勉強にもつながる!課題克服のための思考回路
第6回 「勉強にもつながる!課題克服のための思考回路」2012年05月30日
今回は、高校時代は球児だったという河合塾町田校の寺田泰浩校舎長に、勉強と野球の課題克服のための方法について伺いました。
テーマは難しいですが、方法は意外にカンタン!すぐに実践できることばかりです!
目標があってこそ、課題は生まれる
“客観的に自分の弱点を分析し、計画を立てよう!”
――今の高校生の現状についてお聞きしたいのですが、まず課題を見つけられる生徒、見つけることができない生徒の違いは?
寺田泰浩校舎長(以下「寺田」) 課題とは、基本的に「解決しなければならない問題」を指すのだと思います。それについてはまず、その生徒が「何を目標にするのか」が大きなポイントになります。
大学進学の場合は、どの大学に行くのかが目標になります。今の自分とその目標との『差』があって、その差を埋めていくということが課題を乗り越えていくことだと思います。つまり課題を見つけるにはまず、自分自身の『目標設定』をすることが大事ですね。
――目標を設定することが難しい高校生もいるかと思いますが、自分の目標を見つけるきっかけは、どんなことだと思いますか?
「寺田」 例えば、大学に行きたい場合はどこに行きたいのか、そして将来の自分はどうありたいのか。それには、今までの経験がまずは根底にあると思います。
医師になりたい生徒は自分の家族が入院したのがきっかけで人のためになりたいとか、学校の先生になりたい生徒は、自分が指導を受けた先生がいて「ああいう先生になりたい」って思ったり。そういう経験がベースになることがあります。
高校3年生になって、ようやく目標を意識し始めるというケースもありますが、とにかく自分自身の興味・関心があることは何か、そこで自分の能力が発揮できるのか、それが学べる場所がどこなのか知ることが大事ですね。
――野球でも勉強でもそうですが、なかなか目標があっても、自分の課題が見つけられない。課題として落とし込めていけない生徒もいるかと思います。そういう高校生には、寺田さんはどういったアドバイスをなさっているのですか?
「寺田」 まずはいろいろなことを聞きますね。それから具体的なことをイメージさせていきます。最近は自分で見出すというより人に言われて「あぁ、そうか」というふうに気付く生徒が多くなったように感じます。
――続いて、課題の克服を実現するための重要なポイントはありますか?
「寺田」 まず一つは、アドバイスを素直に聞けるかという点が挙げられますね。各教科の勉強の仕方に対して「自分はこうだ」という考えに固執してしまうと、結局自己流に走ってしまう。
でも、河合塾の各教科の講師はいろいろな成功事例を見てきていますから、それを基にした話を素直に受けとめた生徒はやっぱりどんどん伸びていくように感じますね。
あとは、客観的に自分を分析できることですね。先ほどの目標設定にもつながるのですが、目標と現在の自分との差を冷静に見られるということです。ただ、この差というのはよく偏差値などの数字だけで見がちになってしまいます。
そうではなくて、英語なら「文法」で点数が取れなかったのか、「長文読解」ができなかったのか、という具合に分野別に客観的に弱点を分析し、そのあと「いつまでに何をしていけばいいか」という具体的な計画を練ることがすごく大事です。
これは、野球においてもつながります。打てなかった、捕れなかったなど結果で振り返るだけではなくて、もっと具体的に、変化球が打てなかったのかコースに対応できなかったのか、守備であれば、一歩目の反応が遅かったのか守備位置が悪かったのか、細分化した項目を客観的に考えて、それに対処できるように、期日を入れた計画を立てていく。「振り返り」→「課題発見」→「計画立案」→「実行」そのサイクルが大事なんですね。
「バックキャスト(backcast)」という言葉を使って話をする
――先ほど寺田さんは、自分を客観的に見る、分析することが大事とおっしゃっていましたが、塾生指導に際して心がけていらっしゃることは何でしょうか?
「寺田」 生徒側からすると、何ができて、何ができていないのかを具体的に書き出してみると、客観的にそのことを見られるようになると思います。指導する側からすると、やはり、伝え続けるってことです。例えば模試の成績表が返ってきても、大方の生徒は、偏差値、合格可能性判定しか見ないんですね。今の成績は確かにその偏差値・合格可能性判定かもしれませんが、最終的な目標に到達するまでにどうしていくのか、それこそが大切であると伝え続けていくことですね。
――計画することでモチベーションを下げないように工夫していくということですね。
「寺田」 そうですね。私はよく「バックキャスト(backcast)」という言葉を使って話をします。「フォアキャスト(forecast)」という「未来を予測する」という単語があるのですが、「バックキャスト(backcast)」というのは将来こうありたいというビジョンを決める。その未来から逆算してやるべきことをやっていくことなんです。自分の今の位置から行きたい大学までの道のりの全体像を捉え、そこに時間を加味して逆算すれば、何をやっていけばいいのかがわかってきます。
――モチベーションという部分も重要になってきますね。
「寺田」 高校1年生でも目標が定まっている生徒は、自然とモチベーションが高いですね。野球であれば甲子園に行きたいのか、都大会でベスト16に入りたいのか、あるいは1回戦を突破したいのかとか。その目標を達成するために何をするのかとなると、やはり基礎の積み重ねです。野球でもキャッチボールやトスバッティングなどの基礎の積み重ねがあるように、大学受験でもやっぱり基礎は大事なんですね。
大学入試センター試験では、7~8割は高校1~2年生の学習範囲から出題されると言われています。ですから、高校生は1~2年生の間にしっかりと基本を身に付つけることが大切なのです。
――時間というのは課題を克服するうえで自分がやる気になっていく糧なのですね。
「寺田」 大学受験では、高2の秋にはだんだんと受験が影に見えてきて、現実感が増してきます。
勉強も野球も早期から始めることのメリットは、ゆくゆく、そこにかけた『時間』の差となって表れることですね。1年生の時から1時間勉強している生徒と3時間勉強している生徒、それが2年間続いて3年生になると、時間としての“量”の差がハッキリと出てくると思うんですよね。
ただ、一概に時間を長くとればいいってわけでもありません。やっぱり集中する時間が大切です。1時間半~2時間集中してメリハリをつけて学習していくことが大事ですね。あとは継続することです。
――部活をやりながら、終わったあとに塾に通ってくる部活生の高校生も多いと伺いますが、皆さんは集中して勉強にも取り組んでいるのでしょうか?
「寺田」 部活をやっている生徒は、部活で精一杯努力することをやっているわけですよね。そして練習後に河合塾に通っていただいて勉強をしていく。部活と勉強のスイッチの切り替えができていると思います。
また部活をやっている人は、3年生最後の大会は多くの人が負けを経験して終わります。最後まで勝ち残るっていう人はごく一部しかいないですから。ただしっかり「完全燃焼」して取り組んできた人っていうのは、切り替えがうまく、部活に充てていた時間をその後の勉強にきちんと費やすことが出来る生徒が多いですね。
寺田泰浩校舎長、ありがとうございました。勉強も野球でも、自分の課題をクリアするための能力は同じなのですね。自分が目標とする場所を見つけ、そこからの「バックキャスト(backcast)」(未来からの逆算)をし、計画を立てていく。結果だけで振り返らず、もっと具体的に分野別に振り返り、残りの時間で何ができるかを考える。その繰り返しの思考こそが、勉強でも野球でも、課題を克服するためには大事な思考回路となります。文字で書くと難しく感じるかもしれませんが、「振り返り」「課題発見」「計画」「実行」このサイクルが身につけば、レベルがぐんぐんと上がっていくはずです!
(取材協力=河合塾)
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