殖栗正登のバランス野球学

ピッチングのトレーニング実践編の解説2010年05月18日

 

 

第9回第10回でトレーニング実践編をお届けしました。

今回は部位別に解説いたします。

 

 

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胸のトレーニング

ピッチングトレーニング実践編【上】 

今回主に使う筋は大胸筋で、肩の水平・内転・内旋に働きます。ピッチングにおいては加速期でストレッチされて、そこから一気に収縮して利き手をリリースします。

ベンチプレスインクラインベンチプレスなどの多関節の「プレス系」の種目で、水平内転+肘の伸展を行います。単関節では「フライ系」を行います。

②「フルオーバー系」「ディップ系」で内転のトレーニング。

③今回は入れていませんが、ダンベルツイストベンチプレスで内旋を加えて、「内旋系」のメニューもシーズンが近づくにつれていきます。

④「BOXプッシュアップ」で切り返しを速く行い「投球時のストレッチショートサイクル」にも対応しています。

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背部のトレーニング

肩の内転・伸展・内旋・水平外転です。広背筋がメインです。私は背部のトレーニングを大変重要視しています。それは踏み出し脚が地面についた瞬間からリリースの直前まで身体は加速され続け、ここがフォームの力のいれるポイントで、背面の筋がテコの力点として使われるからです。

①「ローイング系」
②「プルダウン系」
③「プルオーバー系」

の3つで構成します。きちんと肩甲骨を内転させて、締めるようにフィニッシュまでもってきて下さい。この菱形型を使うことで肩甲骨も引きつけられ、より大きい力を発揮させます。

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下背部のトレーニング

ピッチングトレーニング実践編【中】 

デッドリフトで多関節筋を鍛えます。この筋は踏み出し脚の力点として働きます。また、ハムストリングス→大臀(でん)筋→脊柱起立筋と運動連鎖の起こる(第13回を参照)トレーニングです。「このメニューの中でどれが一番大切ですか?」と聞かれたら、僕は迷わず「デッドリフト」をあげます。シーズンに近づくと片足で行う「シングルデッドリフト」も入れていきます。

肩部のトレーニング

三角筋の前、中、後ろのトレーニングです。肩は「ベンチプレス系」で三角筋前部、「ローイング系」で後部が鍛えられているので「レイズ系」のラテラルレイズショルダープレスで中部を鍛えていきます。メニューには入れていませんが、水平外転を鍛えるため、ベントオーバーショルダーリアレイズを入れる時もあります。

上腕・前腕部のトレーニング

上腕、前腕のトレーニングは故障防止のために入れます。カーブ、ストレート、ショートなど色々な球種を投げるので、そのエキセントリックに働く上腕二頭筋は全ての角度で鍛えます。上腕三頭筋もリリースの時に使われるパワーマッスル なので、トライセプスエクステンション を入れてあります。これは必ずスタンディングで行い、長頭を鍛えて下さい。前腕も起始の部分は故障しやすいので必ずトレーニングをすることと、また握力も関与するのでボールにスピンを与えるために鍛えることが必要です。そこで、指立て伏せも入れてあります。

下肢部のトレーニング

基本的には「股関節、ひざ、足首」の3つの関節が曲がり【トリプルフレクション 】から3つが伸びる【トリプルエクステンション】のトレーニングです。まずはスクワット、そして次にピッチャーなのでスクワットとランジという流れと、ケイトスクワットからサイトランジ という横の流れのトレーニングを行います。トレーニングの間には上肢をきちんと固定しましょう。

ひざの伸展に大腿四頭筋、股関節の伸展にハムストリングス・大臀筋、「サイド系」は内転筋を刺激します。そしてこれに「ジャンプ系」のトレーニングを加えることにより、ストレッチショートサイクルと、加速を速めることにより動作の初期に一気に地面の反力を止めることなくパワーを発揮する能力を高めていきます。スプリットジャンプスクワットは必ず一度接地でピタッと止まって下さい。踏み出し脚の固定力のアイソメトリクスのトレーニングだからです。ツイストジャンプは一気にトリプルエクステンションを出して下肢を伸展させ、その流れで体幹をひねって下さい。これも一度止まって下さい。コンセントリックな筋力を鍛えたいからです。

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体幹部のトレーニング

ピッチングトレーニング実践編【下】 

一流のピッチャーがボールを投げる時、骨盤の回転角速度は約500~700°/秒で、体幹上部は約1100~1300°/秒です。また、角度は50~60°でひねられているので、体幹のトレーニングにおいては腹直筋・外、内腹斜筋、脊柱起立筋を使ってこの50~60°の角度でひねるようにしましょう。ポイントは、

ロシアンツイストツイストバックエクステンションで脊柱をまっすぐキープしてひねること

メディシンボールで運動連鎖と地面からの反作用をもらい一気にスローへもっていくエネルギーの流れを鍛えること

ケーブルで運動連鎖とエキセントリックな筋力を鍛えること

です。しかしこれらのトレーニングは全てピッチング時の回旋速度を伴っていません。ここでは紹介していないがこれはチュービング反動スロー で鍛えます。これは色々なピッチャーに行わせてきましたが、ひと冬で本当に球が速くなります。あとは、ハンマー地面殴り をチーム練習で行ってもらっています。

股関節、肩甲骨のトレーニング

これは骨盤の「ベーシックライン」上で股関節を動かすという動作のドリルです。これは言葉で説明しますと長くなりすぎてしまうので、別の機会があればまたご紹介しようと思います。

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最後に

今回は、投手のトレーニング実践編の解説をさせていただきました。もちろん、今回紹介したトレーニングがすべてではありません。まだまだ他に多くのトレーニングメニューを入れて行っています。特にシーズンが近づいてくると、バランスパットを使ってひねりのトレーニングを行い、下腿のアイソメトリクスを鍛えて、フォームのバランスを整えることを必ずメニューに入れています。また股関節のアウフバラトレーニング や、原始的ですが腹筋・背筋を1000回、腕立てを500回など、回数が追い込まれると自然に反動を使ってしまうバリスティックトレーニングも入れています。

このように、昔から行われてきた“根性”トレーニングにも、実は反動を使うため切り返しの良いトレーニングになると考え、アップやトレーニングの終わりに皆で行っています。当院では合同で5~6人でトレーニングをやることが多いですが、甲子園球児などと一緒にトレーニングすると、「同じ球児はこれ位やらないとダメなんだな~」と互いに良い刺激を与え合っているようです。遠くは北海道、九州からも泊り込みでトレーニングに来ている選手もおり、同じ球児として刺激しあうことはとても良いことだと感じています。

次回は、力学的に見た球速アップの方法について解説したいと思います。

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