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速い球の投げ方6

2010.10.12

殖栗正登のバランス野球学

速い球の投げ方62010年09月06日

今回は今まで部分的に取り上げてきた力学の流れを、ポイントにまとめながら解説していこうと思います。

■速い球の投げ方シリーズ バックナンバー

 「ピッチング動作のポイントって?」(速い球の投げ方1)
 「体幹の使い方」(速い球の投げ方2)
 「利き手の使い方・イップスの治し方」(速い球の投げ方3)
 「球速と指の関係」(速い球の投げ方4)
 「実戦 球速アップトレーニング」(速い球の投げ方5)

1:下降局面(ドロップ)

ここは踏み込み脚を最大に上げて、軸脚が曲がっていく局面ですが、ここでは股関節力による力学的エネルギーの流れが大きく影響します。これは股関節を中心として下降動作と速度を生んでいるからです。軸脚は関節を屈曲させて身体を下降させ、股関節を介して力学的エネルギーを上に流し、上胴の力学的エネルギーを増加させる局面の準備をしているといえます。

踏み込み脚も、上げた脚が下がり位置エネルギーを得ながら、小さいエネルギーながらも股関節を介して下胴に流入しています。この局面では下向きの速度が強く体幹から大腿、下腿へのエネルギーの流れが見え、股関節の下降動作と屈曲、踏みだし脚のストライドも股関節で下胴へとエネルギーが流れています。なのでここでは股関節の使い方が重要になります。

★ポイント 力まずに重力にまかせてストンと落として地面からの反作用をもらうこと

2:上胴エネルギー増加局面(軸脚の蹴り)

終盤で踏み込み脚が接地しており、ここでは軸脚によるエネルギーの流れが大きく、正の負荷が大きくかかっています。この踏み込み脚の接地の前後に、軸脚の伸展トルクによって力学的エネルギーを生じます。この局面では、軸脚の股関節で生み出した力学的エネルギーを上胴、そして利き手に伝達する準備段階と言えます。

★ポイント 踏み込み脚の接地前に軸脚の股関節の伸展を出す


3:ボール速度減少局面(トップ)

この局面はいわゆるトップといわれる局面です。この場面は踏み込み脚が接地して投球腕が外転することによりバランスをとった所です。ボールが最も遠くにくるため、ボール速度は減少します。上胴のエネルギーは接地から大きく増加しています。小さいものの上腕、前腕にはエネルギーが流入して、手やボールに力学的エネルギーを伝達する準備局面となります。

★ポイント トップは利き手が外転が大きく出て、ボールの加速は減少する

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4:後期コッキング局面(最大外旋位)

この局面では、先のボール速度減少局面から一気に加速してリリース時のボール速度の60%までに達しています。野球動作では接地後に一度ボール速度が落ち、そこから一気に加速します。この局面において投球腕の各関節トルクの力学的仕事はほとんど見られません。上胴が大きく回旋しますがこれで投球腕のエネルギーの伝達が行われます。

ここでは投球腕は肩の最大外旋位なので肘の伸展が見られます。下からエネルギーが伝わり上胴がまわり、投球腕にエネルギーが伝わり、60%速度が上がります。ピッチングの加速の始まりとして大変重要です。

★ポイント 上胴が回旋し、ボールの速度が60%まで上がってくる。

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5:加速局面

この局面においては、後期コッキング局面に比べてボールへの力学的エネルギーは増えていきましたが、手、前腕から肘へのエネルギーの流入は減っていきます。これらのことから、この局面に急激な肩の内旋、肘の伸展で生じた関節力が力学的エネルギーの伝達として大きいと考えられます。

★ポイント 利き手の内旋の関節力で力学的エネルギーを出す

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次のページにて今回のコラムのおさらいをします。


まとめ

今回は野球のフォームにおける力学的なエネルギーの流れを解説してきました。ポイントをまとめます。

下降局面では重力のままに重心を落とすことで、地面の反力をもらい股関節を中心に屈曲していくこと

②次にサイドステップの局面では、踏み込み脚の接地前に軸脚の股関節の伸展を出し、エネルギーを上へ伝える。

トップは利き手が外転が大きく出て、ボールの加速は減少する。

後期コッキングでは、上胴がまわり、ボールの速度が60%まで上がってくる。

加速期は利き手の内旋の関節力で力学的エネルギーを出している。腕を振る意識が必要。

フォームを作る時、これらの流れを意識して欲しいです。これがフォームにおいて力の入れる所です。次回は力学的エネルギーの流れと球の遅い、速いについて解説したいと思います。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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