本はスタートとストップ動作であり、その中でも一番大切なのは減速とストップです。ストップ動作にはエキセントリックな筋力の動作である

・ストップ&ホールド
・ストップ&バランス
・シングルレッグストップ
・横方向へのストップ
のような動作が必要となります。

 まずはストップして減速。そこから、コンタクトタイムを短くして素早くスタートを進めていき、スタート動作は地面から、はねるように素早くしていく、またメディシンボールをつかうことで、下肢の回旋エクササイズを行い、回旋をともなうスタートの爆発的動作を強化させていきましょう。

【I】

 ドリルのレベルアップ方法としては、以下のことが挙げられます。
(1) 設定された時間内の接地回数を増やす
(2) 横の移動距離増加
(3) 動き複雑化
(4) 制限時間短縮
(5) チューブアシスト
(6) 目で反応させる。視覚刺激
(7) 対戦形式

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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