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スピード向上プログラム part3

2012.11.29

殖栗正登のベースボールトレーニング&リコンディショニング

第76回 スピード向上プログラム part32012年11月20日

◇上半身のファンクショナルトレーニング バックナンバー


第71回 上半身のファンクショナルトレーニング part4



第71回 上半身のファンクショナルトレーニング part3



第70回 上半身のファンクショナルトレーニング part2



第69回 上半身のファンクショナルトレーニング part1

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はじめに

プライオメトリクスとは

 皆さんこんにちは。ベースボールトレーナーの殖栗正登です。前回に続いて特別編として、スピード向上に必要なトレーニングに関してお話します。

 前回、お話をさせて頂いたストレングストレーニングにおけるコンセントリックな爆発的トレーニングでしたが、次の段階のトレーニングはプライオメトリクスになります。

 まずは1 絶対的筋力を高め、2 相対筋力を高めて、3 speed筋力(動的筋力)4 弾性筋力を高めていきます。 ベースとしてのコアの安定や股関節、足首の可動は当たり前の話としておきます。
そもそもプライオメトリクスとは、筋力の立ち上がりのスピートを速めるトレーニングです。

 ウェートトレーニングを行い絶対的な筋力を高め、クイックリフトで全身のパワーを高めていきます。
しかし実際のスポールパフォーマンスは、例えばスプリントならば接地時間は0.16秒、バウンディングは0.22秒、デクスジャンプで6.33秒、ウェートスクワットジャンプは0.4秒かかります。最大筋力のウェートトレーニングとは最大筋力の発揮時間に大きな差があります。プライメトリクスはこれを埋めるトレーニングであり、ストレッチショートニングサイクルを利用しています。

  筋の収縮は1 脳→筋肉2 筋のコンセントリックな収縮の流れとなりますが、伸張反射の場合は反射で起こるので、筋の収縮までの反応時間が短くて済みます。この伸張反射をとりいれて筋収縮の反応時間を短くするのがプライオメトリクスです。

  1 エキセントリック活動の速さを「償却局面」(ストレッチ)、 2 コンセントリック活動の速さを、はね返りを「切り替え時間」といいます。
先に紹介した弾性・反動を使わない、素早く、大きい全身の力を発揮するクイックリフトとは根本的にきりはなしてトレーニングメニューをつくる必要があります。

 また接地時間をきちんと考えてメニューを組むことも大切であり、短いコンタクトタイムで、より大きい遊脚タイムを出せるか、スプリントは最たるものであり、次にバウンディング、ジャンプなどは0.25秒内であるか、10kgから20kgの加重スクワットの接地時間は0.4秒です。コンタクトタイムのトレーニングは競技とトレーニング種目を考えなければなりません。

[page_break:動作の基本とルール]

動作の基本とルール

a トーアップ
足関節を背屈固定に、前方2/3で設置すること。

b ニーアップとヒップアップ
膝の最大駆動と股関節の伸展を利用

c ヒールアップ
腰部から遠くへ跳躍して、身体を空中に投げ出し、振り戻しの(腰の?)回転半径と振り出し速度を速くするため。

d サムアップ・ブロッキング
前方に振り上げた上方の腕の動きをブロッキングして姿勢を保つことで10%の力を供給できる。

e フォロースルー
メディシンボール、チェストパスなどは完全伸展、屈曲の間でボールをキャッチすること。

f 下腿を中心としたメニューを最初に行う。
(ポゴ、ギャロッピング、プランシング、アンクルフリップ)

g 下腿のエクササイズから脚全体の反動動作へ
(SQジャンプ、スプリットジャンプ、シングルレッグ、ステアーバウンド)

h そこから全身をつかう
(ニータックジャンプ、ジャンプ、バウンディング、ホッピング)

i メディシンボールは最初にパス・トス・スロー
(全身をつかったひねり戻しのスロー、スウィング、反復投げ)

j 呼吸は1 沈み込みに吸って、2 ストレッチ局面でとめて、3 ショートニング後に吐く。

k オーバーロードは高さ、距離、外的負荷。
しかし反応速度がおちすぎては筋力はあがるが、それはプライオメトリクストレーニングの意味をなしていない。

l 量は8〜12回、6〜10セット。コンタクトタイムがおちない回数、強度、セット数に。
高強度ほどレストを長く1〜2分、低強度ならば30秒〜1分。

m コンプレックストレーニングは絶対的筋力。
それを行ったあと力の発揮の近いプライオメトリクスを行い、反応を促す。

[page_break:プライオメトリクスの種類 ジャンプ]

プライオメトリクスの種類 ジャンプ

1 スクワットジャンプ
伸張反射を入れないジャンプをスクワットジャンプと呼ぶ。静的姿勢から垂直方向へ飛ぶジャンプは最大跳躍を求め、水平距離は強調しない。

2 カウンタームーヴメントジャンプ
ストレッチ動作が入る。

3 デプスドロップジャンプ
台からおちる動の加速の負荷により、ストレッチ(弾性負荷)をかける。

4 その場ジャンプ
初心者の導入期に用いられる。垂直跳び。

5 ロングジャンプ
水平方向にとぶ。mで負荷を表す。(30m〜100m)

6 メゾ持久力ジャンプ
低強度、多量のふみきりで長い距離のジャンプ(40〜80m)をカバーする。(バウンディング、ギャロップ)

7 メゾパワージャンプ
逆にふみきり着地が強く量は少ない。(左右交互、片足、ボックス)

8 ショートエンドジャンプ
最大強度(ショック)でのふみきり、着地。
(ハードル、ホップ、デプスジャンプ)

