Column

フィットネステスト(測定&トレーニング)【後編】

2015.12.26

 前回に引き続き、自分の身体を知るためのフィットネステストであるファンクショナル・ムーブメント・スクリーンとそのポイントを伝えたい。
これらをポイントをしっかり押さえながら行うことで、調子の良い時、悪い時の対処がわかってくるので、自分の身体と対話しながら行おう!フォームを直すのではなく、身体の機能を治すと心がけるとなお効果的!
7種類のうち、1つは前回紹介したので、残りの6種類を一気に紹介!

FMSの見るべきポイントをチェック

2.ハードルステップ
【評価】
ハードルステップでは、支持脚の動的スタビリティと伸展のモビリティ、逆脚側の股関節屈曲のモビリティの両側性、コアの固定力を見ることが出来る。ランニングフォームやピッチングのワインドアップ確認にもなる。

3.インラインランジ
これは野球にはかなり重要である。
矢状面(前後)に両脚を開けてバランスを取り、重心を下げる。この時、先に矢状面に突っ込んだ状態になりやすい選手は、足首の背屈、大腿直筋が硬いといえるだろう。前額面(左右)に倒れれば、外・内転筋のスタビリティ能力不足がわかる。ピッチャーには非常に重要である。胸椎、胸郭の確認にもつながる。

4.ショルダーモビリティ
オーバーヘッドのスポーツに大切なFMSである。肩と胸椎の伸展と肩甲骨のモビリティの評価が出来る。ピッチャーは利き手の内旋がでない選手が多く、プッシュオフテストで元々の筋力が無いのか、稼働出来ていないかの確認が必要である。

5.アクティヴストレートレッグレイズ(ASL)
今までのFMSで、ハムストリングスの硬さでパフォーマンスが出せない時にチェックしてほしい。骨盤を固定して、股関節を屈曲させ、支持脚は伸展して固定する。この時股関節が屈曲(腸腰筋拘縮)していると、膝が曲がる。ハードルステップが出来ない理由がわかる。

6.トランクスタビリティ プッシュアップ
これは、上肢の動きに対するコアの矢状面上のスタビリティの能力を見る。例えばバレーのブロックで、ボールの反力に負けてコアが伸展するようではブロックは弾かれる。地面の反力からコアで固定できるか等、バッティングでも使えるだろう。

7.ロータリースタビリティ
矢状面と特に水平面上のスタビリティの能力をみて、動的バランス能力を見る。傾く場面、股関節の外旋筋のスタビリティ能力、肩甲骨の内転の能力のチェックができる。野球で俗にいう「体の開きが早い」選手の身体機能チェックに使える。

[page_break:ファンクショナルパフォーマンステスト / 最後に大切なことはデータの活用]

ファンクショナルパフォーマンステスト

 身体のスタビリティ、モビリティを評価したら次に、パワーを生み伝導させコントロールする能力のパフォーマンステストを行っていく。
ベースは(1)ジャンプ系、(2)スローイング系、(3)ランニング系となる。

(1)垂直跳び
ジャンプ系テストの代表である。垂直跳びを飛べる選手は、上半身の腕のプル動作と動的なコアの固定を出して、地面の反力を上手にもらい、ローディングして一気に下半身の伸展でパワーを発揮。コアを伸展しながら固定して腕を屈曲して重心を早く上方に移動させる助けをさせる。
また、片脚ずつ跳べば左右差を見られる。差は15%以内である。重力に抗う力を見るのに最適である。

(2)メディシンボールチェストパス
立位で下肢、コアを固定して上半身のパワーでMBをスローする能力。体重の2%のボールを使って、また、90度体をひねってローテーションのパワーも見られる。左右差は15%以内に。

(3)50mスプリント
推進力を生む下肢のパワー。ストライド時の股関節、足首のモビリティ、コアのスタビリティ、ピッチ数でスピードコーディネーションを評価できる。
その他代表的なテストと言えば、

a.無酸性パワーテスト・・・300mシャトルラン
b.アジリティ&ボディコントロールテスト・・・T-テスト
c.有酸素パワーテスト・・・12分間走 or 3200m走

 これらの3つが挙げられる。これはほとんどのスポーツにおいて適用できるテストなので、競技を超えて行ってほしい項目でもある。

◆以上にプラスして各スポーツスキルテストをしよう
野球なら
スローイング:球速、遠投、ピッチャーならばアウトローテスト
バッティング:スイング速度(スイングトレーサーなど)
ラン:ベースランニングスピードなど

最後に大切なことはデータの活用

データを野球ノートに書いて意識を高めるのもオススメ

 基本的にテストを行った後には以下の項目を確認することが必要となる。
(1)ファンデーションの質的スキルができていること
(2)次に、ファンクションパフォーマンスができていること
(3)ラストにテクニックがあること
これらをすべてクリアしていることが理想である。

 障害の多い選手は(2)が高く(1)が低い。また、(3)が多く(1)、(2)が低い選手はピッチングやバッティングなどテクニックは出来るが他はダメという選手。
そして(1)が強く(2)、(3)が低い選手は、パワートレーニングやスキルトレーニングをどんどん行う。

 アスリートに大切なことは、短所を知り、埋めていく作業だ。
短所を無視すると、いずれ身体に無理が来て障害につながったり、最終的にパフォーマンスは伸びない。トレーニングを効果的かつ効率的に行うためにこの3つのパフォーマンステストは欠かせない。
測定→フィードバック→トレーニングの流れを正しく計画立てることで、正しい努力を行うことが出来る。
せっかくのトレーニングを無駄にしないように、しっかりとテストの「意味」を捉え、「意識」をして、自分の身体を知ってより良いパフォーマンスに繋げよう。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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