プライオメトリクスの種類 バウンド

 最大水平距離の獲得を目指す。陸上競技では、バウンディングは一歩の足でふみきり、もう一方の脚で着地することをいう。プログレッションの流れで、ヒッププロジェクション指導時には両脚でふみきり、両脚着地もある。(プランシング、ギャロッピング、スキッピング)

プライオメトリクスの種類 ホップ

 脚の回転運動を最大速度で実施する。そして高さと距離をかせぐ。陸上では片側でふみきり、その脚で着地するトレーニングをいう。

プライオメトリクスの種類 リープ

 1回の最大努力により、高さ、水平距離を強調したトレーニング。

プライオメトリクスの種類 ステップ

 右脚ー右脚着地でホップして、左脚へステップして左でホップする。俗にいうホップ、ステップである。高さと距離を強調する。

プライオメトリクスの種類 リカシェット

 素速い脚と足の動きだけを強調して、高速動作のみに目的をおき、高さ、距離は関係ない。

[page_break:実際のトレーニング]

実際のトレーニング

低強度
1 ポゴ
2 スクワットジャンプ
3 着地BOXジャンプ
4 ロケットジャンプ
5 スタージャンプ

中強度
6 ダブルレッグ・タックジャンプ
7 ニータックジャンプ
8 スプリットジャンプ
9 シザースジャンプ

高強度
10 ダブル・シザースジャンプ
11 シングル・レッグ・ストライド・ジャンプ
12 ストライド・ジャンプ・クロスオーバー
13 クイックリープ

シック法
14 デプスジャンプ
15 連続ボックスジャンプ
16 デプスリープ
17 デプスジャンプリープ

プライオメトリクスの種類 バウンド&スキップ

低強度
1 プランシング
2 ギャロップ
3 ファーストスキッピング
4 エクステンデッド・スキッピング(ひきつけの意識)

5 パワースキップ(膝の伸展)
6 アンクルフリップ
7 ラテラルバウンド

中強度
8 シングルレッグ・ステア・バウンド

9 ダブルレッグ・ステア・バウンド

10 ラテラル・ステア・バウンド

11 交互レッグ・ステア・バウンド

12 交互レッグ・バウンド

(1 toe up、2 地面を蹴る(伸展)、3 前脚ヒザのひきつけ、4 腕のブロッキング、5 コアの同定、以上5つを意識)

高強度
13 ラテラル・バウンド(連続)

14 交互レッグ・ダイアゴナル・バウンド

シック法
15 ボックス・スキップ

16 ボックス・バウンド

[page_break:プライオメトリクスの種類 ホップ]

プライオメトリクスの種類 ホップ

低強度
1ダブルレッグ・ホップ前進M

(1 toe up、2 ヒザのひきこみ(おしりの下に踵)、3 接地後のヒップエクステンション、4 ブロッキング、5 コアのキープ、以上5つの意識)

2 ダブルレッグ・スピードホップ

3 漸増垂直ホップ

4 サイドホップ

5 サイドホップスプリント

中強度
6 アンクルホップ

7 シングル・レッグ・バット・キック

8 シングル・レッグ・ホップ前進

高強度
9 シングル・レッグ・スピード・ホップ

より速く、脚の回転運動をひきつけ、プッシュ、トゥアップ、コアの安定

10 シングル・レッグ・ダイアゴナル・ホップ

11 シングル・レッグ・ラテラル・ホップ

12 デクライン・ホップ

13 シングル・レッグ・デクライン・ホップ

14 インクライン・リカシェット(素早くあがる)

(1 フロント、2 ラテラル、3 斜め、4 ツイスト、5 ダブルレッグ、6 シングルレッグ)

実際のプログラミング ・スプリントベーシックプログラム

1 ポゴ
4週目まで3×10

2 スクワットジャンプ
1週目 2×4〜6
2週目 3×4〜6
3週目 3×5〜8

3 ロケットジャンプ
1、2週目 2×4〜6
3、4週目 3×4〜6

4 M.B オーバー&アンダースロー
1週目 3×3
2週目 3×4
3週目 3×5
4週目 3×6
5週目 3×7

5 スプリット&シザースジャンプ
1、2週目 2×4〜6
3、4週目 3×4〜6

6 プランシング
4週目まで2×4〜6

7 ギャロッピング
12週目まで3×10

8 ファーストスキップ
12週まで3×10

9 アンクルスキップ
12週まで2×10

10 シングル・レッグ&ステアバウンド
9週まで2×6〜8

11 ラテラルバウンド
3〜8週 2×6〜8

12 交互レッグステアバウンド
3週〜8週 3×8〜10

実際のプログラミング ・スプリントスペシャルプログラム


1 リカシェット

3〜8週 3×8〜12


2 ニータックジャンプ

3〜8週 3×4〜6


3 ダブルレッグ・タックキック

4〜9週 3×4〜6


4 ダブルレッグ・ホップ、プログレッション

5〜10週 3×4〜6


5 サイドホップ

4〜8週 3×4〜6


6 パワースキッピング

5〜8週 3×4〜6、9〜10週 3×6〜8


7 交互レッグバウンド

6〜12週 3×4〜8


8 スタンディング・トリプル・ジャンプ

8週 2×4〜6、9〜10週 4×4〜6、11〜12月 6×4〜6


9 デプスジャンプ

9〜12週 4×8


10 デプスリープ

9〜12週 3×6


11 シングル・レッグ・ホップ

9〜12週 2×3〜6


12 シングル・レッグ・交互ホップ

10〜12週 3×3〜6

▶スピード向上プログラム part4に続く。

(解説・殖栗正登

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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